世界市場を揺るがす「SWIFTの代替システム」
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が開発を進めている独自のデジタル決済システムが世界159カ国で採用される可能性があることが明らかになりました。
この決済システムは暗号資産やブロックチェーン技術を活用した貿易決済用の決済システムであり、”米ドルに代わる新たな選択肢”としての地位を確立することを目的として以前から開発が進められています。
今月1日には同システムの計画が順調に進んでいることが報告されていましたが、Watcher Guruは8月16日の報道でロシア当局者の話として「現在はすでに159カ国がBRICSの決済システムを採用しようとしている」と報じています。
報道によると、BRICのデジタル決済システムは10月にローンチされる可能性があるとのことで、このシステムは世界の主要金融機関が加盟する通信ネットワーク「SWIFT」の代替システムとなり、世界市場に大きな影響を及ぼす可能性があるとされています。
独自決済システムの構想が着実に進行中
159カ国が導入準備を完了?
BRICSのデジタル決済システムが正式に稼働した場合には、米ドルを必要とせずに決済を行うことが可能となります。
Watcher Guruはロシア中央銀行総裁のエルビラ・ナビウリナ氏の発言として「159カ国はBRICSの決済システムを導入する準備ができている」と伝えており、「実際にこれらの諸外国はロシアの金融メッセージ転送システム(SPFS)プラットフォームの拡張を検討している」とも説明しています。
デジタル決済システムはBRICS諸国にとって非常に重要なものであるため、BRICSサミットの優先事項にもなっているとのことで、「加盟希望国は多数存在する他、システム導入時に受け入れを選択する可能性もあり、10月の重要なサミットに間に合う可能性がある」と伝えられています。
BRICSのデジタル決済システムは、同盟国にとって貿易取引の拡大に向けた扉を開く可能性があるとされており、仮想通貨業界を含めた世界中で大きな注目が集まっています。
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BRICS決済システム、仮想通貨業界への影響は?
BRICSで開発が進められているデジタル決済システムは、米ドルやSWIFTにも影響を及ぼす非常に大規模なシステムであるため、本格的に決済システムが利用され始めた場合には、仮想通貨業界にも大きな影響がもたらされる可能性があると予想されています。
BRICSのデジタル決済システムが仮想通貨業界にもたらす可能性がある影響としては以下のようなものが挙げられます。
米ドルの影響力低下による仮想通貨の地位向上
BRICSのデジタル決済システムは「米ドルに代わる決済手段」であるため、同システムが本格稼働すると世界貿易における米ドルの影響力が低下し、金融市場が一時的に不安定化する可能性があります。
しかし「米ドルの影響力低下」や「金融市場の不安定化」は、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨にプラスの影響をもたらす可能性があります。
これはビットコインなどの仮想通貨が「従来の伝統的な金融資産とは異なる新たな資産クラス」として注目されているためであり、特にデジタルゴールド・価値の保存手段として認識されているビットコインには、資産保護の目的で巨額の資金が流入する可能性があると予想されています。
このような考え方は複数の著名人からも語られていて、人気の著書「金持ち父さん貧乏父さん」シリーズを執筆したことで知られるロバート・キヨサキ氏は『BRICSの決済システムが稼働したら米ドルが崩壊するため、金・銀・ビットコインに投資しておくべきである』との考えを語っています。
キヨサキ氏の発言内容はこちら
ブロックチェーン・仮想通貨の普及促進
BRICSのデジタル決済システムでは、仮想通貨の基盤技術でもあるブロックチェーン技術が利用されると報告されているため、同システムの本格稼働はブロックチェーンの有用性を世界に示す事例となり、ブロックチェーン技術のさらなる普及促進につながる可能性があると予想されます。
また、既存の仮想通貨とBRICS決済システムの相互運用性に関する部分も注目される点の1つであり、決済システムと仮想通貨を繋ぐ仕組みが構築されれば、新たな市場の開拓や仮想通貨の普及促進にもつながる可能性があると期待されています。
デジタル通貨・仮想通貨の規制明確化
仮想通貨業界では「仮想通貨に関する規制が明確化されていないこと」が以前から問題視されていますが、BRICS諸国が独自のデジタル決済システムを運用し始めると、仮想通貨やデジタル通貨に関する各国の規制が明確化される可能性があるとも考えられます。
規制明確化によって、仮想通貨の利用が制限される可能性もありますが、仮想通貨関連の規制緩和が進む可能性もあるため、規制面での影響にも注目したいところです。
いずれにせよ、仮想通貨規制が明確化されれば、仮想通貨業界が次に進むべき道も明確化されることになるため、規制強化は仮想通貨業界にとって大きな前進になると期待されます。
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分散型金融(DeFi)の成長
BRICSのデジタル決済システムが中央集権的な管理システムを採用していた場合には、それに対抗する形で分散型金融(DeFi)への関心や需要が高まる可能性があるとも考えられます。
分散型金融(DeFi)では自己管理能力やある程度の知識が必要となりますが、DeFiは”中央機関に依存しない金融システム”として自由で透明性の高い取引を求めるユーザーから根強い支持を獲得しているため、今後もさらに成長していくことになると予想されます。
中央集権的なデジタル決済システムがローンチされた際には、中央集権型と分散型に関する議論が活発化することになると予想されるため、その過程でDeFiへの理解も深まり、DeFi製品や関連トークンの需要が増加する可能性があるでしょう。
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仮想通貨の価格変動には要注意
BRICSのデジタル決済システムは仮想通貨業界にプラスの影響をもたらす可能性があると予想されていますが、システム導入後には一部の国や企業が仮想通貨から離れる可能性もあるため、しばらくの間は仮想通貨市場でも大規模な価格変動が続く可能性があると予想されます。
仮想通貨価格がどちらの方向に動くかはその発表内容によりますが、発表直後は様々なニュースの影響で仮想通貨価格が乱高下する可能性もあるでしょう。
決済システムの詳細や各国の対応などは今後のニュースなどで徐々に明らかにされていくと予想されるため、BRICSに関する新たな発表やニュースなどにも注目です。
このようなことから、BRICSのデジタル決済システムは「仮想通貨業界の大きな変化の引き金」になる可能性があると考えられるため、今後の動向にも注目です。
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執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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