金融庁、暗号資産の「金商法」移行方針を正式決定|銀行保有解禁やインサイダー規制導入へ

金融庁、暗号資産の「金商法」移行方針を正式決定|銀行保有解禁やインサイダー規制導入へ(Japan's FSA Officially Decides to Shift Cryptocurrencies to Financial Instruments and Exchange Act (FIEA) Regulation, Paving Way for Bank Holdings and Insider Trading Rules)
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金融審議会が報告書を公表

金融庁の金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」は2025年12月10日に、暗号資産(仮想通貨)規制の在り方に関する最終報告書を公表しました。

この報告書では、これまで「資金決済法」に基づいて規制されていた暗号資産を、株式や債券などと同様の「金融商品取引法(金商法)」の規制対象へと移行させる方針が明確に示されました。これは日本の仮想通貨規制史において、最も大きな転換点となる決定です(※報告書内では暗号資産投資にお墨付きを与えるものではないことも強調)。

今回の決定の背景には、仮想通貨が決済手段としてではなく、主に投資対象として利用されている実態があります。金融庁のデータによると、2025年10月時点で国内の暗号資産交換業者の口座数は延べ1,300万口座を超え、預託金残高は5兆円以上に達しています。また、取引動機のほとんど(86.6%)が「長期的な値上がり期待」であり、投資商品としての性格が強まっていることから、より投資者保護機能の強い金商法への移行が適切であると判断されました。

新たな規制枠組みでは、インサイダー取引の禁止や相場操縦の規制など、伝統的な金融市場と同等の厳格なルールが適用されることになります。一方で、銀行や保険会社による暗号資産の保有が条件付きで解禁されるなど、市場の拡大を後押しする内容も盛り込まれています。

規制変更のポイントと詳細

報告書で示された主な規制変更点と、市場参加者に与える影響としては以下のようなものが挙げられます。

金融商品取引法への移行と投資者保護の強化

  • インサイダー取引規制の導入:
    これまで法的な罰則規定が曖昧だった暗号資産のインサイダー取引が、金商法に基づき明確に禁止される。これにより、未公開情報を利用した不公正な取引に対する監視と処罰が強化され、市場の透明性が向上する。
  • 相場操縦の禁止:
    見せ板や価格操作などの相場操縦行為も厳格に規制され、違反者には課徴金や刑事罰が科されることになる。
  • 情報開示の義務化:
    発行者や交換業者に対し、ホワイトペーパー等を通じた詳細な情報開示が法的に義務付けられる。虚偽の記載があった場合の責任追及も容易になる。

銀行・保険会社による保有解禁

業界にとって大きなニュースとなったのが、銀行や保険会社による暗号資産の保有解禁です。報告書では、投資目的であっても十分なリスク管理態勢が整備されていることを前提に、これらの金融機関本体による保有を容認する方向性が示されました。

また、銀行や保険会社の子会社については、暗号資産の売買・仲介、投資運用業などが明確に認められることになります。これにより、伝統的な金融機関が本格的にWeb3(分散型ウェブ)市場へ参入する道が開かれました。

IEOおよびレンディングサービスの規制

国内でも事例が増えているIEO(Initial Exchange Offering)については、投資家保護の観点から規制が強化されます。

  • 個人投資家への投資上限:
    発行者が監査法人による財務監査を受けていないケースなどでは、株式投資型クラウドファンディングを参考に、個人の投資額に上限が設けられる。
  • レンディングの規制強化:
    これまで規制の空白地帯だった暗号資産の貸借(レンディング)サービスも金商法の規制対象となり、事業者には分別管理や信用リスク管理が義務付けられる。

投資助言・サロンへの厳格な対応

SNS上のオンラインサロンや投資セミナーなどで、具体的な銘柄の売買を推奨する行為についても、金商法の「投資助言・代理業」や「投資運用業」の規制が適用されることが確認されました。

無登録でこうした営業を行った場合の刑事罰は、現行の「3年以下の拘禁刑」から「5年以下の拘禁刑」へと引き上げられます。また、証券取引等監視委員会には、裁判所に対して無登録業者の活動差し止めを申し立てる「緊急差止命令申立権限」が付与されるなど、詐欺的な勧誘に対する取り締まりが大幅に強化されます。

市場への影響と今後の展望

今回の報告書公表は、日本の暗号資産市場にとって「信頼と成熟」をもたらす重要なステップとなります。

ビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)などが明確に金融商品として位置付けられることで、これまでコンプライアンス上の理由から参入を躊躇していた機関投資家や年金基金などが、アセットアロケーションの一部として暗号資産を組み入れやすくなります。

特に注目されるのは、現物ETF(上場投資信託)への道筋です。米国では2024年にビットコイン現物ETFが承認され市場拡大の起爆剤となりましたが、日本でも金商法上の金融商品となることで、投資信託の組み入れ対象としての法的整理が進むと期待されます。

一方で、交換業者には「第一種金融商品取引業」相当の重厚な規制が課されることになり、コンプライアンスコストの増大は避けられません。これにより、中小規模の交換業者の統廃合や、大手金融グループによる買収といった業界再編が加速する可能性があります。

また、今回の規制対象からは、決済手段としての性格を持たないNFTや、デジタルマネーに類似した一部のステーブルコインは除外される方針です。これにより、イノベーションを阻害しないよう配慮しつつ、投資市場としての健全性を高める「メリハリのある規制」が実現することになります。

金融庁は今後、この報告書に基づき金融商品取引法の改正案を作成し、次期国会への提出を目指します。施行されれば、日本は世界で最も厳格かつ透明性の高い暗号資産市場の一つとなり、グローバルなWeb3ハブとしての地位確立に向けた大きな一歩になると注目されています。

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source:金融庁
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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