RWA(現実資産)とは、株式・債券・不動産・金などの現実世界に存在する資産をブロックチェーン上でトークンとして表現する技術や概念の総称です。2026年3月時点のオンチェーンRWA市場規模はステーブルコインを除いて120億ドル(約1兆8,000億円)を超えており、わずか14か月で140%増加しました。BCGとリップル社の共同レポートでは、2033年に18.9兆ドル規模へ拡大するとの予測も示されています。
同年3月23日、世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、株主向け年次書簡の中で「株式・債券・ファンドなどあらゆる資産のトークン化は、1996年のインターネット誕生に匹敵する変革をもたらす」と述べました。
同じ週には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するICEが、ブロックチェーン上で24時間365日稼働するトークン化証券プラットフォームの開発に向けた覚書を締結。さらに、モルガン・スタンレーは2026年後半にトークン化株式の取引システム稼働を計画しており、DTCC(米国証券決済機構)も米国債のトークン化サービス開始を明らかにしています。
この記事では、RWAトークン化の基本的な仕組みから資産クラス別の最新動向、伝統金融大手の参入状況、主要プロジェクト・銘柄の解説、日本における投資環境まで、わかりやすく解説していきます。
ブロックチェーンとは
RWA(現実資産トークン化)とは
RWAの定義:現実世界の資産をブロックチェーンに乗せる
RWA(現実資産)とは、現実世界に存在する有形・無形の資産の所有権や権利を、ブロックチェーン上のデジタルトークンとして表現したものです。対象資産は幅広く、不動産・株式・国債・社債・ゴールド・石油といった伝統的金融資産に加え、アート作品・カーボンクレジット・プライベートエクイティ・知的財産権まで、実際の価値を持つさまざまなものが含まれます。
「トークン化(Tokenization)」とは、これらの資産の所有権や権利をブロックチェーン上のスマートコントラクトに紐づけ、デジタルトークンとして発行・管理・移転できるようにするプロセスです。トークン1枚が資産全体を表す場合もあれば、高額資産を細かく分割して小口のトークンとして発行する「分割所有(Fractional Ownership)」の形が採られることもあります。
なお、RWAという言葉は金融業界では「Risk Weighted Asset(リスク加重資産)」を指す場合もありますが、仮想通貨・ブロックチェーン業界では主に「Real World Assets(現実世界の資産のトークン化)」の意味で使われます。本記事でも、RWAはすべて後者の意味で用います。
ステーブルコインとRWAの関係
RWAの概念を理解するうえでは、ステーブルコイン(Stable Coin)との関係を整理しておく必要があります。
テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)のような法定通貨担保型ステーブルコインは、厳密にはRWAの一形態とみなせます。米ドルや米国債といった現実資産を裏付けとして、その価値に連動するデジタルトークンを発行する仕組みが、基本的にRWAトークン化と同じ構造だからです。
ただし、RWA市場の規模を語る際には、ステーブルコインを除外して集計するケースが一般的です。ステーブルコインを含めると市場規模が2,000億ドルを超え、ほかの資産クラスの動きが見えにくくなるためです。本記事でも、特に断りがない限り、ステーブルコインを除いたオンチェーンRWA市場の数値を用います。
RWAが注目される3つの背景
RWAが2024年以降に急速に注目を集めた背景には、大きく3つの要因があります。
第1の要因は伝統的金融の非効率性への問題意識です。現在の証券決済は多くの国でT+1(取引翌日)またはT+2(取引2日後)が標準となっており、その間は資本が拘束されます。また、取引所の営業時間は平日に限られ、国境をまたぐ取引には複数の仲介機関と高い手数料が伴います。ブロックチェーン技術には、こうした非効率を改善する余地があります。
第2の要因は高金利環境下での米国債需要の高まりです。2022年以降の利上げ局面で米国債利回りが5%前後まで上昇したことで、機関投資家はDeFiプロトコル内でも安全性と利回りを兼ね備えた資産を求めるようになりました。米国債のトークン化はこの需要を受ける形で拡大し、RWA市場全体を押し上げています。
第3の要因は規制環境の整備です。米国ではトランプ政権発足後、SECによる規制明確化が進み、欧州ではMiCA(暗号資産市場規制)が2025年1月に完全施行されました。日本でも金融商品取引法の改正が進められています。規制の不透明感が薄れたことで、機関投資家がRWA市場に参入しやすい状況が整いつつあります。
