金融庁は2020年9月30日に「令和3年度 税制改正要望項目」を取りまとめた内容を公開しました。仮想通貨業界では数年前から”暗号資産関連の税制改正”を求める要望が多数出されていましたが、今回公開された要望項目の中には暗号資産に関する項目は含まれていないため、令和3年度も暗号資産の税制改正が行われることはないと考えられます。
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金融庁「令和3年度 税制改正要望項目」公開
金融庁は2020年9月30日に“2021年度の税制改正”に関する要望を取りまとめた「令和3年度 税制改正要望項目」を公開しました。これは財務省に対して税制改正を求める内容を取りまとめたものであり、今回の要望項目では以下のような項目が挙げられています。
【令和3年度税制改正要望における主な要望項】
1.アジアの金融ハブとしての国際金融センターの確立
▶︎国際金融ハブ取引に係る税制措置
▶︎総合取引所の活性化に資するための金融所得課税の一体化
2.新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた対応
▶︎第三者への事業承継に係る課税猶予措置
▶︎中堅・中小企業向け融資促進支援のための時限措置
▶︎企業再生税制の拡充(事業再生ファンドによる債権放棄の追加)
▶︎不動産投資法人における未収賃料の特例
3.税制上の手続のデジタル化の推進
▶︎NISA関連等の電子手続の簡素化
▶︎クロスボーダー取引に係るデジタル化
4.保険
▶︎生命保険料控除制度の拡充
なお「税制改正要望項目」は8月末までに各省庁からの税制改正要望を集めて取りまとめたものであり、その後12月中旬頃には与党によって最終的な改正案である「税制改正大綱」が発表され、翌年1月に開催される通常国会で審議が行われた後に閣議決定によって改正案が成立するスケジュールとなっています。
「税制改正要望項目」は要望を取りまとめた段階のものであるものの、この要望項目に基づいて最終的な税制改正案が作成されることとなるため、税制改正の今後を判断する際の重要な材料となります。
暗号資産・仮想通貨に関する言及はなし
仮想通貨業界では数年前から「暗号資産の税制改正」を求める要望が出されており、過去には「日本維新の会」の藤巻 健史(ふじまき たけし)氏や音喜多 駿(おときた しゅん)氏などが税制改正を求めていた他、今年7月末には日本の業界団体である「日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)」と「日本暗号資産取引業協会(JVCEA)」からも”2021年度の税制改正に関する要望書”が提出されていました。
しかし、今回公開された「令和3年度 税制改正要望項目」には暗号資産に関する内容は記されていないため、少なくとも2021年度は暗号資産関連の税制改正が行われることはないと予想されます。
「暗号資産の税制改正」に関しては、2020年6月2日に開かれた参議院財政金融委員会の中でも麻生 太郎(あそう たろう)大臣が『現時点ではまだ難しい』との見解を示しており、音喜多議員からの要望に対して以下のような説明が行われています。
現在の日本は”金利が低いにも関わらず1,900兆円ほどある個人金融資産のうち950兆円ほどが現金預金である”という異常事態にあるため、企業の発展を促進するためにも各家庭に”貯金よりも投資へ”と勧める必要があり、様々な政策を行っている。
このような状況の中で現在提案されているような暗号資産の税制改革を行った場合には、”政府が家庭に暗号資産への投資を勧めている”といったような認識をされてしまう可能性があるため、現在の状況で暗号資産の税制改革を進めるのは少し難しいのではないかと考えている。
なお、これまでに要望として出されている「暗号資産の税制改正案」としては以下のようなことが挙げられます。
- 暗号資産の売買益を「最高税率55%の総合課税」から「20%の分離課税」に変更すること
- 暗号資産売買損の繰越控除を可能にすること
- 暗号資産の売買を非課税にすること
- 店頭などでの暗号資産の少額決済を非課税にすること