先月、日本IBMが株式会社しんきん情報システムセンターの「オープンAPI共通基盤」の構築に全面的に協力していくことを発表した。オープンAPI共通基盤とは、信用金庫業界独自の通信ネットワークシステムとフィンテック技術を結びつけるシステムである。このオープンAPI共通基盤が完成すれば、信用金庫に口座を持つ人々に、口座と連携した様々なアプリケーションを提供することが可能となり、ネットシステムと連動して預金管理が容易になる。日本IBM はこのシステムを今年中に構築する予定だ。
信用金庫業界と日本IBM
実は日本の信用金庫全体の個人預金の総計は 107兆円を超えており、日本最大の銀行である三菱東京UFJ銀行の 71兆円を大きく上回っている。だ、信用金庫は総預金額は大きいものの、それぞれが独立しており、また数も多く「同じ金融システム」を使用することが非常に難しかった。
またそれぞれの信用金庫の規模はそこまで大きくないため、独自のアプリケーションやシステムを構築しようとすれば、莫大なシステム投資も必要となることがネックになっていた。しんきん情報システムセンターの全国信金データ送信システムは、日本全国で 264金庫が利用しているが、フィンテックを利用して預金を一括管理するようなシステムは存在しなかった。
今回のオープンAPI共通基盤では、フィンテック企業と信用金庫のシステムを連携させることで、信用銀行業界のネットワーク全体にアプローチができる。現在、フィンテック企業との連携を行なってい信用金庫が「岡崎信金のみ」ということを考えれば、信用金庫業界がフィンテックの新市場となる可能性は高い。
メガバンクはさらにもう一歩を行く
ただし、今回の信用金庫のオープンAPIでは残高照会と入出金照会の 2つの機能が中心になると言われている。アプリとの連携を図り、生活レベルでフィンテックを使用するメリットを最大限に享受できるようになるのはもうしばらく先になるだろう。すでに、三井住友銀行、みずほ銀行、住信SBIネット銀行の 3銀行は、「マネーフォワード」というフィンテック企業と連携を図ることで、同社のクラウド会計ソフトを使用することで、他銀行から自銀行の口座への振り込みができるサービスを開始する。
また、ジャパンネット銀行も「freee」と連携を図り、同様のサービスを導入する予定だ。ただし、それでも私たちの生活レベルで利便性を享受できる段階にはなっておらず、それぞれの銀行はフィンテックの能力の一部しか引き出せていない印象だ。今後は「いかに人々の生活の中にフィンテックを落とし込めるのか?」がサービス向上のカギとなるだろう。