600億元規模の中国再エネ資産をトークン化
2025年9月9日、中国フィンテック大手アントグループ傘下の「アントデジタル・テクノロジーズ」が、総額約600億元(約1.2兆円)にのぼる中国国内エネルギー資産をオンチェーン化したことが明らかになりました。
米ブルームバーグは事情に詳しい関係者の話として、中国各地の風力タービンや太陽光パネルなど約1,500万台の再生可能エネルギー設備から取得した発電量や稼働状況データをAntChain(アントチェーン)に記録し、そのデータを基にエネルギー資産をトークン化して資金調達に活用していると伝えています。
こうしたエネルギー資産のトークン化は、資産の流動性や資金調達効率を高めるだけでなく、従来型エネルギー産業とブロックチェーン技術の融合を促す重要なモデルケースと評価されています。
中国、仮想通貨取引の監視を強化
アントデジタルが主導する中国エネルギー資産のトークン化
1,500万台の発電設備をオンチェーンで追跡
ブルームバーグによれば、アントデジタルは自社ブロックチェーン基盤「AntChain(アントチェーン)」を用いて国内のエネルギー設備をデジタル資産化し、関連データはリアルタイムで追跡しています。
同社は中国各地に分散する約1,500万台の風力発電機や太陽光パネルから発電量や故障予兆などのデータをAntChain上に記録し、設備の稼働状況をオンチェーンで可視化する取り組みを進めているとのことです。
さらに、RWA(現実資産)を裏付けとするトークンを発行し、その販売を通じて設備運営企業に資金を供給しています。クリーンエネルギー事業3件を対象とした資金調達額は総額3億元(約60億円)に達したとされています。
同社は今後、発行済みトークンのオフショア分散型取引所(DEX)への上場を検討しており、さらなる資本流入を見込んでいると伝えられています。
トークン化に必要な「担保資産の信頼性」と透明性
デューク大学のキャンベル・R・ハーヴェイ金融学教授はこのプロジェクトについて「トークン化には信頼の問題が伴う。投資家は担保資産の実在を確認できる必要がある。一度トークン化されれば、低コストかつ迅速な取引が実現する」と指摘しました。
アントグループのデジタル技術事業は、ブロックチェーンやプライバシー計算、IoTなど先端技術を活用した企業向けソリューションの提供を主力としています。
一方で、報道によると資産トークン化を含むブロックチェーン事業の収益比率は現時点では小規模にとどまり、収益の大半はプライバシー保護やセキュリティ関連サービスから得ているとされています。
アントデジタルが進める外部ブロックチェーン連携
アントデジタルは事業拡大を進めており、元アントグループ社員がCEOを務めるパブリックブロックチェーン「Pharos Network」への出資に加え、香港の金融サービス企業「雲鋒金融グループ」との戦略提携を締結しました。
発表によると、両社はPharosプラットフォーム上でRWAのトークン化および関連するWeb3分野への展開を進め、ブロックチェーンと既存の金融サービスの統合を推進するとしています。
これらの動きから、アントデジタルは自社基盤に加えて外部ブロックチェーン技術も取り込み、RWAのトークン化を起点とする新たな金融モデルの構築に本格的に取り組む姿勢を示しています。
「RWA(現実資産)のトークン化」とは
RWA市場拡大と規制強化が資本調達に与える影響
アントデジタルによるエネルギー資産のオンチェーン化は、RWA活用を通じてブロックチェーンの導入が従来型産業へ広がる事例と位置づけられています。
同様の取り組みはエネルギーや不動産など各分野で拡大しており、国際的にも資本調達や資産管理の手法に変化をもたらしています。
今回の動きはRWA市場の潮流を示す事例であり、各国の規制環境や金融市場の対応が今後の展開を左右するとみられています。
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Source:ブルームバーグ報道
サムネイル:AIによる生成画像



