RWAの仕組み:オフチェーンの資産がオンチェーンになるまで
トークン化の5ステップ
現実世界の資産がブロックチェーン上でトークンとして流通するまでには、おおむね以下の5つの段階があります。
ステップ1:資産の確認・評価
まず、トークン化する対象資産の価値を確認し、評価します。不動産であれば不動産鑑定士による評価書、国債であれば発行体の信用格付け、美術品であれば専門機関による真贋鑑定と評価が必要です。この段階の透明性が、その後のトークンの信頼性に直結します。
ステップ2:法的構造の設計
次に、トークンを発行するための法的な枠組みを設計します。資産をどのような形で保有するか(特別目的会社の設立、信託の活用など)、投資家の権利をどのように定義するか、準拠法を何にするかといった事項を決めます。この段階では、資産クラスや法域に応じて、証券法・不動産法・信託法などが複合的に関わることがあります。
ステップ3:スマートコントラクトの開発・デプロイ
ブロックチェーン上にスマートコントラクトを実装し、トークンを発行します。スマートコントラクトには、保有者の権利、配当の自動支払い、移転制限、コンプライアンスルールなどが組み込まれます。イーサリアム(ETH)は現時点で最も広く使われている基盤であり、オンチェーンRWAの60%以上がイーサリアム上に展開されています。
ステップ4:投資家への配布・流通市場での取引
発行されたトークンは、規制に適合した投資家、多くの場合は適格投資家や機関投資家に販売されます。一次市場での販売後、二次市場での取引が可能な場合には、取引所またはDEX(分散型取引所)で売買できます。もっとも、現時点では二次市場の流動性が限られるケースも多く、これがRWA市場の主要課題の一つとなっています。
ステップ5:継続的な管理・報告・償還
トークン発行後も、担保資産の価値評価の更新、配当・利息の支払い、規制当局への報告義務などを継続して履行しなければなりません。これらの業務を担うのが「管理者(アドミニストレーター)」や「移転エージェント(Transfer Agent)」と呼ばれる機関であり、Securitize(ブラックロックのBUIDLを管理)のような専門企業がこの役割を担っています。
オラクルの役割:オフチェーン情報をオンチェーンに橋渡しする
RWAトークン化において技術面で重要なのが「オラクル(Oracle)」です。ブロックチェーンはその性質上、外部の情報に直接アクセスできません。不動産の評価額や株式の最新価格といったオフチェーンのデータを、オンチェーンのスマートコントラクトに供給するには、信頼できるデータフィードが必要であり、これを担うのがオラクルです。
チェーンリンク(LINK)は、RWA分野で広く利用されているオラクルプロジェクトです。金融機関のデータ、株式価格、コモディティ価格、不動産評価など、多様な情報をブロックチェーンに接続するインフラを提供しており、主要な金融機関との連携実績もあります。
一方で、オラクルが提供するデータに誤りや遅延が生じると、スマートコントラクトが誤った情報に基づいて実行されるおそれがあります。これが「オラクルリスク」であり、RWAのリスク要因の一つとして後ほど取り上げます。
カストディと法的裏付けの重要性
RWAが他の仮想通貨と大きく異なるのは、オフチェーンに実物資産や法的権利が存在し、それを誰かが安全に保管・管理しなければならない点です。この役割を担う機関を「カストディアン(Custodian)」と呼びます。
機関投資家向けのRWA商品では、BNYメロン、ステートストリート、シティバンクといった大手信託銀行がカストディアンを務める例が増えています。ブロックチェーン技術が優れていても、担保資産を保管するカストディアンが破綻したり、不正を行ったりした場合には、投資家が資産を失う可能性があります。このカストディリスクへの対応は、制度設計の中核といえる要素です。
DeFiの仕組みと始め方
RWAの資産クラス別分類と市場規模
RWA市場全体の規模と成長速度
RWA専門のデータ集計サイトRWA.xyzによると、2026年3月時点のオンチェーンRWA市場(ステーブルコイン除く)の総額は120億ドル(約1兆8,000億円)を超えており、2024年12月末の約50億ドルから14か月余りで約140%増加しました。2024年に実施されたToken Terminalの分析では、同市場が2024年だけで50倍に拡大したとされています。
市場拡大をけん引しているのは、主に米国債・マネーマーケットファンドと、プライベートクレジットの2カテゴリーです。2025年以降は株式・ETF(上場投資信託)のトークン化も存在感を強めています。
米国債・マネーマーケットファンド(最大カテゴリー)
2026年3月時点で、オンチェーンRWA市場の最大カテゴリーはトークン化された米国債・マネーマーケットファンドで、総額108億ドル(約1兆6,200億円)以上に達しています。このカテゴリーは、2024年からわずか2年で50倍以上に拡大した計算になります。
