税制改正大綱で暗号資産課税の見直し方針示す
政府・与党(自民党・日本維新の会)は2025年12月19日、2026年度税制改正大綱を取りまとめました。
この税制改正大綱では、暗号資産(仮想通貨)取引の利益に対する課税方式の見直しが打ち出され、具体的な制度設計が示されています。
この制度見直しにより、暗号資産の現物取引やデリバティブ取引、ETF(上場投資信託)から生じる所得を分離課税の対象とし、3年間の損失繰越控除制度を創設する方針が盛り込まれました。
申告分離課税が導入された場合、税率は株式取引と同様に所得税15%、住民税5%の一律20%とされ、対象は「国民の資産形成に資する暗号資産」に限定されます。
なお、今回の措置は金融商品取引法改正を前提とした条件付きではあるものの、2025年度の税制改正大綱で「暗号資産取引の課税見直しの検討」とされていた段階から大きく踏み込んだ内容となっています。
暗号資産の「金商法」移行を決定
2026年度税制改正大綱で整理された暗号資産課税ルール
分離課税の導入と3年繰越控除の制度
税制改正大綱では、暗号資産取引の課税について「国民の資産形成に資する暗号資産に限って、その現物取引、デリバティブ取引及びETFから生ずる所得を分離課税の対象とする」と明記されています。
また、国民が安心して暗号資産市場に参加できる環境の構築を図る観点から、3年間の繰越控除制度を創設することも盛り込まれました。
分離課税が導入された場合、暗号資産の譲渡益に対し他の所得と分離した一律20%(所得税15%、住民税5%)の税率が適用されることになります。
あわせて、分離課税の対象となる「特定暗号資産」は、金融商品取引業者の登録簿に登録されている暗号資産に限定されるとされています。
暗号資産取引業者に課される新たな報告義務
国内の暗号資産取引業者(交換業者)には、その年中に特定暗号資産の取引を行った顧客(居住者)の氏名・住所・個人番号などを記載した報告書を翌年1月31日までに税務署へ提出する義務も課されます。
また、制度上の取扱いとして、暗号資産の譲渡益については他の所得(給与所得など)との損益通算は認められておらず、5年超保有した場合に譲渡益を1/2とする「長期譲渡所得」の特例も対象外とされています。
現行の暗号資産課税制度とその課題
現行の日本の税制では、暗号資産取引で得た利益は「雑所得」に区分され、給与所得などと合算する総合課税の対象とされています。
この総合課税の下では、税率は所得税と住民税を合わせて最大55%に達し、損失の繰越控除は認められていない扱いとなっています。
このため、株式やFX取引が一律20.315%の申告分離課税で損失繰越も可能である点と比べると、暗号資産投資は投資家にとって不利な税制環境が続いてきました。
こうした課題を踏まえ、税制改正大綱では、分離課税の導入によって税率を一律20%程度とし、暗号資産間の損益通算や最長3年間の損失繰越控除を可能とする方針が示されています。
2028年施行が想定される制度改正
今後の見通しとして、2026年の通常国会に金融商品取引法等の改正案が提出される予定です。
暗号資産の分離課税は、改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後に適用開始と定められており、現時点では2028年1月からの施行が想定されています。
こうした制度改正の方向性について、業界団体からは歓迎する声も上がっており、日本ブロックチェーン協会(JBA)は「web3産業の健全かつ持続的な発展に向けた重要な一歩だ」と評価しています。
先ほど公表された「令和8年度税制改正大綱」において、暗号資産税制は金融商品取引法等の改正を前提に、分離課税とする方向性が示されました。https://t.co/42YzBHGka8
web3産業の健全かつ持続的な発展に向けた重要な一歩であると受け止めております。… pic.twitter.com/Z9VCraTRUE
— 日本ブロックチェーン協会/JBA(Japan Blockchain Association) (@J_Blockchain) December 19, 2025
高市政権が暗号資産市場に与える影響
暗号資産ETF解禁と税制改正時期が焦点に
2025年12月18日には、日本初の暗号資産ETF解禁が2028年になる見通しで、税制改正との施行時期をどのように調整するかが焦点となっていることが明らかになりました。
金融当局に近い関係者によれば、税制改正より先にETFのみが先行解禁された場合、現物取引には最大55%の税負担が残る一方でETFには20%課税が適用されるため、市場資金がETFに集中する恐れが指摘されています。
こうした指摘を踏まえ、この税制面の不均衡を避けるため、金融庁は暗号資産ETFの解禁時期を分離課税の施行と同時期に揃える方針と伝えられています。
一方で、新制度の開始まで2年以上あることから対応の遅さを懸念する声もあり、政府内では「2028年では手遅れになりかねない」との指摘や、海外市場の動向を踏まえて迅速な対応を求める意見も出ています。
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Source:2026年度税制改正大綱
サムネイル:AIによる生成画像



























