Google、13,000倍速の量子計算を実証
米テック大手のGoogleは2025年10月22日、独自開発した105量子ビットの「Willow(ウィロー)」プロセッサを用い、分子の構造を現在最速のスーパーコンピュータより13,000倍高速に解析することに成功したと発表しました。
同社はこの実験結果を「史上初の検証可能な量子優位性の達成」と位置付けており、成果は学術誌Natureにも掲載されています。
一方で、この技術的偉業により、現行の暗号技術が直面するリスクにも注目が集まっています。
ブロックチェーンを含む多くのシステムは量子計算に脆弱なアルゴリズムを使用しているため、今回の成果は仮想通貨ビットコイン(BTC)の安全性にとっても大きな懸念材料になるとされています。
こうした状況を受け、分散型サイバーセキュリティ企業Naoris Protocol創業者のデビッド・カルバリョ氏は「ビットコイン誕生以来最大の脅威だ」と警告しました。
BTC「2030年までにリスクに直面」
Googleの量子優位性はビットコインの脅威となるか
数年分の計算を2時間で処理した量子性能
Googleが今回実証した「Quantum Echoes(量子エコー)」アルゴリズムでは、超伝導量子チップ「Willow」を用いて古典計算では数年かかる処理を約2時間で完了させました。
その結果は他の同等の量子コンピュータでも再現可能で、初の「検証可能な量子優位性」を示したものとされています。これは、理論上の優位性を超え、実証的に確認された点で大きな進展です。
ただし、この成果はあくまで研究段階の実験であり、現時点で暗号技術を無力化するほどの性能には達していないと結論付けられています。
一方で、ビットコインで使われる楕円曲線デジタル署名(ECDSA)などの暗号方式は、将来的に十分強力な量子コンピュータによって解読される可能性があるとも指摘されています。
ビットコイン暗号に迫る量子時代の現実
現時点の量子コンピュータの性能は限られており、ビットコインの暗号を破る水準には達していませんが、技術の進歩によっては2030年頃に現在の暗号が無効化され得るとの予測もあります。
技術系YouTuberのメンタル・アウトロー氏は「現在の量子コンピュータは最大でも22ビット長の鍵しか解読できず、2048ビットの鍵を破るにはほど遠い」と指摘しています。
こうした議論を背景に、米国では量子計算時代に備える動きも始まっており、SEC(米証券取引委員会)は9月に、2035年までに量子耐性を備えた暗号標準を策定するロードマップ案を受理しました。
量子チップ「Willow」が話題に
量子脅威に備えるビットコインの未来
記事執筆時点で、ビットコインネットワークのセキュリティは従来型計算機の観点で過去最高水準にあり、ネットワーク全体のハッシュレート(計算処理能力)は毎秒1.1ゼタハッシュ(1.1×10^21ハッシュ)を超えて史上最高を更新しました。
しかし、Googleの量子計算ブレイクスルーが示す通り、将来的な量子コンピュータの脅威に備える必要性は一層高まっています。
仮想通貨業界ではポスト量子時代を見据えた研究開発や標準化が進んでおり、専門家は「脅威が現実化する前に量子耐性を備えたシステムの構築を始める必要がある」と強調しています。
量子技術の発展に歩調を合わせ、ビットコインの暗号基盤をアップグレードしていく取り組みが今後一層重要になるとみられています。
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Source:Google発表
サムネイル:AIによる生成画像



