中心となっているのはブラックロックのBUIDLで、2026年3月時点の資産規模は約20億ドル(約3,180億円)となり、トークン化ファンド市場で事実上の標準的な存在となっています。BUIDLは2024年3月にイーサリアム上でローンチされた後、アバランチ(AVAX)、アプトス(APT)など複数のネットワークへ展開しています。
フランクリン・テンプルトンのBENJI(OnChain U.S. Govt MMF)、VanEckのVBILL、インベスコのUSTBなど、大手資産運用会社も相次いでトークン化ファンドを立ち上げており、競争は一段と活発になっています。
プライベートクレジット(年率180%成長)
プライベートクレジット(非公開信用資産)のトークン化は、年率180%の成長率でオンチェーンRWAの中でも特に速く拡大しているカテゴリーの一つです。2025年のデータでは、Centrifuge(セントリフュージ)、Maple Finance(メープルファイナンス)、Goldfinch(ゴールドフィンチ)といったプロジェクトが、合計32億ドル以上のオンチェーン融資を実行しています。
プライベートクレジットは従来、年金基金・ファミリーオフィス・大学基金など一部の機関投資家しかアクセスできない資産クラスでした。しかし、トークン化によって最低投資額の引き下げや流動性の向上が進みつつあります。
コモディティ(金・銀・原油)
コモディティのトークン化は、オンチェーンRWA全体の約20%にあたる53億ドル(約8,300億円)規模に達しており、過去12か月で340%の成長を記録しています。
中でも金(ゴールド)のトークン化が最大で、テザーゴールド(XAUT)とパックスゴールド(PAXG)が市場を二分しています。2026年3月には世界金評議会(World Gold Council)とBCGが「Gold as a Service」ホワイトペーパーを公開し、分散していた発行規格の統一に向けた動きも始まりました。実物の金を保有する手間を避けながら、金価格への投資とブロックチェーン上での流動性を両立できる点が、機関投資家と個人投資家の双方から支持されています。
不動産のトークン化
不動産は、もともと最低投資額が高く、流動性も極めて低い資産クラスです。RealT(リアルT)などのプラットフォームは不動産を小口化し、数十ドル相当の少額から分割所有を可能にしています。国内ではNOT A HOTEL COIN(NAC)が、宿泊施設の所有権を分割したRWAトークンとして注目を集めています。
ただし、不動産のトークン化については、権利移転に関する各国の法整備が追いついていない面もあり、法的リスクを慎重に確認する必要があります。
株式・ETFのトークン化
2026年に入り、最も注目を集めているのが株式・ETFのトークン化です。Ondo Finance(オンド・ファイナンス)は2026年3月時点でBlackRockのIBIT、Galaxy Digital株など60銘柄以上のトークン化証券を追加し、プラットフォーム上で取引できる銘柄数を250超まで拡大しました。
NYSE(ニューヨーク証券取引所)とモルガン・スタンレーが株式トークン化市場に参入したことで、このカテゴリーは「実験段階」から「機関規模の実運用フェーズ」へ移りつつあります。
ステーブルコインとは
【2026年最新】伝統金融の大手がRWA市場に本格参入
ブラックロック:BUIDLから株主書簡まで一貫した戦略
運用資産総額11兆ドルを超える世界最大の資産運用会社ブラックロックは、RWA市場における最重要プレイヤーです。同社のRWA戦略は段階的に広がっており、その流れは次の通りです。
2024年3月:BUIDLをイーサリアムブロックチェーン上でローンチ。米国短期国債・現金・レポ取引に投資する機関投資家向けトークン化マネーマーケットファンドとして立ち上げられ、開始から40日で5億ドルを突破しました。2026年3月時点では約20億ドル(約3,180億円)規模となり、トークン化ファンドとして世界最大の地位を維持しています。
2025年9月:ブラックロックのETFトークン化構想が報じられました。ウォール街で人気のETFをデジタル化し、通常の取引時間外でも売買できる仕組みを模索していると伝えられています。
2026年2月:BUIDLがUniswapX上で取引可能に。Uniswap LabsとSecuritizeが提携し、適格投資家がDeFiプロトコルを通じてBUIDLを取引できる環境が整いました。これは、TradFi(伝統的金融)とDeFiの接続を示す出来事として注目を集めました。
2026年3月23日:ラリー・フィンクCEOが株主向け年次書簡を公開。「あらゆる株式・債券・不動産・インフラ資産のトークン化は、1996年のインターネット誕生と同様の変革をもたらす」と述べ、同社の方向性を鮮明にしました。書簡では、トークン化によって「投資家は証券口座・仮想通貨ウォレットを問わず同一の台帳上で資産を保有・取引できる」未来像にも触れています。
