仮想通貨(暗号資産)を自分自身で管理しながら取引できるサービスである分散型取引所(DEX)について初心者向けにわかりやすく解説します。
この記事では、分散型取引所の基礎知識・仕組み・特徴・メリット・デメリット・注意点・使用方法・種類などの様々な情報をまとめています。
分散型取引所(DEX)とは?
分散型取引所(Decentralized Exchange/DEX)とは、ブロックチェーン上で契約を自動執行できるスマートコントラクトと呼ばれる機能を利用して、第三者を介さずに直接仮想通貨を取引できる取引所のことです。
DEXはインターネット上にウェブサイトとして数多く展開されているため、各DEXの公式サイトにアクセスして、自分の仮想通貨ウォレットを接続することによって簡単にサービスを利用することができます。
仮想通貨(暗号資産)は「ビットコイン・イーサリアム・ソラナ・カルダノ」などといった様々なブロックチェーン上で展開されていますが、DEXではその取引所がサポートしているブロックチェーンによって取引できる仮想通貨の種類が異なります。
イーサリアム対応のDEXではイーサリアム基盤のトークンを取引することが可能で、ソラナ対応のDEXではソラナ基盤のトークンを取引できます。複数のブロックチェーンに対応しているDEXは「マルチチェーン対応のDEX」とも呼ばれます。
中央集権型取引所(CEX)との違い
仮想通貨取引所には、中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)の2種類があります。
コインチェック・SBI VCトレード・ビットポイント・ビットバンクなどの広く知られる仮想通貨取引所は「CEX」に該当する取引所で、Uniswap・PancakeSwap・SushiSwapなどは「DEX」に分類されます。
CEXとDEXの違いとしては以下のようなものが挙げられます。
- 管理者
CEXは企業などの中央機関がサービスを管理・運営するが、DEXには特定の中央機関が存在しない。DEXによっては独自トークン保有者のコミュニティ投票で運営方針などを決定する場合もある。 - 資産管理方法
CEXでは取引所運営企業が預けられたユーザー資産を管理するが、DEXではユーザーが自分のウォレットで資産を管理したまま直接取引を行う。取引はスマートコントラクトで処理される。 - セキュリティ・プライバシー
CEXではユーザーの個人情報や資金が取引所のサーバー上で管理されるため、セキュリティリスクやプライバシーの侵害の可能性がある。DEXでは名前などの個人情報は収集されず、資産も自己管理できるため、プライバシーが保護される他、セキュリティリスクも低い。 - 規制と法的地位
CEXは一般的に各国の規制に準拠している場合が多く、各地域でライセンス取得が求められている。DEXは中央機関が存在しないため、法的な地位が不透明で規制に準拠していない場合がある。
⚠️注意点⚠️
CEXとDEXの両方に詐欺のリスクが存在します。詐欺のCEXでは資産を持ち逃げされるリスクがありますが、詐欺のDEXではウォレット接続時や取引署名時にウォレット内の資産を盗まれる可能性があります。DEXは詐欺も多いため特に注意が必要です。
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分散型取引所(DEX)の仕組み
分散型取引所(DEX)は、ブロックチェーン技術とスマートコントラクトによって支えられています。
ブロックチェーン技術は取引データを改ざん不可能な方法で記録する役割を持ち、スマートコントラクトは仲介者なしで取引契約を自動執行する役割を持っています。
従来の中央集権型取引所(CEX)は「取引所で働く人々やそのシステム」によってサービスが運営されていますが、分散型取引所(DEX)は「ブロックチェーン」と「スマートコントラクト」というシステムによってサービスが運営されています。
DEXの基本的な仕組み・流れは以下の通りです。
- ウォレット接続
最初にユーザーが自分で管理する仮想通貨ウォレットをDEXに接続する。ウォレット接続を許可すると、DEXがウォレットの残高情報取得・取引署名の提案などを行えるようになる。 - 取引注文の処理
