欧州連合(EU)が2024年6月に承認した包括的な仮想通貨規制「MiCA法」が、ステーブルコイン市場に大きな影響を与える可能性が出てきました。この規制は「Market in Crypto Assets」の略称で、ステーブルコインの発行者に対して厳格な要件を課しています。
ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨に価値を連動させた仮想通貨のことです。その中でも最大手のテザー社が発行するUSDTに、MiCA法が不利に働くのではないかという見方が出ています。
金融大手JPモルガンは最近の報告書で、MiCA法の要件がテザー社の事業運営に大きな変更を迫る可能性があると指摘しました。特に注目されているのは、ステーブルコイン準備金の60%を欧州の銀行に保管することを義務付ける規定です。
これに対し、テザー社は強く反論しています。同社の広報担当者は、「JPモルガンのアナリストは業界の仕組みを根本的に誤解している」と述べ、自社のプロセスとリスク管理手順が従来の金融機関よりも安全で透明性が高いと主張しています。
しかし、テザー社も規制の影響を完全には否定していません。MiCAの特定の側面が、ステーブルコイン発行者の役割を複雑にし、EUでのライセンス取得におけるリスクを高める可能性があることを認めています。
一方で、テザー社はこれまでも規制当局からの指摘に応じて、準備金の透明性向上に努めてきました。2024年第2四半期には、米国債の保有額が976億ドル(約14兆円)を超え、国別ランキングでも18位に入るほどの規模に達しています。
MiCA法の影響は、すでに一部の仮想通貨取引所の動きにも表れています。UpholdやOKXといった取引所は、欧州市場でのUSDT取扱いを中止する決定を下しました。
ステーブルコインの規制をめぐる議論は、仮想通貨業界全体の今後の方向性を占う上で重要な指標となりそうです。テザー社は長期的にはMiCAに対して楽観的な見方を示していますが、規制がもたらす具体的な影響は、今後徐々に明らかになっていくでしょう。
業界関係者からは、ステーブルコインの規制はシステムリスクを増大させるものではなく、むしろ安全性を向上させるものでなければならないという声も上がっています。EUの規制当局と仮想通貨業界のプレイヤーたちが、どのようにバランスを取っていくのか。その行方に、世界中の投資家や関係者の注目が集まっています。
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Souce :Coindesk報道
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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