さらにブラックロックはSecuritize(セキュリタイズ)に出資しており、同社はSECに登録済みの移転エージェントとしてBUIDLの発行・管理プラットフォームを担っています。Securitizeは40億ドル超の運用資産(AUM)を持ち、Apollo、BNY、KKR、VanEckなどとも提携しています。
NYSE×Securitize:24時間トークン化証券プラットフォーム
2026年1月19日、NYSE(ニューヨーク証券取引所)を運営するICEは、24時間365日稼働・オンチェーン決済・少額分割投資を可能にするトークン化証券プラットフォームの構築計画を発表しました。
その後、2026年3月24日には、ICEがSecuritizeと覚書(MOU)を締結し、トークン化証券の取引・決済基盤の構築に向けた協議を始めたと発表しました。これにより、NYSE上場銘柄を含む従来型証券のトークン化と、即時決済(T+0)の実現に向けた取り組みが本格化しています。
このプラットフォームが実現すれば、投資家には次のような利点が生まれる見通しです。①NYSE上場銘柄を24時間365日いつでも取引できること。②T+2からT+0(即時)への決済短縮。③少額(フラクショナル)投資への対応。④ステーブルコインによる決済。ただし、実際のサービス開始にはSECおよびFINRAの承認が必要であり、本稼働の目標時期は2026年後半とされています。
約44兆ドル(約7,000兆円)規模の時価総額を抱える世界最大の証券取引所が参入することで、トークン化証券を巡るインフラ競争は新たな段階に入っています。
モルガン・スタンレー:トークン化株式ATS稼働計画
運用資産8兆ドルを超えるモルガン・スタンレーは、2026年後半にトークン化株式を取引するための代替取引システム(ATS)の稼働を計画しています。ATSとはSECが規制する証券取引場の一形態で、機関投資家向けのブロック取引やダークプール取引に広く利用されています。
同社がトークン化株式のATSを立ち上げれば、既存のDEX(分散型取引所)ベースのRWA取引とは異なり、SEC規制下の取引会場でトークン化証券の二次市場流動性が提供されることになります。これは、RWA市場の大きな課題である二次市場の流動性不足を和らげる可能性があり、機関投資家の参入を後押しする材料として注目されています。
DTCCとNasdaq:インフラレベルでの制度化
個別の金融機関だけでなく、金融市場インフラそのものにもトークン化の流れが広がっています。
DTCC(米国証券決済機構)は2025年12月、米国債を皮切りとした資産トークン化サービスを開始する計画を発表しました。DTCCは2024年だけで3京7,000兆円以上の決済取引を処理した世界最大の清算機関であり、この機関の本格参入は、業界全体の制度化を大きく前進させる材料とみられています。DTCCはその後、ETF・株式のトークン化も続けていく方針を示しています。
Nasdaq(ナスダック)を巡っては、SECが2026年1月28日にトークン化証券の法的位置付けを明確化する声明を公表し、ブロックチェーン上に記録されたトークン化証券も、従来の証券と同様に連邦証券法の適用対象であることが確認されました。さらに2026年3月18日には、SECがNasdaqのトークン化決済パイロットを正式承認し、Russell 1000株・主要指数ETFをトークン証券として決済できるようになっています。
JPモルガン・フランクリン・テンプルトン・インベスコの動向
RWA市場への参入は、上記以外の金融機関にも広がっています。
JPモルガン・チェースは、自社ブロックチェーン「Onyx」を通じて9,000億ドル以上のトークン化レポ取引を処理しています。主にプライベートチェーン上で運用されていますが、パブリックブロックチェーンへの展開も視野に入れています。
フランクリン・テンプルトンは、BENJI(OnChain U.S. Govt Money Fund)をイーサリアム・ステラ(XLM)ブロックチェーン上で運用しています。2026年にはインベスコと同様に、ステーキングを組み込んだETFの申請を米SECに提出しており、従来型の資産運用商品とオンチェーン運用の接点が広がっています。
インベスコは、Superstate(スーパーステート)との提携により、米国短期国債ファンド「USTB」の運用を担い、オンチェーンRWAの主要プレイヤーとして存在感を強めています。
こうした動きを総合すると、RWAトークン化は一部のブロックチェーン新興企業だけの取り組みではなく、世界の金融インフラを担う主要機関が関与する構造変化として進んでいることが分かります。
RWA関連の主要プロジェクト・銘柄解説