ユーザーが取引したい注文情報を入力すると、DEX側が事前に用意されたトークンペアの範囲内で取引内容を提案する。ユーザーが承認すると取引が実行される。 - スマートコントラクトによる取引実行
ユーザーが取引を承認すると、スマートコントラクトを用いて仮想通貨取引が自動的に実行される。取引時に名前や電話番号などの個人情報を提出する必要はない。 - ブロックチェーン上に記録
DEXで実行された取引情報が自動的にブロックチェーン上に記録され、取引が確定・完了する。取引完了後は取引内容を修正・訂正することはできない。(※エラー時の訂正は可能)
オーダーブックと自動マーケットメイカー
分散型取引所(DEX)の形式は、大きく分けて「オーダーブック(取引板)」と「自動マーケットメイカー(AMM)」の2種類に分類されます。
オーダーブック(取引板)とは、売買注文をブロックチェーンの外(オフチェーン)で行い、決済のみをブロックチェーン内(オンチェーン)で行う方式です。オフチェーンで取引することで処理が高速化し、取引処理の手数料負担を軽減できるなどのメリットがあります。
自動マーケットメイカー(AMM)とは、ユーザーから預かったトークンペアを「流動性プール」と呼ばれるトークン貯蔵庫に貯めることによって、別のユーザーの売買注文に対応できるようにする方法のことを指します。
AMMは仮想通貨取引をアルゴリズムで制御しており、流動性提供者(トークンペアを預けた人)は「LPトークン(流動性提供者トークン)」で受動的な収入を得られる仕組みになっています。
なお、DEXは分散型金融(DeFi)と呼ばれるサービスの一種であり、流動性提供で報酬が得られるリキッドステーキングなどのサービスもDeFiの一種となります。
DEXを使用するのは違法なのか?
分散型取引所(DEX)は比較的新しい種類の仮想通貨取引所サービスであり、取引所を管理・運営する企業のような特定の管理者が存在しないため、記事執筆時点では明確な規制枠組みが定められていません。
現在は『資金洗浄・テロ資金供与対策としてDEXでも本人確認が必要だ』と指摘する意見も出ているため、将来的には何かしらの規制や対処がなされる可能性はありますが、現時点ではウォレット・仮想通貨・インターネット環境があれば誰でもDEXを利用することができます。
2024年5月時点の日本の規制では「ユーザーのDEX利用」は違法ではないため、日本居住者でもDEXを通じて仮想通貨を取引することができます。(※国や地域によってはDEXの利用が認められていない場合があります)
ただし、DEXを利用する場合は仮想通貨に関するある程度の基礎知識が必要で、詐欺のDEXやトークンも多く、操作ミスなどで資産を失うリスクなどもあるため、DEXを利用する場合は内容をしっかりと理解した上で、注意しながら自己責任で行うことが重要です。
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分散型取引所(DEX)の特徴
分散型取引所(DEX)の特徴としては以下のような点が挙げられます。
- 中央集権化されていない
DEXには中央集権的な管理主体が存在せず、分散型の仕組みで管理・運営されている。DEXによっては運営方針などを決める投票機能などを備えたガバナンストークンも発行されているため、方針決定に投票で参加することも可能。 - 自分自身で仮想通貨を管理できる
DEXは自己管理型ウォレットを接続して仮想通貨を取引する方法を採用しているため、第三者企業などに資産を預けることなく、自分で資産を管理できる。 - 本人確認なしでスムーズに取引可能
DEXでは本人確認手続き(KYC)などが不要なため、インターネット環境と仮想通貨ウォレットがあれば、ウォレット接続で簡単に仮想通貨を取引できる。 - セキュリティが高い
DEXの仮想通貨取引はブロックチェーン上で行われるため、取引データが改ざんされるリスクが低く、セキュリティが高い。 - プライバシー保護
DEXのサービスはウォレット接続だけで利用可能で、氏名・電話番号・メールアドレスなどの個人情報が企業のサーバーに保存されることもないため、利用者のプライバシーが保護され、個人情報漏洩のリスクも軽減される。
