改正資金決済法が成立、暗号資産仲介業と資産保全ルールを新設|神谷議員による税制緩和提案も

改正資金決済法が成立、暗号資産仲介業と資産保全ルールを新設|神谷議員による税制緩和提案も
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改正資金決済法が成立、暗号資産業界の規制緩和へ

暗号資産(仮想通貨)に関連する規制を盛り込んだ改正資金決済法が、2025年6月6日に参議院本会議で可決・成立しました。

同法改正案には、暗号資産サービスの新たな業態となる「暗号資産サービス仲介業」の創設や、顧客資産の保全ルール強化策などが盛り込まれています。

これらの措置は、金融のデジタル化に対応しながら利用者保護を強化し、イノベーションを促進することを目的としており、改正法案は今年3月に国会へ提出されていました。

なお、成立した改正資金決済法は、公布日から1年以内に施行される予定で、遅くとも来年半ばまでには施行される見通しです。

暗号資産の仲介業が制度化へ

仲介業ライセンス新設により新規参入が容易に

今回新設される「暗号資産サービス仲介業」は、暗号資産交換業者(仮想通貨交換業者)や電子決済手段等取引業者(ステーブルコイン取扱業者)と、暗号資産の売買・交換を希望する利用者をつなぐ仲介業務のみを行う事業者を指します。

現行制度では、たとえ仲介(マッチング)のみを行う場合でも自ら暗号資産交換業者として登録する必要があり、取引所と同等の厳しい規制が課されていました。

改正法ではこの仲介業者に対し、新たな登録制のライセンスを設けることで適切な規制レベルに調整します。具体的には、仲介業者は内閣総理大臣への登録を受ければ暗号資産交換業者の登録なしに媒介サービスを提供できるようになります

所属制によるユーザー資産保護の仕組み

ただし、仲介業者は取引所に所属する形で業務を行う必要があり、所属先となる暗号資産交換業者等が仲介業者を指導・監督する仕組みが採用されています。

この所属制により、ユーザーに損害が生じた場合は原則として所属先の交換業者が賠償責任を負うこととなり、仲介業者自身はユーザー資産を預かることが禁止されます。

そのため仲介業者には自己資本などの財務要件は課されず、マネーロンダリング対策も実際の取引を執行する交換業者側で義務付けられるため、新たな仲介業者には課されません。

一方で仲介業者にも、利用者へのリスク説明義務や誇大広告の禁止など、交換業者と同様のルールが適用されることになっています。

このように仲介業者に必要十分な規制のみを課すことで、新規事業者が暗号資産サービスを提供しやすくなると期待されています。

仲介業が創設されることで、ゲームやウォレットアプリなど既存サービスにも暗号資産取引機能が導入しやすくなると指摘されており、Web3業界の発展促進につながるとの見方も示されています。

暗号資産の資産保全強化とステーブルコイン規制見直し

信託型ステーブルコインの規制緩和

今回の法改正には、暗号資産関連の他の分野の整備も含まれています。

一つはステーブルコイン(電子決済手段)関連の規制見直しであり、信託型ステーブルコインの裏付け資産運用の規制が緩和されました。

これまでは特定信託受益権(信託型ステーブルコイン)の裏付け資産として、全額を要求払預金で保管する必要がありましたが、今回の改正で元本割れのリスクがない国債や定期預金で最大50%まで運用が認められました。

「資産の国内保有命令」を新設

さらに重要なのが、暗号資産交換業者等に対する「資産の国内保有命令」の導入です。

内閣総理大臣は公益または利用者保護のため必要と認める場合、暗号資産交換業者や関連業者に対し資産の一定割合を国内に保有するよう命令できる権限を新設しました。

これは海外に拠点を持つ暗号資産企業が破綻した際に国内ユーザー資産が海外流出するのを防ぐための措置で、昨年11月の暗号資産取引所FTX破綻事件で顕在化した「ユーザー資産の海外流出」という課題に対応する措置です。

FTXジャパンの場合、金融商品取引業の登録があったことから金融商品取引法に基づく国内保有命令の発令が可能で、当局は同社に対して資産の国内保全を命じユーザー資産の流出を阻止しました。

しかし当時、資金決済法においては同様の命令規定が存在しなかったため、FTXジャパンが金融商品取引法の登録を持たない現物取引専門業者だった場合、日本国内の資産が海外に流出し、米国での債権者への返済に使われるリスクがありました。

この教訓を踏まえ、改正資金決済法では現物取引のみを手がける暗号資産交換業者等も含め、全ての登録業者を対象に国内保有命令を発出できるよう法整備が行われました。

結果として、海外に本拠を置く取引所が破綻した場合でも、日本の利用者は国内業者と同様の保護を受けられるようになり、投資家資産をより確実に保全できると期待されています。

神谷宗幣議員、暗号資産課税を改革提案

暗号資産規制を巡っては、今回の法案成立に関連して参政党の神谷宗幣代表からも提言がなされました。

米国ビットコイン準備金政策を紹介

神谷議員は2025年6月5日、参議院財政金融委員会の質疑で、米国におけるビットコイン(BTC)準備金の創設など仮想通貨(暗号資産)活用の政策事例を紹介しました。

同氏は、仮想通貨を国家戦略として活用する米国の取り組みを紹介し、日本も同様に暗号資産を活用した金融政策の導入を検討すべきと訴えました。

日本の暗号資産税制見直しと規制緩和の必要性

また神谷議員は、日本国内の暗号資産ユーザー数が増加しており取引口座数が1,200万を超えている現状にも言及し「規制だけを強化していては日本経済の成長を阻害する」と訴えました。

現在、日本では暗号資産で得た利益は雑所得として総合課税の対象となり、最大55%(住民税含む)の累進課税が適用されています。

同氏はビットコイン投資利益に相続税と所得税が二重課税され、多額の税負担が発生した友人の事例を挙げ、暗号資産取引への課税方法を見直す必要性を強調しました。

金融庁、申告分離課税と損失控除を検討

この提言に対し、金融庁側は「与党や業界団体からの要望も踏まえ、暗号資産取引で得た所得の申告分離課税(一律20%)化を含め必要な対応を検討していきたい」と答弁しています。

検証の結果によっては、暗号資産利益への一律20%課税への移行や損失繰越控除の導入、金融商品取引法に基づく投資家保護策の適用などが現実味を帯びてくる見通しです。

加藤勝信財務大臣は今年1月に開かれた衆議院予算委員会の中で「暗号資産の税制改正などに関する制度は2025年6月末までを目処に結論づける方針である」と述べているため、税制の行方に国内の投資家から大きな注目が集まっています。

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Source:金融庁資料 / 参議院
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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