Ondo Finance(ONDO):トークン化証券の最大プラットフォーム
Ondo Finance(オンド・ファイナンス)は、米国債・ETF・株式などをトークン化したオンチェーン金融商品を提供するプロジェクトです。2026年3月時点で250銘柄超のトークン化証券を扱い、トークン化株式市場の約70%のシェアを持つとされています。
主要商品であるUSDYは、米国短期国債・銀行預金を担保とした利回り付きトークンで、4〜5%台の利回りを維持しており、ステーブルコインの代替として機能しています。OUSGは、米国短期国債ファンドをトークン化した機関投資家向け商品で、BUIDLと並ぶ有力なオンチェーン国債商品です。
2026年3月にはNYSEとSecuritizeの提携の文脈でも、Ondo Global Marketsがトークン化証券市場で主導的な地位を持つプラットフォームとして言及されました。ガバナンストークンであるONDOは、国内取引所では未上場の場合が多く、取得は海外取引所経由となります。
チェーンリンク(LINK):RWAを支えるオラクルインフラ
チェーンリンク(LINK)は、オラクルネットワークとしてRWA市場全体を支える重要なインフラです。株価・国債利回り・為替レート・商品価格などのオフチェーンデータをブロックチェーンに供給する機能に加え、CCIP(クロスチェーン相互運用性プロトコル)によって複数のブロックチェーン間でトークン化資産を移転できる仕組みも提供しています。
ブラックロック、SWIFT、DTCC、主要銀行など、伝統的金融機関との連携実績もあり、RWA市場が広がるほどチェーンリンクのインフラ需要も高まる構造にあります。LINKは国内の複数の仮想通貨取引所で取り扱いがあり、日本居住者にとってもアクセスしやすい銘柄です。
メイカー(MKR)・スカイ:DeFi最大のRWA担保活用者
メイカー(MKR)が管理するDeFiプロトコルは、現在はSkyとして再編されており、DeFi内で最大級のRWA活用者の一つです。米国債やその他のオンチェーンRWAを担保として、ダイ(DAI)ステーブルコインを発行する仕組みを採用しており、20億ドル以上のRWAが担保として組み込まれています。
この事例は、DeFiが単なる暗号資産の貸借・取引プラットフォームにとどまらず、現実資産を取り込んだ複合的な金融サービスへと進んでいることを示しています。
Centrifuge(CFG):プライベートクレジットのトークン化
Centrifuge(セントリフュージ)は、プライベートクレジット(中小企業向けローン、不動産担保ローン、売掛金など)をトークン化し、DeFiプロトコルに接続するプラットフォームです。2025年にはS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスと戦略的提携を締結し、インデックスデータのオンチェーン活用に向けた取り組みを始めています。MakerDAO(Sky)など主要DeFiプロトコルとの統合も進んでいます。
NOT A HOTEL COIN(NAC):日本発の不動産RWA事例
NOT A HOTEL COIN(NAC)は、日本国内で展開するリゾート施設・別荘の所有権をトークン化した国産RWAプロジェクトです。従来は数千万円から数億円規模の投資が必要だった高級別荘・宿泊施設への投資を、NACトークンによって小口化しており、日本のRWA市場における先進事例として注目されています。
RWAトークン化がもたらすメリット
資産の小口化と金融包摂
RWAトークン化の根本的な意義は、これまで一部の富裕層や機関投資家に限られていた資産クラスへの投資機会を、より広く開放できることにあります。プライベートエクイティファンドへの最低投資額は通常250万〜2,500万ドルですが、トークン化によってこの敷居を下げられる可能性があります。不動産についても、1億円規模の物件を1万円単位で分割所有することは技術的には可能です。
ブラックロックのフィンクCEOが繰り返し使う「資産運用の民主化」という言葉は、こうした金融包摂(Financial Inclusion)の実現を指しています。先進国の投資家に限らず、銀行口座を持たない新興国の人々がスマートフォン1台でグローバルな資産にアクセスできる環境を整えることが、RWAの長期的な方向性として意識されています。
決済時間の劇的な短縮(T+2→即時)
現在の証券決済では、取引成立から資金と証券の受け渡し完了までT+1(翌日)またはT+2(2営業日後)を要します。その間、売り手は資金を受け取れず、買い手は証券を受け取れない「決済リスク」が生じます。
ブロックチェーン上のトークン化資産は、スマートコントラクトによって即時決済(T+0)に対応できるため、この資金拘束期間を大きく短縮できます。JPモルガンのレポ取引処理や、NYSEが目指す24時間決済は、その具体例といえます。
24時間365日の流動性
