ビットコイン「2030年までに量子コンピューターのリスクに直面」ソラナ共同創設者が警鐘

ビットコイン「2030年までに量子コンピューターのリスクに直面」ソラナ共同創設者が警鐘(Bitcoin may face quantum computer risks by 2030, warns Solana co-founder)
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ヤコヴェンコ氏「BTC暗号方式は2030年までに脆弱化の恐れ」

ソラナ(SOL)共同創設者のアナトリー・ヤコヴェンコ氏は、ビットコイン(BTC)が2030年までに量子コンピューターによる深刻なリスクに直面する可能性があると警鐘を鳴らしました。

ヤコヴェンコ氏は米国で開催されたAll-In Summit 2025に登壇し「今後5年以内に量子コンピューティング分野で50%の確率で重大な技術的ブレークスルーが起こり得る」と述べました。そのうえで、ビットコインの署名方式を耐量子(ポスト量子)署名アルゴリズムへ移行すべきだと強く訴えています。

さらに同氏は、現行の暗号方式(楕円曲線暗号)は2030年頃までに量子コンピューティングの進展によって解読される恐れがあるとの見解を示し、開発者が対策を怠ればビットコインのセキュリティが深刻な影響を受ける可能性があると指摘しました。

エンジニアでもあるヤコヴェンコ氏は、量子コンピューティングの脅威を放置すればビットコインの根幹をなす暗号技術が2030年までに脆弱性を突かれる恐れがあると警告し、コミュニティに対して迅速な対応を促しています。

2030年までに迫るビットコインの量子コンピューター問題

ビットコインに迫るAIと量子技術の融合リスク

ヤコヴェンコ氏がこの予測を示した背景には、人工知能(AI)を含む複数の先端技術の融合と急速な進歩があるとしています。

同氏はAI分野での研究成果が実用化への移行速度が「驚異的だ」と述べており、こうした技術動向から量子コンピューティングの飛躍的進展も遠くないとの見解を示しました。

また、ヤコヴェンコ氏はビットコイン開発コミュニティに対し、量子耐性への対応を加速するよう促しました。

ビットコイン署名方式「ECDSA」の量子脆弱性

ビットコインは現在、楕円曲線暗号(ECDSA)に基づく署名アルゴリズムを採用しています。

この仕組みでは、取引に使用したウォレットアドレスの公開鍵がブロックチェーン上に残されますが、十分に強力な量子コンピューターが出現した場合、公開鍵から秘密鍵を逆算される危険性があります。

現時点で256ビットのECDSA暗号を破るような量子コンピューターは存在しないものの、研究者らはその実現時期が想定より早まる可能性も指摘しました。

ヤコヴェンコ氏の警告は「最悪のシナリオ」に備える重要性を訴えたもので、実際にビットコイン開発者コミュニティでは耐量子署名アルゴリズムへの切り替え提案(BIP-360)もすでに議論がなされています。

しかし、こうした暗号技術のアップグレードにはハードフォークが必要となるため、合意形成のハードルが高い点が課題となっています。

量子リスクは現実か誇張か、専門家の評価

量子脅威への危機感を示す声もあります。サイバーセキュリティ企業Naoris Protocolの創業者デビッド・カルヴァーリョ氏は2025年6月に「ビットコインの暗号は今後5年以内に量子コンピューターで解読される可能性がある」との見解を示しました。

一方で、ビットコイン開発者の中には量子リスクを直ちに差し迫った問題とは見ていないとの見方もあります。

Blockstream社CEOアダム・バック氏は「現状の量子コンピューターはビットコインの暗号に対してまだ脅威ではないが、将来的には脅威になり得る」と指摘しています。

また、Jan3社の創業者サムソン・モウ氏も「リスクは現実的だがタイムラインはあと10年程度先であり、他のすべてのものが失敗した後にビットコインが失敗する」との見解を示しました。

さらに、ストラテジー(旧マイクロストラテジー)会長のマイケル・セイラー氏は量子脅威に関する懸念を「過剰な宣伝(ハイプ)」だと一蹴しています。

同氏は、仮に将来その脅威が現実化しても、ビットコインネットワークは他の重要インフラ同様、適切なソフトウェアやハードウェアの更新によって十分に対処可能だと主張しています。

ビットコインコミュニティに広がる量子耐性議論

ヤコヴェンコ氏の指摘は、ビットコインの長期的なセキュリティ戦略を見直す契機にもなっています。

実際、最近ではエルサルバドル政府が国家準備金として保有する約6,284BTC(7.2億ドル/1,070億円相当)を単一のウォレットから14の新規アドレスへ分散移管しました。

同国の国家ビットコイン事務局(ONBTC)は、この措置について「量子コンピューターによる解読リスクなど将来的なセキュリティ上の脅威に備えるため」と説明しています。

専門家らは足元では量子コンピューターがビットコイン暗号を破る現実性は極めて低いとしつつ、仮にそのような脅威が現れた場合にはネットワークの暗号アルゴリズムを更新することで対処可能との見方も示されました。

量子コンピューターの脅威は依然として「将来の課題」という位置付けですが、こうした議論を背景に仮想通貨業界ではリスクへの先手対応や技術標準の策定が進みつつあります。

ヤコヴェンコ氏の警鐘を受け、ビットコインコミュニティでもポスト量子時代を見据えたセキュリティ強化の議論が一層活発化していく可能性があります。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.90 円)

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Source:All-In Summit
サムネイル:AIによる生成画像

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Written by

BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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