仮想通貨の世界で『なりすまし』という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?今後取引を行う上で知っておきたい仮想通貨投資に潜む危険『spoofing(スプーフィング)』について紹介します。
なりすまし(spoofing/スプーフィング)とは
仮想通貨における『なりすまし』とは、自分以外の人物を装い取引を行う犯罪行為のことであり、『スプーフィング(spoofing)』とも言われます。
他人のアカウントに不正にアクセスすることで取引を行う『なりすまし行為』は有名ですが、広い意味でのなりすまし(spoofing/スプーフィング)は『見せ玉(みせぎょく)』などによって価格を操作する行為のことを指します。
現在発行されている多くの仮想通貨の特徴の1つとして『極端なボラティリティ』があります。たびたび起こる重大な価格変動は主要な複数の仮想通貨で早い時期から懸念されていますが、この現象は今も続いています。
これが事実であるという証拠は、世界で最も大きな規模を誇る仮想通貨であるビットコイン(BTC)が証明しています。
2017年後半の1BTCの価格は220万円近くの記録的な高値に上昇しました。しかしその数週間後には、その価値の約3分の1にまで暴落しています。
このような大規模な価格の変動は、長期的な期間で発生するだけではなく連続して短期間で起こることもあります。
そしてこの事実は、複数の犯罪行為によって一般的に流通する仮想通貨の瞬間的な価格変動から利益を上げることを可能にします。このような行為では一般的に、特に価値の高いトークンを安い価格で購入し、価格が修正されたのちに売却します。
このような犯罪者が偽の注文を作成して仮想通貨の価格に人工的に影響を与えようとするプロセスを「なりすまし(spoofing/スプーフィング)」と言います。
スプーフィングの基本を理解
すべての取引可能な有価証券と同じように、仮想通貨の価格は市場全体と個人投資家に広がる楽観主義や悲観主義の多くの要素に依存します。
このモメンタム(*1)の感覚と仮想通貨の潜在的な可能性を定量化することは難しいかもしれませんが、それにもかかわらずこれらに精通した投資家は非常に敏感に調和しています。
(*1)モメンタムとは、日本語で「勢い・はずみ」と言う意味であり、相場の勢い(強弱)や反転の目安となる水準を見ることが出来る指標のこと。売買のタイミングを把握する指標とともに、上昇相場の勢いが弱くなってきているのか、下降相場の勢いが強くなってきているのかなどを捉える先行指標としても利用される。
楽観的な考えや悲観的な考えが仮想通貨を売買する投資家の傾向に影響を与えるため、たとえそれがやや難しいものであってもこれらの概念はそのトークンの価格にとって非常に重要となります。
これらの感情はなりすましを可能にし、効果的に対処することが難しいというのが事実です。
市場を操作しようとするトレーダーは、不正な買い注文または売り注文を入れることによって、楽観主義または悲観主義の錯覚を作り出します。
トレーダーが実際に購入または売却する意思がなかった場合でも、一定の注文を入れることで他の投資家を騙すことができるため、通貨の価格がその注文に応じて調整される可能性があります。
注文を入れたトレーダーは、仮想通貨の価格が自分の望む方向に動くとその注文をキャンセルします。これによって実際に取引を行うことなく、価格を操作することが可能となります。
スプーフィング行為の現状
ブルームバーグは、スプーフィングによってビットコインネットワークで仮想通貨の価格操作が行われたかどうかを判断するために米司法省(DOJ)が調査を開始したと報じています。
この報告によると、DOJ当局は世界各国の取引所が詐欺に従事しているトレーダーを追求するために積極的に取り組んでいるとしています。
この調査はビットコインに焦点を当てているとみられており、これは時価総額で最大の仮想通貨であるだけでなく、昨年末に大規模な価格上昇があったために、新しいアマチュア投資家の大勢がそのスペースに追い込まれてしまったことなどが理由として挙げられます。
このような投資家は、価格が上昇すると思われる仮想通貨から簡単に利益を得ることを熱望しています。このような投資家は、特に『なりすまし(スプーフィング)』の影響を最も受けやすい可能性があります。
なりすましの行為には資金洗浄のための取引(ウォッシュ・トレード)が伴います。
この取引は目的を実現するための手段が異なるものの、人工的な手段によって仮想通貨の価格を操作することを目指すという点ではなりすまし行為に似ています。
ウォッシュ・トレードでは、市場の需要の幻想を作り出すために詐欺師が自分自身との取引を行い、それによって疑いのない投資家を誘惑し同様に取引に参入させます。
テキサス大学の財務教授ジョン・グリフィン教授は、仮想通貨の空間は特にスプーフィングの影響を受けやすいと考えています。
彼は「仮想通貨の世界では市場の偽装や不正な価格の操作を簡単にすることができるだけでなく、操作取引、スプーフィング、ウォッシュ・トレードなどの監視がほとんど行われていない」と説明しています。
スプーフィングに対する防御策
では仮想通貨投資を行う投資家は、どのようにしてスプーフィングから自分の身を守ればいいでしょうか?
具体的には『あまりにも出来すぎていると思われる相場には注意するべきであることを自覚しておくこと』が重要です。
急激な上昇が起こった場合などには、価格操作が行われている可能性があることも踏まえて一度慎重に考える必要があるでしょう。
また利用している仮想通貨取引所が、なりすまし行為やウォッシュ・トレードを含めたあらゆる種類の詐欺を防止するための対策を行なっていることを確認することも重要です。一部の取引所では、偽装を防ぎ顧客を保護するためにセキュリティと監視システムを強化することを検討しています。
具体例としては、ウィンクルボス兄弟によって作成された仮想通貨取引所Gemini(ジェミニ)では、NASDAQ(ナスダック)とのパートナーシップを発表し、仮想通貨取引の監視を行っています。
世界初の匿名通貨公認取引所Gemini
しかし仮想通貨の世界では、いくら注意深く警戒している投資家であっても依然として価格操作の影響を受けやすい可能性があります。
このような理由から仮想通貨投資を行う際には、現在の市場が依然として非常に投機的なものであり、仮想通貨はすべての投資戦略のすべてではなく、最終的なものではないことに留意することが重要です。
(引用:investopedia.com)