財務省は、2019年6月8日〜9日にかけて福岡で開催された「G20財務相・中央銀行総裁会議」の声明文を公開しました。この記事では、公開された文章に記載されている中でも「仮想通貨・暗号資産・ブロックチェーン(分散型技術)」に関する項目について、原文や複数の報道を元にしてわかりやすく解説します。
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基盤技術の可能性を評価、リスク警戒は引き続き
この文章にはこれまでと同様に「暗号資産の基礎になる技術は金融システムや経済とって有益なものなる可能性がある」ということが記されています。
また、現時点で暗号資産は国際的な金融システムの安定に脅威をもたらしてはいないものの、今後も引き続き「消費者・投資家保護」や「マネーロンダリング・テロ資金供与への対策」などへのリスク警戒を続けるとも説明されています。
暗号資産の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定に脅威をもたらしていないが、我々は、消費者及び投資家保護、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策に関するものを含め、リスクに引き続き警戒を続ける。
金融庁によると、この箇所に対する「参加国からの異論はなかった」とのことで、G20からの依頼を受けた金融安定理事会(FSB)が”暗号資産が金融システムに与える影響”を定期的に評価しており、今のところ暗号資産は金融システムの脅威になっていないという判断に文句を言う人はいなかったと伝えられています。
しかし金融庁は、ビットコイン価格がこのまま上がり続けた場合には意識が変わる可能性があるため『引き続き警戒を続ける』との表現を用いているとのことです。
「マネーロンダリング・テロ資金供与」への対策
「マネーロンダリング」や「テロ資金供与」に対する対策に関しては、今月21日に発表される予定となっている金融活動作業部会(FATF)の「解釈ノート及びガイダンス」を採択することを期待すると説明されています。「解釈ノート」とは具体的にどのように適用するか?の基準を定めるものです。
日本は世界に先駆けて「仮想通貨取引所を”登録制”にする」という対応をとることによって、マネーロンダリングなどの問題に対処することを選択しましたが、実際にマネーロンダリングを防止するためには、日本だけでなくその他の国も協力する必要があります。
今回の会議では、日本だけでなくドイツやフランスなどの国からも「マネロン対策のために協力することの重要性」を指摘する意見が出ており、少なくともこの分野に関しては「仮想通貨取引所は登録制か免許制にしなければならないことが確定した」とも報告されています。
我々は、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策のため、最近改訂された、仮想資産や関連業者に対する金融活動作業部会(FATF)基準を適用するというコミットメントを再確認する。我々は、FATFが今月の会合にて、解釈ノート及びガイダンスを採択することを期待する。
投資家・消費者保護には「IOSCOの報告書」を
投資家・消費者保護に関しては、世界各国・地域の証券監督当局や証券取引所等から構成されている国際的な機関である「証券監督者国際機構(IOSCO:通称イオスコ)」からの報告書を歓迎するということが記されています。
我々は、消費者及び投資家保護や市場の健全性に関し、暗号資産取引プラットフォームについてのIOSCOの報告書を歓迎する。
この「IOSCO」の報告書作成には金融庁も関わっていますが、金融庁はこの『IOSCOの報告書を歓迎する』と言う点に関しては「投資家保護のために規制をかけなさい」ということではないと説明していると報告されています。
日本は”投資家保護”のために規制をかけていますが、これに関しては国によって大きな違いがあり「完全に禁止する」という対応を取っている国や「自己責任で投資すればいい」という国などが存在します。
『IOSCOの報告書を歓迎する』というのは、国よって規制に違いがある中で「規制したい」と考えているのであれば”IOSCOの報告書”が基準として利用できるという意味だとされています。
この「IOSCOの報告書」の中には、最近日本で正式に成立した”改正資金決済法”などの内容にある「顧客資産を保護するために、別で見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)を保持することを義務付けること」や「取り扱う仮想通貨に関する追跡可能性などの評価を行うこと」などが含まれているとのことです。
「有価証券に該当しない仮想通貨」の規制が重要に
仮想通貨規制に関しては、”有価証券に該当する仮想通貨”に関しては規制内容が比較的はっきりしているものの、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のような”有価証券に該当しない仮想通貨”に関する世界各国の規制内容にばらつきがあることが指摘されています。
具体的には「暗号資産に対する現在の取組み」や「規制アプローチ」などに関する金融安定理事会(FSB)の報告書を歓迎するということが記載されており、FSBや基準設定団体に対しては、暗号資産のリスクを監視し、多国間で必要になると考えられる作業内容について検討することが求められています。
・我々は、FSBの暗号資産当局者台帳や、暗号資産における現在の取組、規制アプローチ、及び潜在的なギャップに関する報告書を歓迎する。
・我々は、FSBと基準設定主体に対して、リスクを監視し、必要に応じ追加的な多国間での対応にかかる作業を検討することを要請する。
「分散型技術がもたらす影響」などを引き続き議論
最後に、暗号資産の基盤技術となっている幅広い意味での「分散型技術」に関しては、 “仲介者を排除した直接的な金融取引”といったものは現状として未だに多くの問題点などがあることから、引き続き「それがもたらす潜在的な影響」や「金融安定性・規制」などについてさらなる議論が必要であることが示されています。
・我々はまた、分散型金融技術、それが金融安定性や規制、ガバナンスにもたらす潜在的な影響、及び当局が広範なステークホルダーとの対話をどのように強化できるかについてのFSBの報告書を歓迎する。
・我々は、サイバーの強靭性を高める努力を強化し続けるとともに、サイバー攻撃への対応や復旧のための効果的な取組を明らかにするFSBのイニシアティブの進捗を歓迎する。
今回の共同声明は、前回の内容と同様に具体的な決定事項などが記されたものではないものの、内容自体はより詳しいものになっており、世界各国の規制当局や自主規制団体などで協力して調査・議論を行い「既存の問題を解決するための適切な対応を図っていくことの重要性」が記されています。
具体的には、
・証券監督者国際機構(IOSCO)
・金融活動作業部会(FATF)
・金融安定理事会(FSB)
などによる報告を元に今後の行動を決定していくことが記されているため、今後もこれらの機関や団体、世界各国の規制当局の見解などに注目が集まります。
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