
仮想通貨市場の近代化にはDeFiと資産のトークン化が不可欠|ブラックロックCEO
DeFiとRWAが市場効率を向上
米資産運用大手ブラックロックCEOであるラリー・フィンク氏は、2025年3月31日に公開した投資家向け年次書簡の中で「市場の近代化には分散型金融(DeFi)と現実資産のトークン化(RWA)が不可欠」との見解を示しました。
同氏は年次書簡の中で、DeFiについて「非常に優れたイノベーションで、市場をより迅速で低コストかつ透明性の高いものにする」と評価しています。
また、国際銀行間通信協会(SWIFT)など既存インフラの非効率さにも触れ、現行の金融ネットワークは「電子メールを郵便局経由で送っているようなもの」だと指摘しています。
一方、フィンク氏は現実資産トークン化(RWA)について「あらゆる株式や債券などすべての資産をトークン化できれば、投資に革命をもたらす」と述べ、その潜在的な可能性を強調しました。
ブロックチェーンの可能性
米ドルへの信頼低下とビットコインの台頭
フィンク氏がDeFiとRWAに注目する背景には、米ドルの基軸通貨としての地位が揺らぎつつある現状への危機感もあります。
近年、一部の新興国は外貨準備において米ドル以外の通貨や金の保有比率を高める動きを見せています。国際通貨基金(IMF)のデータでも、各国中央銀行の外貨準備に占めるドルの割合は、この20年で緩やかに低下傾向にあり、直近では約58%前後まで低下しています。
フィンク氏は、米国の巨額債務と財政赤字が今後も拡大を続ける場合、投資家が米ドルよりもビットコイン(BTC)を安全な資産と見なすようになると指摘しています。これにより米国の経済的優位性が損なわれる可能性があると警鐘を鳴らしました。
また、同氏は「もし米国が債務管理を怠れば、世界の準備通貨としてのドルの地位を失い、ビットコインのようなデジタル資産が取って代わる可能性がある」との見解も示しています。
ドルは崩壊へ向かう?
注目されるDeFi・RWA
こうした背景のもと、RWA(現実資産のトークン化)が2024年から2025年にかけて金融業界で大きな注目を集めています。
Tren Financeの調査レポートによると、2024年末時点でトークン化された現実資産の市場規模は152億ドル(約2.7兆円)を超えており、今後5年以内にこの規模が16兆ドル(約2,400兆円)を超える可能性があると予測されています。
事例として、欧州連合の機関である欧州投資銀行(EIB)はブロックチェーン上で1億ユーロ(約162億円)規模のデジタル債券を発行し、分散型台帳による資金調達の実証を行っています。
DeFi領域でも、MakerDAOのように米国債や不動産ローン債権を担保として受け入れるプロジェクトが登場し、実社会の資産と連動した利回り商品を提供し始めています。
DeFiとRWAの技術は、市場の効率性や透明性を高め、金融システムの近代化を推進する重要な役割を果たしています。ブラックロックCEOが指摘するように、今後ますます注目されることになりそうです。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=149.81円/1ユーロ=162.18円)
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Source:ブラックロック年次書簡
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像