富士通研究所は、ブロックチェーン技術を用いたアイデンティティ流通技術「IDYX(IDentitY eXchange)」を開発したことを2019年7月4日に発表しました。この技術は、オンライン取引を行う際にそれぞれがお互いを評価して”信用度スコア”を作成し、それらの情報を必要な時に事前に確認できるようにすることで、顔の見えないオンライン上でのやり取りに安全と安心をもたらすことができるものとなっています。
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オンライン取引における「個人の信頼性」を
株式会社富士通研究所は2019年7月4日、オンライン上での取引を行う際に「取引相手の本人情報の真偽」を判断することができるアイデンティティ流通技術「IDYX(IDentitY eXchange)」を開発したと発表しました。
デジタル化が急速に進んでいる現代社会では、インターネット上だけで取引を行うケースも増えてきているため「相手がどんな人物なのか?」や「本当に信頼できる人物なのか?」を判断することが難しいという問題が発生しています。このような問題は実際に詐欺や犯罪行為の原因にもなっており、本人情報を詐称するケースも出てきているため、解決すべき重要な課題の一つでもあります。
富士通研究所が開発した「IDYX」は、オンライン取引を行う際にそれぞれのユーザーがお互いを評価できるようにすることで”ユーザーの信用度”を収集し、集められたデータを元にして各個人の「本人情報の信用度」と「詐称リスク」を分析することができる技術となっています。
この技術が実用化されることによって、「IDYX」のユーザーは取引を行う前に”取引相手の信頼性”を確認することができるようになるため、多くの人々が安全にオンラインサービスを利用できるようになります。
ブロックチェーンで保証された「個人の信用度スコア」
現代社会では「シェアリングサービス」や「マッチングサービス」などの普及に伴い、各個人や企業に関する正確な情報を相手に伝えることが重要になってきているため、ブロックチェーン技術を用いた「分散型ID」などの研究開発があちこちで進められています。
しかしこのような”分散型ID”のシステムは「サービス事業者や利用者が第三者と協力することによって記録された情報を詐称することができる」といった問題をはらんでいたため、より信頼できる方法が求められていました。
「IDYX」は、取引を行なった際に得られる各ユーザーの評価を一連のデータとしてブロックチェーン上に記録します。ブロックチェーン上に記録されたデータは改ざんすることが極めて困難であるため、「各ユーザーの信用情報」の信頼性を向上させることができます。
またブロックチェーン上に記録されたデータから各ユーザーの関係性を確認することができるように”グラフ構造”への変換も行われると説明されています。具体的には「何人のユーザーから信用されているか」や「どれくらい信用度があるユーザーから信用されているか」などといった情報から「信用度スコア」をつけていくとされています。
この”グラフ構造”を用いることによって「自分の信用度スコアをつり上げるために”裏で関わりのある第三者”など協力して不正に評価を高める」といった詐称行為も特定することができるとのことです。
また「IDYX」のユーザーは、必要となる一部の本人情報を開示するだけで情報の真偽を証明し、取引を行うことができるとされており、これによって取引相手も不必要な情報を取得しなくて済むため、より安全で信頼性の高い取引を行うことができると説明されています。
安心・安全の「オンライン取引エコシステム」を構築
富士通研究所は、今回開発した「IDYX(IDentitY eXchange)」を使用することによって、企業や個人の間でオンライン取引を行う際に、誰もが簡単に”信頼できる本人情報”を確認できる環境を提供し、安心してオンライン上で取引を行うことができる「業種・業界横断のデジタルエコシステム」を構築すると説明しています。
今後は「IDYX」をデジタル関連のビジネスを支える「アイデンティティーの信用基盤サービス」として発展させ、金融業界をはじめとする様々な分野で実証を進めていくと説明されています。
また具体的な予定としては、ブロックチェーン技術を活用したデータ活用のクラウドサービスである「FUJITSU Intelligent Data Service Virtuora DX データ流通・利活用サービス」の新機能として2019年度中に実装することを目指すとされています。
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