82億ドルの罰金徴収:前年度比67%増加の背景
米国証券取引委員会(SEC)は2024年11月22日、2024会計年度において、過去最高額となる82億ドル(約1兆2,650億円)もの罰金を徴収したことを発表しました。
この金額は前年度の50億ドル(約7,733億円)を大きく上回り、67%増加しています。SECのゲイリー・ゲンスラー委員長は「本年度の実績が示すように、当部門は、投資家と発行体の双方に利益をもたらす資本市場の健全性の促進に貢献している」とコメントし、規制強化の成果を強調しました。
徴収された82億ドルのうち約55%、45億ドル(約6,750億円)が仮想通貨企業Terraform Labs(TFL)とその共同創設者Do Kwon(ドゥ・クォン)氏に関連したものであることも明らかにされています。
Terraform Labsは、2022年に崩壊したステーブルコインTerraUSD(UST)と関連トークンLUNAの発行元であり、SECは同社とそのCEOであるDo Kwon氏に対し、投資家を欺いたとして法的措置を講じていました。
SECは、この事件において、投資家を欺く行為や誤解を招く情報の提供があったと指摘し、厳しい罰則を科す判断を下しています。
仮想通貨業界への影響とSECの今後の動き
今回の罰金総額の記録更新には、Terraform Labs以外にも仮想通貨関連企業が含まれています。SECは、仮想通貨市場における規制違反を厳しく取り締まり、583件の執行措置を実施しました。
徴収金額は過去最高額となった一方で、執行件数は前年度比で25%減少しており、SECはより高額な案件に集中して取り組んでいると考えられています。
また、SECは投資家保護を目的に3億4,500万ドル(約534億円)を被害者に返還しており、2021会計年度の開始以来、総額27億ドル(約4,177億円)が投資家に返還されています。
その一方で、仮想通貨業界からはSECの強硬姿勢に対する反発も根強くあり、リップル社の最高法務責任者であるスチュアート・アルデロティ氏は今回のSECの発表に対し「それは成功の証ではなく、歪んだインセンティブによって監督体制が大きく崩れていることの証拠に過ぎない」とXで強く批判しています。
SECが過去最高額の罰金を徴収したことを誇るのは、まるで教授が史上最悪のクラスの落第率やカンニング事件の多さを自慢しているようなものだ。
それは成功の証ではなく、歪んだインセンティブによって監督体制が大きく崩れていることの証拠に過ぎない。
これまでに仮想通貨業界に対して厳しい姿勢を見せてきたゲイリー・ゲンスラー氏ですが、2025年1月20日をもってSECの委員長を退任することが決まっており、ドナルド・トランプ氏が率いるトランプ政権下で誰がSEC委員長のポストに就くのかに注目が集まっています。
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Souce:SEC発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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