分散型取引所(DEX)のメリット
分散型取引所(DEX)のメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- 口座開設が不要
メールアドレス登録などのような新規口座開設手続きを行うことなく誰でも手軽に利用できる。ウォレット接続だけで世界中からすぐに仮想通貨取引を行うことが可能。 - 様々なトークンを手軽に売買できる
DEXでは上場審査がないため、対応しているブロックチェーン上の様々なトークンを手軽に売買することが可能。CEXに上場していない新しいトークンを取引できるケースも多い。 - 新しいトークンの上場も可能
DEXによっては新しいトークンの取引ペアを作成して、DEXに独自トークンを上場させることも可能。 - ハッキングリスク等を軽減できる
自分のウォレットを自己管理した状態でトークンを売買できるため、CEXで発生するハッキングや倒産などリスクを回避することができる。 - プライバシーが保護される
氏名・メールアドレス・電話番号などの個人情報を登録する必要がないため、ユーザーのプライバシーが保護される。 - 流動性提供で報酬が得られる
流動性プールにトークンペアを預けて流動性を提供すれば、その対価として報酬を得ることができる。
分散型取引所(DEX)のデメリット
分散型取引所(DEX)のデメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- 法定通貨での売買はできない
「仮想通貨と仮想通貨の交換」はできるが「仮想通貨と法定通貨の交換」はできない。法定通貨とは日本円・米ドル・ユーロなどのような各国の通貨のこと。 - 日本語に対応していない場合が多い
DEXは日本語に対応していないケースが多いため、サービスを利用する場合には英語で利用するか、機械翻訳を利用する必要がある。 - ある程度の基礎知識が必要
ウォレットに仮想通貨を準備して、接続・承認などの作業を行う必要があるため、仮想通貨をウォレットに移動させてトランザクション(取引)を実行できるだけの基礎知識が必要となる。 - 問題発生時の対処がやや難しい
CEXのような日本語対応サポートがない場合が多いため、何らかのトラブルが発生した場合の対処法を調べるのが難しい場合がある。 - 詐欺トークンなどのリスク
DEXには上場審査がないため、詐欺トークン・偽トークンなどが上場しているケースも多い。全てが自己責任となるため、自分自身でしっかりと調査することが重要。 - 流動性が低い場合がある
DEXや取引ペアによっては流動性が低い場合があるため、注文が希望通りの価格で約定しない可能性がある。 - ガス代が高額な場合がある
イーサリアム基盤のDEXなどでは、1回の取引で数千円程度のガス代(手数料)がかかってしまう場合がある。
分散型取引所(DEX)の注意点
分散型取引所(DEX)を利用する際の注意点としては以下のようなものが挙げられます。
- 信頼できるDEXかを確認する
詐欺や偽物のDEXが頻繁に登場しているため、利用する際には「本当に信頼できるDEXなのか」をしっかりと確認することが重要。場合によってはウォレット内の資産が全て抜き取られる可能性も。 - URLをちゃんと確認する
有名DEXも模倣した偽DEXも存在するため、利用する場合は「URLが正しいか」を確認することも重要。SNS上に掲載されているリンク・知らない人から共有されたリンクなどには特に注意。 - 取引時もしっかりと確認を
流動性が低いDEXの場合は、予想外のレートで注文が約定する場合もあるため、取引する場合にはしっかりと確認することが重要。 - ガス代チェックも忘れずに
利用するネットワークによっては1回の取引で数千円程度のガス代(手数料)がかかる場合もあるため、取引承認時のガス代(Gas Fee)チェックを忘れずに。 - 誤操作に注意
DEXで完了した取引は取り消すことができないため、トークンや数量の選択ミスなどといった誤操作には十分な注意が必要。
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分散型取引所(DEX)の使い方
