ルミス議員ら、仮想通貨規制の新草案を提示
米国上院のシンシア・ルミス議員(共和党、ワイオミング州選出)らは2025年7月22日、米国の仮想通貨市場構造を再定義するための新たな法案草案(ディスカッションドラフト)を発表しました。
この草案は、7月17日に下院を通過した「CLARITY法案」を基に、その内容を拡張しつつ、上院として独自の規制枠組みを提示したものとなっています。
今回の市場構造法案では、これまで不明確だった仮想通貨規制のルールを明確にし、投資家保護と技術革新の両立を図る方針が示されました。
上院銀行委員長のティム・スコット議員(共和党)は声明で「仮想通貨に明確なルールを設けることで投資家を保護し、イノベーションを推進する。これにより、デジタル金融の未来を米国に根付かせることが目標だ」と述べています。
またルミス議員も、仮想通貨分野における規制の不確実性を終わらせる時期に来ていると述べたうえで、本草案がイノベーターにとっての明確性と利用者保護を両立した、慎重かつバランスの取れた取り組みである強調しました。
さらに同氏は、本法案によって仮想通貨における証券と商品の区分が明確化され、既存の規制が現代の技術に即して見直されると述べました。これにより、米国が同分野において国際的な主導権を握る契機になるとの見解を示しています。
規制を明確化「CLARITY法案」
仮想通貨市場構造の明確化に向けた新提案
証券と商品分類の明確化を図るCLARITY法案
CLARITY法案は、米国内における仮想通貨の証券および商品としての区分と、それに付随する規制当局の管轄を明確にすることを目的とした包括的な法案です。
同法案には、多くの仮想通貨トークンについて分類基準を明文化する方針が盛り込まれており、7月17日に米下院本会議で賛成294票・反対134票で可決されました。
米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の監督範囲を明瞭化し、業界に存在していた規制の不透明性を是正することを狙いとしています。
バイデン政権下では、SECが仮想通貨関連の大手企業に対して提訴を繰り返しており、その動きに対して業界内ではイノベーションの阻害につながるとの懸念が高まっていました。
トークンの分類を巡る新たな視点「補助的資産」
「Responsible Financial Innovation Act of
9 2025(2025年責任ある金融イノベーション法)」と題された上院版の市場構造法案は、CLARITY法案の内容を踏まえたうえで、独自の規定を加えた内容となっています。
中でも注目を集めているのが「ancillary asset(補助的資産)」という新たな定義で、証券的契約に付随するトークンについては証券と見なさないとする考え方を明確に示しました。
この制度においては、発行体が自己申告によってトークンの性質を示すことが可能で、SECが60日以内に異議を申し立てなければ、その分類が正式に認められる仕組みとなっています。
この定義は下院のCLARITY法案には盛り込まれておらず、上院草案における独自の調整要素として位置づけられています。
SECに求められる新たな開示ルール
補助的資産に関連しては、SECに対しトークンに特化した新たな開示ルールを策定するよう求める規定も盛り込まれました。
年間売上高が7,500万ドル(約110億円)以下のトークン販売に対しては、証券登録の免除を認める新制度「レギュレーションDA」の導入が予定されています。
また「投資契約」に該当する条件を明確に定義するルールも導入される見通しで、既存の証券法の適用範囲に関する不確実性を解消する構成となっています。
こうした制度設計により、過剰または不適切な規制がイノベーションを妨げるリスクを抑えつつ、仮想通貨市場の持続的な成長を後押しすることが期待されています。
不正対策・分散型台帳技術活用も視野に入れた法整備
本草案では、SECに対して証券関連規則の見直しを義務づけ、現在の規制を仮想通貨技術の進化に即した内容へと再構築する方針が示されています。
さらに、監査・検査に関する基準の整備に加えて、民間と当局が協力しマネーロンダリング対策を強化する取り組みも制度内に盛り込まれました。
銀行業務においても、DLT(分散型台帳技術)の活用が可能であることが法的に明文化され、許可された業務への適用が明確に示されています。
また、SECとCFTCが共同で規制を策定する分野も定められ、証券・先物を横断する資産に対する一貫性のある監督体制が構築される見込みです。
ディスカッションドラフトとして意見を募集
この草案は「ディスカッションドラフト」として提示されており、今後の正式な法案提出に向けて、業界関係者からの意見募集が始まっています。
スコット委員長とルミス議員は、取引所の監督、カストディ体制、州と連邦の権限分担などを含む多岐にわたる論点について、公開質問状を提出しました。
議会は、8月の休会明けに本法案の正式な審議に着手し、9月末までに委員会での承認を得る方針を示しています。
トランプ政権側も本草案への支持を明らかにしており、AI・仮想通貨政策担当のデイビッド・サックス氏は「CLARITY法案とGENIUS法案の双方を早期に成立させるべきだ」との見解を示しました。
コインベースCEOが草案への支持を表明
米大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)のCEO、ブライアン・アームストロング氏は、以前から「CLARITY法案」への全面的な支持を表明しており、9月末までの法制化実現に向けて協力する姿勢を示しています。
一方で、野党・民主党の一部議員からは「消費者保護が不十分で、業界寄りの内容だ」との批判が上がっています。こうした意見を背景に、法案内容については慎重な審議が継続される見通しです。
ウォーターズ下院議員およびリンチ下院議員は、GENIUS法案やCLARITY法案について「投資家保護やマネーロンダリング対策が不十分だ」との理由から、引き続き強く反対する立場をとっています。
下院で提出された多数の修正案はすでに否決されており、今後の上院審議でも同様の論点が主要な争点となることが予想されています。
仮想通貨300ドル以下の取引を非課税に
米上院・下院で進む仮想通貨法案の行方
2025年中盤に入り、米国では仮想通貨に関する法整備が議会主導で加速しています。今後は、上院における審議の行方が重要な焦点となります。
すでに下院を通過しているCLARITY法案やCBDC禁止法案に加え、今回ルミス議員らが提出した上院版の市場構造草案も、今後の議論の中心的テーマとして取り上げられる見通しです。
米国による規制の確立は、世界的なルール形成にも影響を与える可能性があり、同国初の包括的な仮想通貨規制フレームワークの実現に向けた、今後数ヶ月の議会審議の行方に注目が集まっています。
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Source:米上院委員会公式サイト
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