中国の中央銀行である「中国人民銀行」は2020年10月23日に「中国人民銀行法の改正案」を公開し、一般からの意見募集を開始しました。この改正案の中では同国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)にあたる「デジタル人民元」を合法化する一方で、人民元に価値が連動するステーブルコインなどの発行・流通を禁止する方針が示されています。
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「中国人民銀行法の改正案」を公開
中国人民銀行は2020年10月23日に「中国人民銀行法」の改正に関するコメントを募集するための法律改正案を公開しました。
この改正案は”金融部門監督の役割拡大、リスク軽減、金融分野の安定性確保”などを目的としたものであり、同国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)にあたる「デジタル人民元」に関する内容も記載されています。
改正案の中では『人民元は物理的な形とデジタル版の両方を含める』ということが記載されており、“デジタル人民元の法的根拠を提供すること”が今回の改正の狙いの1つであるとされています。
「人民元連動型ステーブルコインの発行」は禁止に
デジタル人民元は合法化する方向で計画が進められているものの「人民元に価値が連動したステーブルコイン」に関しては発行・流通を禁止する方針が示されており、『個人・企業・団体は人民元の流通を代替するトークンを発行してはならない』ということが説明されています。
また改正案の中では『これに違反した場合にはそれらの不法行為を差し止め、ステーブルコインの発行・販売で得られた利益を押収し、押収した利益の最大5倍に相当する罰金を科す』ということも説明されています。
第22条(トークン):組織または個人は、市場で流通している人民元に代わるトークン・クーポン・デジタルトークンを作成または販売することはできません。
第65条(トークン作成と販売に伴う責任):市場で流通している人民元に代わるトークン・クーポン・デジタルトークンの発行・販売を行なった場合には、中国人民銀行は違法行為の停止を命じ、違法に製造・販売されたトークンを破棄するものとします。チケットやデジタルトークンで得られた違法な収入は没収し、違法に取得した金額の5倍未満の罰金を科します。違法に取得した金額が特定できない場合には、10万元〜50万元までの罰金を科します。状況が深刻な場合は、第61条第2項に従って罰則が科せられます。
この改正案が正式に採用された場合には、人民元に価値が連動したデジタル通貨・トークンなどの発行は禁止となるため、Libra(リブラ)のようなプロジェクトでも「人民元に連動したLibra」などは発行することができなくなる可能性があると考えられます。
2020年11月23日まで一般からの意見募集
中国では「デジタル人民元」のテストが本格的に進められており、今月半ばには合計1,000万元(約1.57億円)相当のデジタル人民元が一般市民に配布され、その95%が実際に使用されたことも報告されています。
しかしながら今年7月には「デジタル人民元のテストを装った詐欺行為」が頻発していることなども報告されていたため、今後はこのような詐欺行為にも厳しい対応が取られていくことになると予想されます。
中国人民銀行は今回公開した改正案に関する一般からの意見を募集しており、2020年11月23日が募集締め切りとされています。