分散型取引所(DEX)は、仮想通貨・ウォレット・インターネットに接続できるスマホかパソコンがあれば誰でも利用することができます。
DEXによってサービスの利用方法は異なりますが、DEXを通じて仮想通貨を交換する際の基本的な手順は以下のような流れとなります。
- 仮想通貨ウォレットを用意する
- 仮想通貨取引所などで仮想通貨を購入
- 購入した仮想通貨をウォレットに送金
- ブラウザでDEXの公式サイトにアクセス
- ウォレットをDEXに接続
- 利用するネットワークを選択
- DEX内のスワップ機能で仮想通貨を交換
DEXでは「日本円を用いた仮想通貨の購入」を行うことはできないため、最初は国内取引所などで仮想通貨を購入してウォレットに送金する必要があります。
DEXを利用する場合にはガス代を支払うためのトークンも用意する必要がありますので、イーサリアム関連トークンを交換する場合は「ETH」、ソラナ関連トークンを交換する場合は「SOL」、カルダノ関連トークンを交換する場合は「ADA」といったように、目的に応じた仮想通貨を用意しましょう。
なお、イーサリアムのメインネットで取引する場合には、少額の交換を行う場合でも数千円程度のガス代がかかるため注意が必要です。Solana・CardanoなどのL1や、ShibariumなどのL2では1円未満〜数百円程度のガス代で取引することができます。
交換機能を備えたウォレットアプリも
分散型取引所(DEX)の種類
分散型取引所(DEX)の種類は非常に多く、現在は様々なブロックチェーンに対応したDEXがリリースされています。
取引できるトークンの種類やサービス内容はDEXによって異なりますので、交換したいトークンなどに応じて自分に合ったDEXを見つけましょう。
仮想通貨業界の代表的な分散型取引所(DEX)としては以下のようなものが挙げられます。
Uniswap(ユニスワップ)
Uniswap(ユニスワップ)は、イーサリアムやポリゴンをはじめとする様々なブロックチェーンに対応した代表的な分散型取引所。
2018年にローンチされた有名なDEXであり、UNIと呼ばれる独自トークンを発行している他、仮想通貨交換機能などを備えたウォレットアプリなども提供されている。
Uniswapの詳細はこちら
Jupiter Exchange(ジュピターエクスチェンジ)
Jupiter Exchange(ジュピターエクスチェンジ)は、ソラナ基盤のトークンを売買できる代表的な分散型取引所。
ジュピターエクスチェンジは、複数のDEXで出されている注文を集約してユーザーに最適な交換レートを提供してくれる「DEXアグリゲーター」と呼ばれる種類のサービスで、独自トークンである「JUP」も発行されている。
Jupiterの詳細はこちら
WingRiders(ウイングライダーズ)
WingRiders(ウイングライダーズ)は、カルダノ基盤のトークンを売買できる分散型取引所。
流動性提供による報酬獲得が可能な他、WingRiders Governance Token(WRT)というガバナンストークンも発行されているため、WRTを保有しているウォレットを接続することによってガバナンス投票に参加することも可能。
WingRidersの詳細はこちら
まとめ
分散型取引所(DEX)は、ウォレット内で管理している仮想通貨を他のトークンに交換したい場合に便利なサービスであり、CEXに上場していない新しいトークンをいち早く売買したい場合などには特に魅力な取引所となっています。
詐欺サイトや詐欺トークンなどをしっかりと見極めて、使い方をマスターすれば仮想通貨投資をより広い範囲で楽しむことができるため、興味がある方は少額から利用を開始して、知識を深めてみてはいかがでしょうか?
分散型取引所は「Ethereum・Solana・Cardano・Flare・Polygon・Shibarium」などといった様々なブロックチェーン上でリリースされていますので、自分に合ったDEXを見つけてみてください。
なお、DEXを利用している場合でも確定申告・納税の作業は必要となります。DEXの損益計算を行う場合には、DeFi取引の自動集約機能なども搭載している「クリプタクト」の利用がおすすめです。