UAE居住者向け不動産トークン化が始動
ドバイ土地局(DLD)は2025年5月25日、中東地域で初めてとなる、ブロックチェーン技術を活用した不動産の投資プラットフォーム「Prypco Mint(プリプコ・ミント)」の開始を発表しました。
DLDが実施するこのパイロットプログラムでは、デジタルプラットフォーム上でドバイの不動産に少額から投資できる仕組みとなっています。
地元メディアの報道によると、投資は2,000ディルハム(約7万8,000円)から可能で、現在は有効なエミレーツID(UAE国民ID)を持つUAE居住者のみ利用できると伝えられています。
なお、試験運用中の取引はアラブ首長国連邦ディルハム(AED)建てで行われ、仮想通貨(暗号資産)での支払いには対応していません。
「RWA(現実資産)のトークン化」とは?
ドバイの不動産トークン化支援体制
この不動産トークン化プロジェクトは、ドバイ土地局が地元企業Prypco社と技術パートナーのCtrl Alt社と協力して実施することが明らかにされています。
また、ドバイ仮想資産規制局(VARA)やUAE中央銀行、ドバイ未来財団(DFF)からも支援を受けており、銀行パートナーはZandデジタル銀行で、プロジェクトは不動産規制当局DLDとデジタル資産規制当局VARAが共同で管理しています。
トークン化技術にはRipple社の分散型台帳「XRPレジャー(XRPL)」が活用され、不動産の権利証書をデジタルトークン化する仕組みであることも伝えられています。
投資家保護とグローバル展開計画
投資家の資金は「クライアント資金口座(CMA)」に分別保管され、この口座はDLD、VARA、およびUAE中央銀行が共同で管理することも報じられています。
資金は購入手続きが完了するまでトークン発行企業には移転されない仕組みになっており、投資家の資金の安全性が確保されています。投資家はトークン化された不動産持分を通じ、賃貸収入や物件価値上昇による利益を受け取ることができます。
さらに、DLDの監督下で法的に登録された所有権持分として認められ、投資家の権利が保護されています。
ドバイ土地局は、2033年までにトークン化資産が不動産市場の最大7%(約600億ディルハム/約2.5兆円)に達すると予測しています。
当面はUAE居住者限定ですが、将来的にはグローバル展開や他プラットフォームとの連携も計画されています。
このプロジェクトはドバイ政府の「不動産2033戦略」の一環であり、技術パートナーのCtrl Alt社は既に約3億ドル(約428億円)相当の資産をトークン化した実績があります。
同社はVARAから発行者およびブローカーのライセンスを取得済みであると伝えられています。
17階建ての「クリプトタワー」建設へ
世界で加速するRWAトークン化の取り組み
ドバイDAMACグループ、10億ドル規模の不動産トークン化へ
現実資産(RWA)のトークン化はドバイに限らず世界的な潮流となっており、近年さまざまな取り組みが加速しています。
2025年1月にはドバイの大手不動産開発会社DAMACグループが、ブロックチェーン基盤「MANTRA(マントラ)」を通じて中東地域で少なくとも10億ドル(約1,426億円)規模の資産をトークン化する契約を結びました。
米クラーケン、株式トークン化サービス開始
また、米国の大手仮想通貨取引所クラーケン(Kraken)は5月24日、フィンテック企業Backed Finance社との提携を発表しました。新サービス「xStocks(エックスストックス)」ではソラナ(SOL)ブロックチェーンを活用してアップルやテスラなど50銘柄以上の米国株式をトークン化すると報じられています。
xStocksでは実物株式を裏付け資産とするデジタルトークンが発行され、米国を除く世界各地域の投資家が24時間365日それらを取引できる環境を目指しています。
伝統金融業界もRWAトークン化に注目
従来の金融業界も資産のトークン化に注目しており、世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは4月1日に「市場の近代化には分散型金融(DeFi)と現実資産のトークン化(RWA)が不可欠」との見解を示しています。
さらにRipple社のレポートでは、現実資産(RWA)のトークン化市場が2025年の約0.6兆ドル(約88.6兆円)から、2033年には約18.9兆ドル(約2,792兆円)規模へ拡大すると予測されています。
このような世界各国・各業界の動向や予測からも、RWAトークン化市場は今後も大きく拡大していくものと見られています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=142.59円)
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Source:地元メディア「Gulf News」報道
サムネイル:AIによる生成画像



























