UNICEF(ユニセフ/国際連合児童基金)は2020年6月19日に「ユニセフ仮想通貨ファンド(UNICEF Cryptocurrency Fund)」が開発途上国や新興経済国のテクノロジー企業8社に投資を行ったことを発表しました。今回の投資では、記事執筆時点の日本円換算で約315万円に相当する「125イーサリアム(ETH)」が投資されています。
世界7ヵ国の8社に「125ETH」を投資
ユニセフ仮想通貨ファンド(UNICEF Cryptocurrency Fund)は、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産で寄付を受け入れ、それらの暗号資産を用いて世界中の子供や若者に利益をもたらすオープンソース技術に資金を提供している団体です。
今回の発表では、この「ユニセフ仮想通貨ファンド」が世界7ヵ国にある合計8社のテクノロジー企業に125ETH(約315万円)の投資を行ったことが報告されています。これらの資金は今後6ヶ月に渡って「プロトタイプの作成」や「技術の拡大」などに使用されると説明されています。
今回出資を受けた企業は、ユニセフのイノベーション・ファンドから法定通貨で最大10万ドル(約1,070万円)を既に受け取っているとのことで、現在は「オープンソース技術」と「デジタル公共財」の開発を継続するために暗号資産を受け取っているとのことです。これらの企業は、自社の技術を活用して世界中の子どもや若者たちへの新型コロナウイルスの影響を暖和するための取り組みなどを行っています。
出資を受けたテクノロジー企業の事業内容
ユニセフ仮想通貨ファンドから出資を受けた企業は「Afinidata・Avyantra・Cireha・Ideasis・OS City・StaTwig・Somleng・Utopic」の8社であり、各企業の事業内容としては以下のように説明されています。
Afinidata(グアテマラ)
Afinidataは、個々人向けにカスタマイズされた「幼児教育プログラム」を保護者に提供するため、人工知能(AI)ベースのアプリ開発を進めているグアテマラの企業です。
Avyantra(インド)
Avyantraは、データサイエンスを活用して新生児敗血症の早期診断において最前線で働く医療従事者をサポートする保健アプリの機能を拡張しているインドの企業です。
Ideasis(トルコ)
Ideasisは、ユーザーが自宅で不安や恐怖症に対処できるように、暴露療法ツールをVR(仮想現実)からWebVR(ウェブ仮想現実)に移行しているトルコの企業です。また、新型コロナウイルス(COVID-19)や孤立に起因する不調に対処するための治療プログラムを新たに開発します。
OS City(メキシコ)
OS Cityは、ブロックチェーン技術を用いた政府資産を発行しているメキシコの企業であり、ブロックチェーンIDを1,000件発行し、卒業証書をオンラインで授与できるようにしています。
StaTwig(インド)
StaTwigは、インド政府と連携して米の配布を追跡・改善し、何百万人もの貧困層の人々に食料を届ける取り組みを支援するブロックチェーンを活用したアプリを試験的に運用しているインドの企業です。新型コロナウイルスの影響によって、同社アプリのニーズはさらに高まっていると説明されています。
Somleng(カンボジア)
Somlengは、カンボジア政府と連携して新型コロナウイルスに関する重要な情報を発信するための、低コストな自動音声応答システムを拡張しているカンボジアの企業です。
Utopic(チリ)
Utopicは、学習ゲームをVRからWebVRへと移行することによって、新型コロナウイルスで自宅待機が求められている環境の中でも、教育従事者が家庭から子どもの読解力を評価・追跡・改善できるよう支援しているチリの企業です。
暗号資産の「技術的な利点」を称賛
「ユニセフ・ベンチャーの共同代表」でありながら「イノベーション部門プリンシパル・アドバイザー」でもあるChris Fabian(クリストファー・ファビアン)氏は『デジタル化が急速に進んでいる現代社会において、ユニセフも新しい世界の全てのツールを未来の子どもたちの助けとなれるように活用しなければならない』と述べており、暗号資産を用いた送金が”迅速かつ低コスト”であることを称賛しています。
デジタルの世界が想像以上に早く近づいてきているのを目の当たりにしています。ユニセフは、現在そして未来の子どもたちの助けとなれるよう、この新しい世界のすべてのツールを活用しなければなりません。
これらの資金を世界7カ国の8つの企業へ送金するのにかかった時間は20分未満で、費用も20米ドル未満でした。ほぼ瞬時に価値を世界で移動でき、手数料は送金総額の0.00009%未満、そして寄付いただいた方やご支援者に対してリアルタイムの透明性を確保できる、胸を躍らせるツールです。
UNICEF(ユニセフ/国際連合児童基金)は早い段階から暗号資産やブロックチェーン技術を取り入れており、2018年2月時点で暗号資産のマイニング(採掘)を通じて寄付金を募るプロジェクトなども実施されていました。
今回出資を受けた企業には、資金提供だけでなく「事業成長を促進するためのメンターシップ、製品・技術支援、オープンソースとUX・UIの開発支援、専門家やパートナーへのアクセス、ソリューションを紹介する機会」なども提供されるとのことです。