伝統的な証券取引所は、平日の限られた時間帯しか開いていません。東京証券取引所は9〜11時30分と12時30分〜15時30分、NYSEは米国東部時間の9時30分〜16時が取引時間であり、休場日や夜間、週末には売買できません。
一方、ブロックチェーン上のトークン化資産は24時間365日取引が可能で、時間帯・国境・タイムゾーンの制約を受けにくくなります。グローバルに投資を行う参加者にとって、この違いは小さくありません。
透明性とコスト削減
ブロックチェーン上の取引は公開台帳に記録され、誰でも検証できます。これにより、資産の所有者、取引履歴、担保の状況をリアルタイムで確認しやすくなります。
伝統的な金融インフラでは、取引所・証券会社・清算機関・信託銀行など複数の仲介機関が存在し、それぞれに手数料が発生しますが、スマートコントラクトによる自動化によって仲介コストを抑えられる余地があります。
DeFiとの組み合わせによる利回り獲得
RWAの大きな優位性の一つは、安定した利回りを持つ現実資産と、DeFiの流動性・組み合わせ可能性(Composability)を組み合わせられることです。たとえば、米国債のトークン化商品(USDY・BUIDLなど)を分散型金融(DeFi)プロトコルの担保として活用し、追加の利回りを狙う戦略が機関投資家の間で広がっています。
従来、DeFiプロトコルで担保として使える資産は、主にビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨でした。しかし、RWAが組み込まれることで、安定性と利回り生産性を併せ持つ担保資産が新たに加わりつつあります。
RWAのリスクと課題
カストディリスク(最重要)
RWA投資で最も重要なリスクがカストディリスクです。オンチェーンのトークンはブロックチェーン上に存在しますが、その裏付けとなる現実資産(国債・不動産・ゴールドなど)は、誰かが物理的・法的に保管・管理しなければなりません。
このカストディアンが破綻した場合や、詐欺、不適切な運用を行った場合には、投資家はトークンを保有していても実際の資産を回収できない可能性があります。大手金融機関(BNYメロン、シティバンクなど)がカストディアンを務める商品は相対的にリスクが低いと考えられますが、新興のRWAプロジェクトでは個別の審査が欠かせません。
スマートコントラクトの脆弱性
RWAの発行・管理・決済を自動化するスマートコントラクトに、バグや設計上の欠陥があった場合、ハッキングや不正操作の被害を受けるおそれがあります。
コードの第三者監査(オーディット)の有無、その品質、実施機関の信頼性を確認することは、投資前の基本的なチェックポイントです。
規制・法的リスク
RWAは、各国の証券法・不動産法・信託法・外国為替規制など、複数の法律が交差する領域です。2026年1月にSECがトークン化証券の法的位置付けを明確化したことは前進といえますが、すべての資産クラスと法域で規制が整っているわけではありません。
特に日本居住者については、多くの海外RWAサービスが利用対象外としており、直接アクセスできる機会が限られている点に注意が必要です。
オラクルリスク
前述の通り、RWAのトークン価値は多くの場合、オラクルが提供するオフチェーンデータに依存しています。オラクルが誤ったデータを供給した場合、障害・操作・悪意ある攻撃などによって、スマートコントラクトが誤った価格で決済を実行するリスクがあります。
大手オラクルプロバイダー(チェーンリンクなど)の利用と、データ供給の分散化が対策として重要です。
流動性リスク
RWA市場の二次市場(セカンダリーマーケット)は、まだ成熟しているとはいえず、保有トークンを売却したい局面で十分な流動性がない場合があります。
特に、プライベートクレジット・不動産・非上場株のトークンは流動性がかなり限られます。投資期間と流動性のバランスを事前に確認しておくことが重要です。
日本でのRWA動向と投資環境
日本のセキュリティトークン(ST)規制の現状
日本では、金融商品取引法においてセキュリティトークン(ST)がすでに規制対象として明確に位置付けられており、金融庁に登録した証券会社がST(デジタル証券)の発行・販売を行う法的枠組みが整っています。不動産STや社債STの分野では実用化も進んでおり、国際的に見ても制度整備が進んだ市場の一つです。
一方で、暗号資産取引所上場を前提としたオンチェーンRWA(Ondo Finance・BUIDLなど)については、多くが「日本居住者を対象外」とする利用規約を定めており、個人投資家が直接アクセスできるケースは依然として限られています。
金商法改正・2028年ETF解禁とRWAの関係
2026年通常国会への提出が目指されている金融商品取引法(金商法)改正は、日本におけるRWA市場拡大の大きな転換点になる可能性があります。
