銀行・保険会社の暗号資産販売に対し規制網を強化
2025年10月22日、金融庁が銀行や保険会社による暗号資産(仮想通貨)の販売を禁止する方針を固めたことが明らかになりました。
朝日新聞によると、金融庁は暗号資産の価格変動が大きく、顧客保護を徹底することが困難であると判断したといいます。
こうした判断を踏まえ、金融庁は銀行や保険会社本体による暗号資産の取り扱いを引き続き禁じる一方、グループ傘下の子会社による売買や仲介業務は認める方針としています。
また、暗号資産が投資対象として人気を集めていることを受け、金融庁は金融商品としての位置付けを見直す規制の検討を進め、2026年の通常国会で関連法案を提出することを目指しています。
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暗号資産規制で銀行・保険会社に新ルール
資金決済法から金融商品取引法への移行案
金融庁は暗号資産に関する制度整備を急いでおり、10月22日に、有識者会議である金融審議会の暗号資産ワーキンググループ(WG)が第4回会合を開催しました。
同WGでは暗号資産の法的規制を現行の資金決済法から金融商品取引法へ移行させる方向性が示され、投資者保護と健全な取引環境の整備を最優先に検討が進められています。
実際、2020年改定の監督指針では価格変動リスクなどへの懸念から銀行本体の暗号資産保有が事実上禁止されてきました。
金融庁関係者は「銀行による暗号資産投資を解禁しても、顧客への暗号資産販売については依然として慎重な姿勢を崩していない」と述べています。
暗号資産販売を子会社に限定して容認へ
今回報じられた方針により、銀行や保険会社は引き続き暗号資産の発行・販売が禁止される方向ですが、グループ企業(子会社)を通じて暗号資産ビジネスに参入できる道が開かれます。
金融庁は「銀行本体の商品であることを理由に暗号資産のリスクを十分に理解せずに取引する顧客が生じる恐れがある」と指摘しており、まずは暗号資産を投資商品として適切に規制することを優先すべきだとしています。
そのため、金融庁はまず暗号資産交換業等を子会社に限定したうえで、規制整備による投資者保護の強化を図る考えです。
銀行本体の自己資産による暗号資産の保有は容認方針
一方で金融庁は、銀行本体による暗号資産の自己勘定投資については条件付きで容認する方針も示しました。
例えば、自己資産としてビットコイン(BTC)などを保有することは、一定のリスク管理体制を前提に解禁される見通しで、国際的な銀行規制(バーゼル規制)に基づく高いリスク比率の適用など、十分な自己資本の確保を条件としています。
実施については、段階的に進められる見込みで、金融庁は暗号資産の保有が銀行の経営に悪影響を及ぼし預金者に損失が波及しないよう、財務健全性を担保する仕組みもあわせて整備する方針です。
業界の実情を踏まえた規制調整へ
今回の規制緩和策の背景には、暗号資産市場の拡大を受けた銀行界からの要望もあります。
読売新聞も今月19日、国内外で暗号資産取引が拡大する中で金融庁が銀行の暗号資産取得・保有解禁に向けた議論を開始したと報じました。
実際、日本では大手証券会社系を中心に暗号資産事業への参入が進んでおり、野村ホールディングスは法人向け暗号資産取引事業への参入計画を明らかにしています。
また、大和証券グループ本社では、同社の支店窓口で顧客がビットコインやイーサリアム(ETH)を担保に円を借りられる融資サービスを開始するなど、既存の金融機関も暗号資産関連サービスに動きを見せています。
金融庁は、銀行グループの子会社がこうした交換業に参入できるよう規制を見直すことで、SBIホールディングス傘下など既存の証券系暗号資産業者との競争環境を整備し、市場の活性化につなげたい考えを示しています。
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金融庁、暗号資産の法規制強化を加速
暗号資産のインサイダー取引禁止へ
金融庁は暗号資産規制強化の対象を拡大しており、インサイダー取引禁止などの具体的措置も検討しています。
今回のワーキンググループ会合では、暗号資産のインサイダー取引を株式と同様に禁止し、違反者に対して5年以下の懲役や500万円以下の罰金を科すといった具体的な規制案も提示されました。
これに関連して、証券取引等監視委員会(SESC)も暗号資産のインサイダー取引を禁止し、罰則を科す新ルールの導入を計画しています。
DEXにも本人確認義務化の方針
さらに、中央管理者が存在しないことからこれまで規制の対象外とされてきた分散型取引所(DEX)についても、金融庁は国内利用者の実態を踏まえ、一定の規制を導入する方針を示しました。
具体的には、DEXに接続するアプリなどのユーザー画面(UI)の提供者に対し、リスク説明義務や本人確認(KYC)義務を課す方向で検討が進められています。
無登録業者への罰則強化案を提示
加えて、無登録で暗号資産取引サービスを提供する業者への対応強化も議論され、金融庁は現行の3年以下の懲役の上限を5年以下に引き上げる案を提示しました。
緊急時に証券監視委による差し止めを可能とする仕組みや、違法業者への行政処分(金銭的制裁)となる課徴金制度の導入も検討されています。
暗号資産制度改革で健全な市場を形成
金融庁は暗号資産を巡る制度整備を総合的に進めており、投資者保護と市場の健全性確保に向けて規制網を拡充する姿勢を鮮明にしています。
暗号資産を金融商品として本格的に位置付けることで、適切なルールの下で健全な市場発展とイノベーションの両立を図る狙いがあるとみられます。
今後予定される法改正の行方にも、国内外の関係者から高い関心が寄せられています。
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