日本のWeb3推進に向けた論点などを記載
自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチーム(自民党web3PT)は2024年4月12日に、日本のWeb3推進に向けた論点などをまとめた「web3ホワイトペーパー2024」を公開しました。
このホワイトペーパーは日本でWeb3を推進するために対処・議論すべき論点をまとめたもので、現在は既にデジタル社会推進本部が内容を了承、今後は政務調査会の審査を経て自民党の政策になると説明されています。
web3ホワイトペーパー2024では「暗号資産・ブロックチェーン・NFT・メタバース・ステーブルコイン・セキュリティトークン・税制改正・分散型自律組織(DAO)」などといった様々なテーマに関する問題と提言がまとめられており、「要点をまとめた資料」と「詳細を記載した資料」の2つが公開されています。
「ただちに対処すべき論点」の中には日本の仮想通貨コミュニティからの要望も多い「税制改正」に関する内容も含まれていて、分散型自律組織(DAO)やステーブルコインに関する環境整備を求める内容も記載されています。
「web3の推進に向けてただちに対処すべき論点」に記載されている内容には以下のようなものが含まれています(※一部提言を抜粋)。
2023年のweb3ホワイトペーパーはこちら
暗号資産関連の税制改正
「暗号資産の取引に係る損益を申告分離課税の対象とすること、暗号資産に係る損失の所得金額からの繰越控除(翌年以降3年間)を認めること、暗号資産デリバティブ取引も同様に申告分離課税の対象にすること」を検討すべき。
「暗号資産取引に関する損益は、暗号資産同士を交換したタイミングでは課税せず、保有する暗号資産を法定通貨に交換した時点でまとめて課税対象とすること」を検討すべき。
「暗号資産によって寄附が行われた場合、特定寄附金に該当しうること」を明確化すべき。個人が暗号資産を寄附した場合、租税特別措置法40条と同様、暗号資産の寄附について非課税とする措置を講じるべき。
税制改正に関する注目記事
監査機会の確保
web3ビジネス監査の事例は存在するものの、依然としてweb3企業の会計・監査の体制整備が遅れ、監査を受けられないとの不満があるため、企業会計基準委員会において会計基準の整備・ガイドラインの策定などを急ぐべき。
会計監査の機会確保に向けて日本公認会計士協会と業界が各々策定したガイドラインが実務に浸透するよう、日本公認会計士協会等の取り組みを後押しすべき。
分散型自律組織(DAO)
合同会社型DAOを設立・運用する際の実務的な課題を洗い出し、さらなる解釈の明確化や実務運用の見直しによって対応できる点に関しては、速やかに対応を行うべき。
合同会社以外の既存の法形式をDAOに適用する際の実務的な課題を洗い出し、解釈の明確化や実務運用の見直しによって対応できる点に関しては、速やかに対応を行うべき。
海外の法制度やグローバルに活動するDAOの調査・研究も踏まえて、具体的な検討に着手すべき。また、DAOの事業活動・DAOに対する寄附等に関する税務上の優遇措置の可能性を検討すべき。
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ステーブルコイン
当局・業界は、パーミッションレス型ステーブルコインの流通促進のために、ステーブルコインの早期発行・流通及び自主規制団体の設立に向けて必要な取組みを進める必要がある。
円建てステーブルコインの発行に関して、裏付け資産を国債で保有することの是非について検討することが必要である。
銀行本体での同ステーブルコインの発行に関する障害について論点整理に着手することが望まれる。
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セキュリティトークン(デジタル証券)
PTS(私設取引システム)について「認可型PTS」と「登録型PTS」という2種類のPTSが生まれることとなるため、それぞれのPTSに適したルール作りが必要。
公募型の特定受益証券発行信託のセキュリティトークンについてNISAの対象としての適切性について、業界にヒアリング等を実施することが望ましい。
匿名組合契約に基づく権利のトークン化商品に係る利益分配及び譲渡の所得について税制上の取扱いについて検討を進めることが望ましい。
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金融機関のweb3参入
現在は銀行や保険会社がweb3領域への参入を試みる場合において、法令上の付随業務への該当性や、高度化等会社の認可審査について当局への説明が必要な範囲が不明確である問題がある。
そのため、当局として事前相談を通じた効率的な申請準備等のサポートを行うとともに、認可審査を迅速化。また、透明性の向上の観
点から、今後の事例の蓄積に応じ、当局において解釈の指針の具体化とそのタイムリーな公表を継続的に行うべきである。
Non-Fungible Token(NFT)
NFTを用いたランダム型販売や、ファンタジースポーツのサービスの適法なビジネスモデルを示すガイドライン策定の検討を官民連携で進めるべきである。
映画等のコンテンツ制作に係る各種権益を付与することを目的としたNFTを含む各種トークンについても利用上の課題の認識に努め、その対処を検討することが望ましい。
二次流通市場における選手に対する収益還元に関しては、引き続き、関係団体・関係省庁・業界団体等が連携して、適切な収益還元モデルの策定等のルール整備を早急に進めることが必要。
web3事業ライセンス
現在は事業会社によるweb3ビジネスへの参入の意向が示されているが、利用者の送客等が暗号資産交換業に該当する可能性もあり、利用者の利便性の高いUI/UXの提供が難しいのが現状。
事業会社がweb3事業に本格的に進出できるようにするためには、利用者と暗号資産交換業や電子決済手段等取引業を仲介することができる業の創設等の対応を検討すべきである。
ライセンスにも関する注目記事
環境整備・暗号資産ETFなどに関する記載も
「web3のさらなる発展を見据え議論を開始・深化すべき論点」の項目には、「web3コンテンツの海外展開支援・安心安全な利用環境の整備・自治体支援」などの項目も含まれています。
環境整備の項目では「Web3に参加する際の心理的なハードルを下げるために、事業者による安心・安全な取引環境の提供や、消費者向けの情報提供や啓発活動、サイバー犯罪の取り締まりを強化すべき」とも説明されているため、将来的には日本国内で仮想通貨関連の理解を深めるための取り組みが強化される可能性もあると期待されます。
また、暗号資産ビジネスの項目では「暗号資産を投資信託(ETFを含む)の投資対象とすることの妥当性や是非を投信法の目的に照らして検討することが求められる」とも説明されているため、暗号資産ETFに関する議論も進められる可能性があると期待されます。
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相続税問題の解決を望む声も
今回公開されたWeb3ホワイトペーパー2024は、仮想通貨業界でも『多くの要望を反映した包括的なもの』として高く評価されているものの、その一方では「仮想通貨の相続税」に関する言及がなかったことを嘆く意見も出ています。
これは「仮想通貨を相続した場合に、最大55%の相続税と最大55%の住民税で”最大税率110%”になる可能性がある」というもので、仮想通貨コミュニティではそのような状況の改善を求める声が以前から多数上がっています。
日本で定められている仮想通貨関連の税率は世界的に見ても非常に高く、確定申告の複雑さなども参入障壁の一つとなっているため、現在は「一刻も早い税制改正」を求める声が非常に多く出ています。