金融庁は2026年2月3日、暗号資産を「決済手段」から「金融商品」として位置付ける金商法改正案の答申を正式に承認しました。申告分離課税(税率20%)の導入とあわせて実現すれば、機関投資家・個人投資家の双方にとって、RWA関連商品への投資環境は大きく改善する見通しです。
NOT A HOTEL COINなど国内RWA事例
NOT A HOTEL COIN(NAC)は、日本国内でも実用化が進む不動産RWAの代表例です。リゾート施設・別荘施設の所有権をトークン化することで、従来は高額の初期投資が必要だった不動産投資を小口化しています。
国内の仮想通貨取引所にも上場しており、日本居住者がアクセスできる数少ないRWA関連トークンとなっています。
日本居住者がRWA関連に投資する方法
2026年3月時点で、日本居住者がRWAに関連した投資を行う主な方法は以下の通りです。
①チェーンリンク(LINK)・メイカー(MKR)などRWAインフラ銘柄への投資:国内の仮想通貨取引所でLINKやMKRを購入することで、RWA市場の成長に間接的に関わることができます。
②国内ST(セキュリティトークン)商品:国内の証券会社が販売する不動産ST・社債STは金融商品取引法の規制下にあり、日本居住者が正規に投資できるRWA商品です。SBI証券・大和証券などが取り扱っています。
③NOT A HOTEL COIN(NAC)など国内上場RWA銘柄:前述の通り、一部の国内RWAトークンが国内取引所に上場しています。
④Ondo Finance(ONDO)トークン:一部の海外取引所や分散型取引所でONDOトークンが取引可能ですが、日本居住者の利用可否については、各サービスの利用規約を事前に確認する必要があります。RWA関連の仮想通貨に投資する際は、仮想通貨の始め方の基礎知識を押さえたうえで、リスクを理解して判断することが重要です。
RWA市場の将来性と2030年予測
主要機関の市場規模予測
RWA市場の将来性について、主要機関が公表している予測を整理します。
BCG×Ripple共同レポート(2025年):
ステーブルコインと預金トークンを含む広義の定義で、2033年に18.9兆ドル規模へ達すると予測しています。この数字は現時点(120億ドル)の約1,500倍に相当します。
マッキンゼー・アンド・カンパニー(2025年):
狭義の定義(主要資産クラスのトークン化)で、2030年のベースケースを2兆ドル、悲観シナリオを1兆ドル、楽観シナリオを4兆ドルと予測しています。
BIS(国際決済銀行):
2025年に発表したレポートでは、「2034年までに世界GDP(国内総生産)の10%がトークン化される可能性がある」との見通しが示されました。世界GDPは現在約110兆ドルであり、その10%は約11兆ドルに相当します。
いずれの予測も、現在の市場規模から見れば大幅な拡大を前提としています。ただ、伝統的な株式・債券・不動産市場の規模が数百兆ドルに及ぶことを考えると、RWAが将来的に到達し得る市場規模は、これらの予測をさらに上回る可能性もあります。
拡大シナリオ:ステーブルコイン→国債→株式・ETFへ
RWA市場の拡大は段階的に進んでおり、おおむね次のような構造が見られます。
第1フェーズ(完了):ステーブルコインの普及
USDTやUSDCが示したように、まず「安定したデジタル決済手段」への需要が満たされました。現在のステーブルコイン市場規模は2,000億ドルを超えています。
第2フェーズ(進行中):国債・マネーマーケットファンドのオンチェーン化
ステーブルコインが流通するオンチェーン市場で、より高い利回りを求める資金需要に応える形で、米国債のトークン化が急速に拡大しました。BUIDLや各社MMFがこのフェーズを主導しています。
第3フェーズ(始動):株式・ETF・プライベートアセットのオンチェーン化
2026年以降、NYSEやモルガン・スタンレーの参入、Ondo Financeの拡張などを受けて、株式・ETFのトークン化は本格的な実運用フェーズに入りつつあります。今後はプライベートエクイティ・不動産・インフラ資産にも広がる見通しです。
AI×RWA:次世代の自律型決済エージェント
人工知能(AI)とRWAの組み合わせは、次の成長テーマとして注目されています。AIエージェントが自律的に資産を管理・取引・担保活用する場面では、トークン化された資産が「AIが扱える経済的単位」として機能する可能性があります。
コインベースが2026年の注目分野として挙げる「DAT2.0(分散型自律トレーダー2.0)」や「AIエージェント決済」の概念では、複数のAIエージェントがオンチェーンのRWA資産を自律的に運用・担保活用・決済する世界観が描かれています。
現時点ではまだ実験段階にありますが、AIとRWAの融合は2027年以降の重要テーマになる可能性があり、関連プロジェクトの動向を追う必要があります。
RWAトークン化に関するよくある質問(FAQ)
RWAとNFTの違いは何ですか?
