富山第一銀行は「地域独自のデジタル通貨」発行に向けた実証実験を行います。この実験で発行される仮想通貨はブロックチェーン技術を用いて取引履歴などの情報を記録することによって、店舗側が顧客情報を簡単に追跡・分析できるようになっているため、実店舗での導入を加速させ日本のキャッシュレス化を促進することが期待されています。
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デジタル通貨の利用状況を分析
富山第一銀行は今回の実証実験で銀行内部で使用する専用のデジタル通貨を発行し、使い勝手などの研究を行うことによって、2019年10月の事業化を目指すと報じられています。
具体的な実験内容としては、デジタル通貨「First Bank Coin(FBC、仮称)」を発行し、専用のアプリを使った送金や本店内の売店で実際に使用することによって、デジタル通貨の利用状況を把握し、分析を行うとされています。
本店内には専用口座が設けられており、銀行員が振り込んだ金額に応じて、9,999円を上限にして1FBC=1円換算でデジタル通貨を発行するとされています。
残高確認、送金、決済に使用するアプリはシステム開発を手がけている大手企業「インテック」と共同開発したものが使用されるとのことで、スマートフォンを使って残高確認や送金を行うことができ、商品の購入には「QRコード」をスキャンする方法が採用されていると報じられています。また、これらの送金や決済の手数料は無料となっているため利用者にとって魅力的なサービスとなっています。
キャッシュレス化に向け「2019年末」発行目指す
富山第一銀行は、昨年開催されたイベントでもブロックチェーン技術を活用した実証実験を行っていますが、その当時はポイントが付与されるだけのものとなっており、日本円と交換することはできませんでした。
しかし今回発行されるデジタル通貨は、日本円との交換ができるだけでなく、商品の販売者側が顧客情報を簡単に分析できるものとなっています。
今回の実験を担当するデジタルイノベーション室の長谷聡室長は、消費税率の引き上げに伴いキャッシュレス化の機運が高まっていると説明しており、2019年10月には自治体やそのほかの金融機関と協力して正式にデジタル通貨を発行したいと考えているとされています。
日本「キャッシュレス化」の現状
日本は、仮想通貨を早い時期から取り入れていたものの、キャッシュレス化の面に関しては世界にやや遅れを取っています。
日本銀行の雨宮正佳副総裁は、中央銀行独自のデジタル通貨(CBOB)を発行することについて慎重な姿勢を示しており、日本銀行は今のところデジタル通貨を発行する計画を持っていないと述べています。
世界各国では、本格的な「キャッシュレス社会」の実現に向けたプロジェクトが続々と発表されており、ブロックチェーン技術の活用も進んできていますが、日本は未だに現金の使用率が高いことでも知られており、キャッシュレス化に向けた取り組みは一般の人々にはあまり知られていません。
今回の実証実験が成功し、本格的にデジタル通貨が発行されることになれば、日本でもキャッシュレス化に向けた取り組みがさらに進むきっかけにもなるでしょう。海外では2020年に開催が予定されている「東京オリンピック」で仮想通貨リップル(Ripple/XRP)を採用し、日本国内での支払いを効率化することを求める意見なども出ています。