金融庁、第2回金融審議会「暗号資産規制の金商法移行」を議論|2027年施行視野に

金融庁、第2回金融審議会で暗号資産規制の金商法移行を議論|2027年施行視野に(Japan FSA discusses moving crypto regulations under Financial Instruments and Exchange Act at 2nd council meeting, targeting 2027)
目次

第2回金融審議会、暗号資産規制の方向性を議論

金融庁は2025年9月2日、金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」の第2回会合を開催しました。

今回の会合では、暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移行することの是非が主要議題として取り上げられました。

この議題について、金融庁事務局は二重規制による複雑化や事業者負担の増加を考慮し「暗号資産は原則として金商法のみで規制するのが適当」との見解を示しています。

また、金商法上の有価証券は権利性や収益分配性を持ちますが、暗号資産は性質が異なることから、規制する際は有価証券とは別枠で位置付ける案が示されました。暗号資産の特性を踏まえた独自の枠組みが検討されています。

岩下教授、IEOのリスクと制度適用に警鐘

冒頭で日本暗号資産取引業協会と日本暗号資産ビジネス協会から市場の現状報告を受け、その後に委員討議が行われました。

討議では、京都大学の岩下直行教授が国内のIEO(※1)の多くが公募価格を大きく下回り、中には90%以上下落した例もあると指摘しています。


※1:IEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)とは、プロジェクトが自社トークンを 仮想通貨取引所を通じて販売する資金調達手法のこと

金融庁資料の画像画像:金融庁資料

そのうえで、このような商品を一般投資家向けの金商法の枠組みに取り込むことには慎重であるべきだとの懸念を示しました。

委員会、透明性確保と詐欺防止の重要性強調

複数の委員は規制強化に賛同し、十分な情報開示や詐欺的勧誘の防止など投資家保護の重要性を強調しました。

こうした意見を受け、今回の議論は暗号資産を投資商品として明確に位置付ける転換点となったと評価されています。

今後のスケジュールは、2025年内に報告書を取りまとめ、2026年の通常国会で法改正案を提出し、2027年から新制度を施行する見通しとなっています。

金融庁が示した暗号資産規制強化の方向性

暗号資産を資金決済法から金商法へ移行

金融庁が示した制度改正の方向性は、暗号資産規制の主軸を資金決済に関する法律(資金決済法)から金融商品取引法(金商法)へ移すことです。

これにより、二重規制の弊害を避け、金商法の厳格な規制と執行(エンフォースメント)によって投資家保護の強化を図る狙いがあります。

一方で暗号資産は有価証券と性質が異なるため、金商法では有価証券とは別枠で位置付ける方向です。不公正取引規制の適用も含めた新たな規制対象として設計する案が議論され、暗号資産特有の性質を踏まえた柔軟な対応が求められています。

金融庁資料の画像画像:金融庁資料

暗号資産を2類型に区分し情報開示を強化

金融庁は、暗号資産を「資金調達・事業活動型(類型①)」と「非資金調達型(類型②)」の2類型に分類する案を提示しています。

金融庁資料の画像画像:金融庁資料

類型①はプロジェクト等の資金調達手段として発行されるトークン類型②はビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)ミームコインのように資金調達を伴わないトークンと定義されています。

類型①については発行者(資金調達を行う主体)に投資家への情報提供義務を課すことが適当とされる一方、類型②は発行主体が存在しない場合が多いため、暗号資産交換業者が情報提供を担う仕組みを想定しています。

これに対してJBA(一般社団法人日本ブロックチェーン協会)は、形式的な分散化にとどまらず、オフチェーンにおける実質的な支配力も評価対象に含めるべきだと提案しました。

金融庁資料の画像画像:金融庁資料

交換業者(取引所)に第一種業規制を検討

暗号資産交換業者の規制強化も議題となりました。金融庁は、市場規模の拡大や多くの交換業者が店頭デリバティブ取引を兼営している現状を踏まえ、第一種金融商品取引業に準じた業規制を課す方針です。

金融庁資料の画像画像:金融庁資料

取引所そのものの免許制については、各社の価格形成機能が限定的であるため、証券取引所のような厳格な市場開設規制は当面不要との見解が示されました。

既存の証券取引所による暗号資産の上場に関しては、ハッキングリスクを理由に、会合では慎重な姿勢が維持されています。

暗号資産市場拡大と小口投資家保護の課題

国内の暗号資産取引口座数は延べ1,200万口座を超え、預かり資産は5兆円規模に達しています。また、個人投資家の約80%が投資額10万円未満という小口投資中心の実態も報告がなされています。

さらに、金融庁の相談窓口には月平均300件以上の相談が寄せられており、その多くはSNS上の詐欺的勧誘や出金トラブルに関する相談です。

金融庁資料の画像画像:金融庁資料

情報開示の充実や悪質な勧誘の取り締まりなど、利用者が安心して取引できる環境整備の必要性が一層明確になっています。

金商法移行賛成と慎重論が交錯

討議では、金商法への移行に賛成しながらも制度設計上の課題を指摘する意見が相次いだと伝えられています。

情報開示規制は類型を問わず徹底するべきだという点や、暗号資産の証券市場上場には慎重な検討が必要だという点が強調されました。

将来的な分散型金融(DeFi)の拡大に対応できる枠組みを整えることや、兼業規制がイノベーションを阻害しないよう配慮する必要性についても議論されました。

投資家保護と市場の健全な発展、そして技術革新の両立が重要だとの認識が共有されています。

2027年施行を見据える日本の暗号資産規制強化

今回の金融審議会は、暗号資産を投資商品として明確に位置付け、規制強化と利用者保護を重視する方向性を示す節目となりました。

法改正が実現すれば、取引所や事業者の運営体制に一層の透明性が求められる一方、投資家が安心して取引できる環境整備が進むと見込まれています。

今後は制度改正の具体化に向けた議論が進み、2027年の施行を目標に各方面の注目が集まる見込みです。こうした中で、日本の暗号資産市場の健全な発展が改めて問われています。

>>最新の仮想通貨ニュースはこちら

Source:金融庁資料
サムネイル:AIによる生成画像

  • URLをコピーしました!

Written by

BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

仮想通貨ニュース|新着

仮想通貨入門 - 基礎知識

市場分析・価格予想

目次