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米議員、フレアガスをビットコインマイニングに再利用「FLARE法案」提出

米国議員が、フレアガスを活用してビットコインのマイニングに再利用する「FLARE法案」を提出しました。環境保護とエネルギー再利用の両立を目指す新たな取り組みとして注目されています。

余剰ガスをBTCマイニングに活用

米テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員(共和党)は2025年4月1日に、油田で燃焼・排出されている余剰ガス(フレアガス)をビットコインマイニングなどの現地発電に再利用することを目的とした「FLARE法案」を上院に提出しました​。

この法案は、石油採掘時に副産物として発生し通常は大気中に燃やされ捨てられている天然ガスを有効活用し、電力に変換してビットコイン(BTC)マイニングなどの価値創出に役立てるためのインセンティブ措置を盛り込んでいます​。

具体的には、本来焼却処分されていた天然ガスを回収・利用する設備投資に対し、従来数年かけて行う減価償却を初年度に100%即時償却できる税制優遇(ボーナス償却)の恒久化が提案されています​。

法案提出時の声明でクルーズ議員は次のように述べ、同法案成立への意欲を示しています。

テキサス州をビットコインマイニングの世界最大の拠点にすることに全力を注いでいる。

FLARE法案は、そうした取り残された天然ガスを活用することでテキサスの莫大なエネルギー潜在力を活かし、同州をビットコイン産業の本拠地としての地位を強化するとともに環境にも良いものだ。議会で速やかに審議・可決するよう呼びかけたい。

なお、この法案は上院財政委員会に付託されており、成立には上下両院可決が必要となります。

捨てられるガスをマイニング資源に

油井から石油を採掘する際、副次的に発生する天然ガスはパイプラインなどで回収・利用できない場合、その場で燃焼放出(フレア)されます。こうしたフレア放出は温室効果ガス排出を増加させ環境に悪影響を及ぼすと同時に、エネルギー資源を無駄にしている指摘されています​。

メタンは20年スパンで見るとCO2の84倍の温暖化効果を持つため、燃焼させてCO2に変換した方がそのまま放出するより気候への影響を抑えられるという分析もあります​。

クルーズ議員の提案の背景には「捨てられていたエネルギーを有効利用し、排出削減につなげる」という狙いがあると見られています。さらに同法案は、ビットコインをはじめとするデジタル資産のマイニングを「付加価値を生む産業活動」として位置付けている点も注目を集めています。

米エネルギー省(DOE)や環境保護局(EPA)も石油ガス業界のメタン排出削減を政策課題としており、2023年末には新油井でのフレア放出を段階的に禁止する規制を打ち出しています。

ビットコインマイニング業界が法案支持

クルーズ議員の法案には、米国のマイニング業界からも歓迎の声があがっています。

ビットコインマイニング企業やエネルギー企業で構成される業界団体デジタル・パワー・ネットワーク(DPN)の政府渉外責任者ヘイリー・ミラー氏は「これは米国のエネルギー部門とデジタル資産業界にとって画期的な前進だ」と評価し、クルーズ議員のリーダーシップを称賛しています​。

ビットコインマイニング大手のMarathon Digital Holdings(MARA)社もX(Twitter)上で「ビットコインマイニングが排出削減と取り残されたエネルギーの有効活用に果たす役割を認識している」と表明し、全面的な賛意を示しました​。

テッド・クルーズ上院議員が提出したFLARE法案は、フレアガスを回収して付加価値のある用途(ビットコインマイニングなど)に活用するインフラへの全額即時償却を認めるものです。

MARA社はこの法案を支持します。本法案は、ビットコインマイニングが排出削減や未活用エネルギーの有効活用に貢献するものです。

また、大手資産運用会社VanEck社でデジタル資産リサーチ責任者を務めるマシュー・シーゲル氏は「FLARE法案はフレアガスのより効率的で持続可能な活用への道を開く可能性がある」と述べ、今回の取り組みを高く評価しました​。

テッド・クルーズ上院議員が、排出量削減と未利用エネルギーの活用策としてビットコインマイニングを支持しているのは素晴らしいことです。

FLARE法案が、フレアガスのより効率的で持続可能な活用につながる可能性があります。⚡️🔌

一方、環境保護の観点からは「仮想通貨マイニング産業への優遇は化石燃料依存を長引かせる」との懸念も一部で指摘されています。記事現時点でDOEやEPAから公式なコメントは出ていませんが、環境規制強化派とマイニング産業推進派の間で議論になる可能性もあります。

世界で広がる余剰ガス利用

米国ではすでにテキサス州など産油州を中心に、マイニング事業者が油井現場に移動型データセンターを設置してガス発電を行う事例が増えており、州レベルでもこれを後押しする政策が取られています。

日本国内でも、フレアガスを活用したビットコインマイニングが新たなビジネスモデルとして関心を集め始めています。2022年には大手商社の三井物産が、米国で余剰ガス発電によるビットコインマイニング事業を手掛けるクルーソー・エナジー(Crusoe Energy)社に出資し、戦略的パートナーシップを結んだと発表されています​。

三井物産はこの事業への参画について「制約により活用しきれていない余剰エネルギー(フレアガスや未活用の再生可能エネルギー)をコンピューティングリソースや電力需給調整に有効活用していく狙いがある」と説明しており​、エネルギーとデジタル資産の融合への国内企業の関心もうかがえます。

クルーズ議員のFLARE法案は、このような世界的な流れの中で、米国のビットコインマイニング産業を牽引するとともに、環境問題への具体的な取り組みを促進するものとして期待が寄せられています。

今後、米議会で審議が進む中で法案が具体的に調整される可能性はありますが、成立すればエネルギー政策と仮想通貨産業が融合した先駆的な法律になるのかもしれません。

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Source:テッド・クルーズ上院議員公式発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像