経営管理体制などに重大な問題
関東財務局は2024年6月14日に、暗号資産取引所を運営しているCoinBest(コインベスト)に対して行政処分を行なったことを発表しました。
CoinBest(コインベスト)は2017年8月に設立された日本の暗号資産取引所であり、仮想通貨の現物取引サービスに加えて、法人向けのビットコインマイニングサービスも提供されています。
今回の行政処分は、暗号資産取引所が支援する形で新しい仮想通貨を発行・販売する「IEO」に関するもので、2024年6月14日〜2024年12月13日までの期間にかけてIEO業務を停止することが命じられています。
コインベストは2023年3月24日に、NFTエコシステムの構築を行う「DART’s株式会社」が発行する仮想通貨DARトークンのIEO実施に向けた契約を締結したことを発表していましたが、今回の発表ではコインベストの経営管理態勢・内部管理態勢・内部監査態勢・マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢に重大な問題が認められたと報告されています。
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行政処分の理由と内容
行政処分の理由としては以下のような点が挙げられており、コインベストにはこれらの問題を解決するために必要な措置を講じることが求められています。
経営管理態勢
- IEO業務の早期実現による収益獲得を優先し、経営上重要な事項であるIEO業務への参入について取締役会に付議せず、経営資源の配分や経営上のリスクに関する議論を行わないまま、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)に新規暗号資産の販売に係る審査の申請を承認していた。
- 取締役会で決議すべきとされている取締役の利益相反取引や、内部管理部長及び内部監査部長等の選任・解任等を付議していないなど、取締役会は形骸化し、業務意思決定機関としての機能を発揮していない。
内部管理態勢(IEO態勢)
- 2線機能を担う内部管理部門の担当役員等が相次いで退職・休職したことにより、IEO審査担当役員やマネロン・テロ資金供与対策に係る統括管理者が不在となる中、内部管理態勢を構築することなく、IEO業務による収益獲得を優先し、同業務に必要な態勢の整備や人員の確保、同業務を行うことにより生じ得る経営上のリスクへの対応について、十分な検討を行わないまま、IEOの申請等を行っている。
- IEO業務は、IEO審査担当役員に限らず、当該業務に取り組むための専門的な人材を配置していないなど、IEO業務への参入に係る必要な審査体制を整備していない。
- このような中でIEO審査を開始した結果、コインベストは発行体・事業内容を審査する立場にあるにもかかわらず、アレンジャー兼発行体のアドバイザーとして同事業を推進する立場にある事業者及び発行体と一体となって、IEOに係るJVCEAへの審査の申請を行っているほか、退職した役員を担当役員とした事実と異なる記載をして、申請を行うといった不適切な実態が認められており、IEO業務を適正かつ確実に遂行するための内部管理態勢に著しい不備が認められる。
内部監査態勢
- コインベストでは、3線機能を担う内部監査部門の部長や職員も相次いで退職しており、第3線として実効性のある内部監査態勢を構築していないことから、令和2年12月の業務開始以降、規則等に則った内部監査が実施されていない。
マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢
- コインベストは、統括管理者である担当役員・部長・主要な職員が相次いで退職・休職する中、役員の中から新たな統括管理者を選任していないなど、実効性のあるマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の構築を行っていない。
- このため、マネロン・テロ資金供与やなりすましの疑いのある取引が認められるにもかかわらず、これらの取引の実態を把握・検証せず、疑わしい取引に該当するか検討を行っていないなど、取引モニタリングを適切に実施する態勢や、疑わしい取引の該当性について適切な検討・判断を行う態勢を整備しておらず、ガイドラインにおいて対応が求められる事項に係る措置が不十分。
- 犯収法施行規則第20条第1項第24号に基づく実質的支配者の確認結果の記録を保存しておらず、犯収法に違反している。
コインベストに対する命令の内容
これらの理由からコインベストには「2024年12月13日までのIEO業務停止命令」と「暗号資産交換業を適切かつ確実に遂行するための業務改善命令」が下されています。
具体的な命令の内容には以下のようなものが含まれます。
- 2024年12月13日までのIEO業務停止
- 暗号資産交換業を適切かつ確実に遂行するための業務改善
- 問題の根本原因の分析・評価を行った上で、十分な改善が可能となるよう経営体制を強化すること
- 取締役会の機能強化を図り、法令等遵守や適正かつ確実な業務運営を確保するための実効性ある経営管理態勢を構築すること
- 根本原因の分析・評価を踏まえ、IEO業務などをはじめとする新規暗号資産の取扱いに関する態勢を整備すること
- 第2線・第3線の適切な機能発揮を図ることを含め、適正かつ確実な業務運営を確保するための実効性ある内部管理態勢及び内部監査態勢を構築すること。
- 職務の内容・重要性に応じた適切な人材が採用・選任されるプロセスを整備すること
- マネロン・テロ資金供与に利用されることを防止するための実効性あるリスク管理態勢を構築すること
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づく確認結果の記録の適切な実施をはじめとする法令等遵守態勢を構築すること
- 具体策・実施時期を明記した業務改善計画を2024年7月16日までに提出して直ちに実行すること
- 業務改善計画の実施完了までの間、3か月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに報告すること(初回提出基準日は2024年9月末)
コインベストからの公式発表
コインベストは2024年6月14日に今回の行政処分について公式発表を行なっており、「当社は行政処分を真摯に受け止め、今後このような事態を起こさぬよう、法令遵守のより一層の徹底と管理態勢の強化に取り組み、再発防止に努めてまいります」とコメントしています。
なお、今回の業務停止命令はIEO業務を除いて各種サービスや顧客資産に影響を与えないとのことで、以下のサービスは通常通り利用できると説明されています。
- 日本円の入出金
- 暗号資産の入出庫
- 販売所の取引・機能
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