LSEG、新プラットフォーム「DMI」で資産トークン化
ロンドン証券取引所グループ(LSEG)は2025年9月15日、ブロックチェーン技術を基盤とする「Digital Markets Infrastructure(DMI)」プラットフォームを立ち上げ、初の私募ファンド取引を実施したと発表しました。
同社の発表によると、この新プラットフォームはクラウド「Microsoft Azure(アジュール)」上に構築され、発行からトークン化、流通、決済、資産管理に至るまで、資産ライフサイクル全体を対象とする設計になっています。
初取引では、投資運用会社のMembersCap(メンバーズキャップ)と英仮想通貨取引所のArchax(アーチャックス)が最初の利用者となり、MembersCapの「MCM Fund 1」に対する一次募集が実行されました。
また、米国のEJF Capital(EJFキャピタル)がアーリーアダプターとして参加しており、同社の複数ファンドが近日中に利用可能になる予定です。
ナスダック、トークン化証券取引を申請
ロンドン証券取引所(LSEG)のブロックチェーン活用戦略
ブロックチェーン導入で非公開市場を効率化
LSEGによると、このDMIプラットフォームはMicrosoft(マイクロソフト)との協業で開発されており、プライベート市場からパブリック市場まで資金調達のあらゆる段階を支援するという同社の戦略目標に沿ったものです。
この戦略の一環として、まず私募ファンド分野から導入され、今後は他の資産クラスにも拡大する計画であり、DMIはオープンかつ相互運用可能な方針を採用して、資産のトークン化を前提とした新しい投資スキームを提供します。
さらに、グローバルな投資家や発行体を結集させることで、LSEGは資金調達や流動性の向上を目指しています。
加えて、ブロックチェーン活用により非公開市場の業務効率化やアクセス改善を図り、これまでは接点が限られていた新たな投資機会を提供できる点も特徴とされています。
実際、すでに米運用会社EJF Capital(EJFキャピタル)が早期参加者(アーリーアダプター)としてプラットフォームに加わっており、同社の複数ファンドも近日中に利用可能になる予定です。
相互運用可能なDLTインフラの重要性
LSEGでデジタル市場インフラ部門を率いるダルコ・ハイドゥコビッチ氏は「DMIプラットフォームとその最初の取引は、エンドツーエンドで相互運用可能かつ規制された金融市場向けDLT(分散型台帳技術)インフラへの強い需要を示す重要な一歩だ」と述べており、プライベート市場へのアクセス拡大やワークフロー効率化などに向けた取り組みを今後も継続すると強調しています。
また同氏は、デジタル資産と従来型資産の双方に対応することで市場全体の連携強化を図り、LSEGがマーケットの「コンビーナー(仲介役)」としてデジタル資産分野に大規模な変革をもたらすことができるとの自信も示しました。
Microsoft(マイクロソフト)のグローバル金融部門担当バイスプレジデントであるビル・ボーデン氏も、この協業について「戦略的パートナーシップがもたらす革新の好例であり、顧客に新たな機会を提供し金融の未来を切り開くものだ」とコメントしています。
ブラックロック、ETFトークン化を検討
RWA領域における証券トークン化の世界的拡大
LSEGの試みは、現実資産(RWA)のブロックチェーン上での証券トークン化が世界的に進む流れの中に位置付けられています。
ナスダックが証券トークン化市場へ参入
米国では主要取引所Nasdaq(ナスダック)が9月8日付で、株式やETFをトークン化して既存市場と同様に売買できるようにする規則改正をSEC(米証券取引委員会)に申請したと発表しました。
この申請が承認されれば、ブロックチェーン技術を伝統的な証券市場インフラに本格導入する初の事例となる見通しです。
ブラックロックが描くETFトークン化の可能性
また、世界最大の資産運用会社BlackRock(ブラックロック)は9月11日、株式など現実資産に連動するETFのトークン化を検討していることが明らかになりました。
この仕組みが実現すれば、ETFが通常の取引時間外でも売買可能となり、米国市場の投資商品への国際的なアクセス拡大や仮想通貨ネットワーク上での新たな担保活用につながると報じられています。
日本市場で進むSBIの株式トークン取引基盤構築
これらの事例から、伝統的な金融市場とブロックチェーン技術の融合が2025年現在加速している状況が示されています。
日本においてもSBIホールディングスがブロックチェーン企業「スターテイル」と合弁会社を設立し、常時取引や即時決済を可能にする株式トークン取引基盤の開発に乗り出す計画を発表しており、証券のデジタル化に向けた動きが世界規模で広がりを見せています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=円)
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Source:LSEG公式発表
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用





























