RWAがもたらす金融インフラ変革
米資産運用大手BlackRock(ブラックロック)のラリー・フィンクCEOとロブ・ゴールドスタインCOO(最高執行責任者)は、RWA(現実資産トークン化)による即時決済や非上場資産の小口化が「金融インフラに大きな革新をもたらす可能性がある」との見解を示しました。
フィンク氏らは論説記事の中で、資産トークン化を「金融市場インフラの次の進化」と位置付け、金融システムに与える影響や今後の課題についても具体的に言及しています。
さらに、トークン化の発展には規制整備と投資家保護の枠組み構築が不可欠であると強調しています。
今話題の「RWAトークン化」とは
ブラックロックが語る資産トークン化の未来
金融の未来を拓くトークン化の可能性
トークン化された金融資産市場は依然として小規模ながら、過去数年で急速に成長しています。
過去20ヶ月で約300%成長し、新興国での採用も進んでいることから、フィンク氏らは「トークン化市場は今後も大きな成長余地がある」と指摘しました。
論説記事では、トークン化を1996年頃のインターネットに例え「今後数十年でインターネットに匹敵する急成長を遂げる可能性がある」と述べています。
ただし、技術のメリットだけでは全ての課題は解決できず、トークン化は既存の金融システムを直ちに置き換えるものではないとの見解も示しています。
伝統的な金融機関とデジタル資産企業が共存する中、フィンク氏らは「市場の発展には投資家保護や規制整備が不可欠である」と指摘しました。
トークン化市場で求められる規制対応
将来的には株式や債券、仮想通貨など全ての資産を単一のデジタルウォレットで扱えるようになり、上場市場と非上場市場の垣根が低くなる可能性にも言及しています。
フィンク氏らは政策当局に対し「新たなルールではなく既存の規制を更新し、伝統市場とトークン化市場の橋渡しを進めるべきだ」との見方を示しました。
また、トークン化市場に明確な「ガードレール」を設け、投資家保護や透明性確保、取引相手リスク管理、デジタルIDによる本人確認といった安全基準を整備する必要性も訴えています。
過去の市場混乱の教訓を踏まえ、フィンク氏らは「アクセス拡大には最新の安全策を伴わせるべきであり、スピードと安全性の両立が重要である」と結論付けています。
RWA実用化へ進むブラックロックの戦略
実際に、ブラックロックは2024年にUSD建てトークン化マネーマーケットファンド「BUIDL」を立ち上げ、同ファンドは約25億ドル(約3,890億円)の規模に成長して現在世界最大のトークン化ファンドとなっています。
最近では、大手仮想通貨取引所Binance(バイナンス)がBUIDLトークンを担保として受け入れるとの発表もあり、こうした事例は伝統金融資産のトークン化が実用段階に入ったことを示しています。
ETFのトークン化も検討
RWA本格化の兆し、大手企業が次々参入
2025年末にかけてRWAトークン化の動きも活発化しています。
米大手仮想通貨取引所Kraken(クラーケン)は12月2日、株式やETFのトークン発行企業「Backed Finance」の買収を発表しました。クラーケンは同社発行のトークン化資産を自社プラットフォームに統合し、ブロックチェーン上での株式取引拡大を図る計画です。
こうした動きは仮想通貨業界と伝統金融の橋渡しが進んでいることを示しています。
RWA.xyzのデータによると、そのトークン化資産市場の規模は約360億ドル(約5.6兆円)とまだ小さいものの、今後はブラックロックなど大手金融機関の参入により市場拡大が期待されます。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=155.67 円)
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Source:BlackRock論説記事
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