両者はいずれもブロックチェーン上のトークンですが、目的と性質が異なります。RWAは現実世界の資産(国債・不動産・株式など)の所有権や権利をデジタル化したものであり、裏付けとなる現実資産の価値を反映します。
一方、NFTはデジタルコンテンツの唯一性や所有権を証明するトークンであり、デジタルアート・ゲームアイテム・コレクターズアイテムなどが主な対象です。ただし、不動産やアート作品のような有形資産をNFT形式でトークン化する場合には、両者の境界が重なる部分もあります。
日本居住者はRWAに投資できますか?
2026年3月時点では、海外の主要RWAサービス(Ondo Finance・BUIDLなど)の多くが「日本居住者を対象外」としており、直接アクセスできる機会は限られています。日本国内では、金融庁登録済みの証券会社が取り扱うセキュリティトークン(不動産ST・社債STなど)が正規の投資手段です。
また、国内取引所に上場しているチェーンリンク(LINK)やNOT A HOTEL COIN(NAC)など、間接的にRWA市場の成長に関わる銘柄への投資も選択肢となります。金商法改正(2026年通常国会予定)と2028年の国内ETF解禁が実現すれば、投資環境は大きく変わる可能性があります。
RWAの市場規模はどのくらいですか?
2026年3月時点のオンチェーンRWA市場(ステーブルコイン除く)は、RWA.xyzのデータで120億ドル(約1兆8,000億円)超となっています。2024年12月末の約50億ドルから14か月で約140%増加しました。BCGとリップルの共同レポートは2033年に18.9兆ドル、マッキンゼーは2030年に最大4兆ドルへの拡大を予測しています。
ブラックロックのBUIDLとは何ですか?
BUIDLは「BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund(ブラックロック米ドル機関投資家向けデジタル流動性ファンド)」の略称で、2024年3月にイーサリアムブロックチェーン上でローンチされた機関投資家向けトークン化マネーマーケットファンドです。米国短期国債・現金・レポ取引に投資し、利回りをトークン保有者に日次配分します。
2026年3月時点で約20億ドル規模となり、世界最大のトークン化ファンドとして位置付けられています。現時点では適格投資家のみが購入可能で、最低投資額も設定されています。
RWAトークンはどこで購入できますか?
日本居住者の場合、国内取引所で取引可能なRWA関連銘柄(LINK・MKR・NACなど)であれば、国内の主要取引所から購入できます。
一方、Ondo Finance(ONDO)や海外のトークン化ファンドについては、利用規約で日本居住者が対象外とされている場合が多く、投資前に確認が必要です。また、不動産ST・社債STなど国内のセキュリティトークン商品は、金融庁登録済みの証券会社を通じて投資できます。
RWAのリスクは何ですか?
主なリスクは以下の5点です。①カストディリスク(担保資産を管理する機関が破綻・不正を行うリスク)、②スマートコントラクトの脆弱性(コードのバグによるハッキングリスク)、③規制・法的リスク(各国の規制変更や法解釈の変化)、④オラクルリスク(外部データを供給するオラクルの障害・操作)、⑤流動性リスク(二次市場での売却困難)。特にカストディリスクはRWA固有の重要リスクであり、カストディアンの信頼性と法的保護の枠組みを事前に確認することが欠かせません。
まとめ
RWA(現実資産トークン化)は、2026年時点で仮想通貨業界と伝統的金融の接点が最も具体的に表れている領域です。世界最大の資産運用会社ブラックロックのCEOが「1996年のインターネットに匹敵する変革」と位置付け、NYSE・モルガン・スタンレー・DTCC・Nasdaqといった金融市場の中核を担う機関も相次いで参入を表明しています。
市場規模は、ステーブルコインを除いて2026年3月時点で120億ドルを突破しました。BCGとリップルの予測では、2033年には18.9兆ドルまで拡大する可能性があります。米国債のオンチェーン化(108億ドル超)を起点に、株式・ETF・プライベートクレジット・コモディティへと対象資産は広がり続けています。
日本での直接投資環境は、2026年3月時点ではまだ限定的です。ただ、金商法改正と2028年の国内ETF解禁が実現すれば、日本居住者にとっても本格的なアクセスが開かれる可能性があります。チェーンリンクやNOT A HOTEL COIN(NAC)など国内取引所で購入できる関連銘柄、そして国内証券会社経由のセキュリティトークン商品を通じて、この市場の動きを追う意義は大きいといえます。
RWAは、単なる技術トレンドではなく、資産運用の裾野拡大、金融インフラの効率化、DeFiへの実物資産の組み込みといった複数の変化を伴う長期テーマです。投資判断にあたっては、カストディリスク・規制リスク・流動性リスクなど固有の論点を十分に理解したうえで、余裕資金の範囲内で検討されてください。
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サムネイル:AIによる生成画像































