ブロックチェーンの技術は仮想通貨の枠を飛び越え、医療業界においても様々な恩恵をもたらす可能性があるとして注目を浴びています。実装にはまだまだ時間を要するものの医者、患者の両方に多くのメリットをもたらすとして期待されています。ここではブロックチェーンが恩恵をもたらすとされる事例を幾つか紹介していきたいと思います。
こちらから読む:医療業界に多くの恩恵をもたらす「ブロックチェーン技術」とは?
電子カルテなどの「セキュリティ向上」
医療業界において患者のカルテや情報等と言ったデータは機密性が高く非常にデリケートなものとなっています。そのため改ざんできないブロックチェーンの技術を活用すればセキュリティの向上が期待されます。
患者は自身のこれまでの健康情報や薬局の処方箋データなどの詳細を記録でき、アクセスできる医療機関を選択する事ができます。
また、患者の情報はそれぞれの病院が独自で保管しているため、別の医療機関で診察を受ける際には一から診察を受けなかればいけなかったり、長い待ち時間やさらなる費用が必要となっていました。
しかしブロックチェーン上に一度、患者の情報を記録してさえいれば、同意のもとアクセスできるため時間短縮や費用削減が可能となります。また、病院間でのデータ共有もスムーズに行われるためミスや混乱を防止する事にも繋がります。
医薬品の「サプライチェーン管理」を合理化
ブロックチェーンとサプライチェーンの組み合わせは相性が良く医薬品においても効率化と透明性の向上がもたらされるとしています。
医薬品にとって偽物の流通や回収と言った課題は大きな問題となっていましたが、ブロックチェーンで医薬品を管理すれば、どこで製造されたか、どのトラックやコンテナ船で運ばれたか等、薬局の棚に並ぶまでを追跡する事が可能になります。
そのため偽造された医薬品が混入するのを防ぐこともでき、万が一問題が起きた場合にもブロックチェーン上で記録されているため残らず回収する事ができます。またこれまで手作業による検品も不要となるためミスを防ぎコスト削減にも繋がります。
保険分野における「業務効率化・コスト削減」
保険金の支払いや請求などの処理はこれまで非常に時間を要するものとなっていました。その理由としては「未だに書類などの紙ベースでやり取りが行われていること」や「不正申請ではないかなどを確認するための検証が必要なこと」などといった、複雑な作業が多数必要であることが挙げられます。
ブロックチェーンを活用すれば、このような保険関連書類の処理プロセスを迅速化することができるようになり、安全性を高めつつコスト削減を図ることも可能になります。
さらにこれまで複雑だった保険プランの明確化、請求の流れの追跡が可能となり医療業界関係者、利用者共にメリットがあります。また仲介業者の介入の必要性を極力減らす事も期待されています。
研究促進や「新たな治療法の確立」
医療業界では「治療が困難な病気の治療法を発見するため」や「新薬を開発するため」に”ビッグデータ”という存在が非常に重要なものとなっています。そのため、ブロックチェーン上で安全に記録・管理される患者の医療データは特に貴重な存在となります。
ブロックチェーン上で患者の医療記録を管理するとなると、情報の管理や取り扱い方法が特に重要となりますが、患者が信頼できる企業のみアクセス権を与えることができるようにすれば、そのような問題も解決に向かう可能性があります。
そこで患者が信頼できる企業のみアクセス権を与え、自身の医療データを活用してもらう事によって、様々な研究機関で広く使用され業界の成長を促進させる事ができます。
また患者もデータを売る事で報酬を得ると言ったシステムの構築も可能となるかもしれず、相互利益が期待されます。
IoT機器を用いた「データ管理・共有」
医療用に開発されたIoT機器は様々なデータを扱います。患者が手首などに装着するタイプのデバイスなどはその人の健康状態を知ることができるように、心電図や血圧などをはじめとする様々なテータを測定することが可能です。
これらのデータをブロックチェーン技術を用いて病院などと安全に共有できるようになれば、より適切な診療を行うことができると期待されます。
電子カルテなどと共にこのようなデータを管理・共有すれば、これまで病院を訪れるたびに測定していたいくつかて手順を減らすこともできるようになるでしょう。
仮想通貨・トークンを活用した「インセンティブ(報酬)」
ブロックチェーン技術と医療を掛け合わせたサービスを提供しているプロジェクトの中には、仮想通貨やトークンを発行してユーザーにインセンティブ(報酬)を提供しているものも存在します。
健康を維持するための運動や食生活に取り組んでいる人々に対して「成果に応じたトークン報酬」を付与すれば、それらの活動を促進して関連サービスとの新しい繋がりを作ることもできます。
仮想通貨やトークンを用いた報酬制度は非常に多くのことで活用することができ、健康管理だけでなく、データ共有を行なったユーザーに対して報酬を支払うものなども存在します。
このような報酬制度は、人々の行動を促進して、業界を活性化させるための効果的な手段の一つでもあります。
医療業界で活用が進むブロックチェーン技術
今回紹介した事例は一部であり、医療関連企業でも早い所ではブロックチェーン技術の活用に既に取り組んでいる企業も存在しています。
日本国内では、心電図・血糖値なども測定することができる「医療用IoTバンド」のデータ管理などにブロックチェーン技術が使用されており、海外では、国際輸送サービスを提供している大手企業「FedEx」の技術研究所(FIT)が、製薬会社である「Good Shepherd Pharmacy(グッド・シェパード・ファーマシー)」と提携して医薬品の再配布などに取り組んでいます。
当メディアでは、この他にも具体的な活用事例を複数紹介していますのでそちらも合わせてご覧ください。
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