この記事の要点
- ABAニコルズ会長が全米銀行CEOに緊急書簡、抜け穴修正を要請
- 5月14日のCLARITY法案採決前、銀行業界と推進派の対立が激化
ABA、全銀行CEOに「抜け穴封じ」緊急動員
米国銀行協会(ABA)のロブ・ニコルズ会長兼CEOは2026年5月11日、全米の加盟銀行CEOに緊急書簡を送付し、5月14日に上院銀行委員会で予定されている「CLARITY(クラリティ)法案」のマークアップ(修正審議)前に、上院議員への即時働きかけを行うよう要請しました。
書簡が問題視しているのは、ペイメントステーブルコインに対する利息類似の報酬付与を十分に防げていないとする条項で、ABAはこれを「抜け穴」と位置づけています。
ニコルズ氏は書簡内で「現行案のままでは銀行預金がペイメントステーブルコインへ不必要に流出し、経済成長と金融安定の双方を危険にさらす」と主張しました。
銀行業界はこの動員要請を通じて、5月14日のマークアップを前に仮想通貨業界との対立を再び強めており、法案条文を巡る調整協議が大詰めを迎えています。
銀行6団体が修正要求
6.6兆ドル流出か0.02%か、双方の主張に開き
パッシブ利回り禁止案、銀行5団体は不十分と主張
上院銀行委員会のトム・ティリス議員(共和・ノースカロライナ州)とアンジェラ・アルソブルックス議員(民主・メリーランド州)が、ホワイトハウスの後押しのもと2026年3月20日に原則合意としてまとめた妥協案が争点となっています。
この妥協案は、ステーブルコイン残高に対するパッシブな利回り付与を禁止する一方、取引や支払いなどユーザー行動に連動した活動ベースの報酬は許容する内容となっています。
ABAはこれを不十分とし、銀行政策研究所(BPI)・消費者銀行協会(CBA)・金融サービスフォーラム・独立コミュニティ銀行協会(ICBA)と連名で公表したファクトシートで、米財務省の推計として「利回りが認められた場合、最大6.6兆ドル(約1,000兆円)の預金流出が起こり得る」と訴えています。
モレノ議員「銀行カルテルがパニック状態」
上院銀行委員会メンバーのバーニー・モレノ上院議員(共和・オハイオ州)は翌11日、X(旧Twitter)上で「銀行カルテルが完全にパニック状態にある」と投稿し、ABA側の主張に反論しました。
🚨 The banking cartel is in full panic mode. 🚨
While Americans were celebrating Mother’s Day with their families, the CEO of the American Bankers Association sent a frantic alert to every bank CEO in the country, demanding “immediate engagement” to lobby Senators and kill… pic.twitter.com/Phd6HsdBXR
— Bernie Moreno (@berniemoreno) May 11, 2026
🚨 銀行カルテルはいま、完全にパニック状態だ。🚨
アメリカ国民が母の日を家族と過ごしていたその頃、米銀行協会(ABA)のCEOは全米の銀行CEO宛てに緊急メッセージを送り、「直ちに行動するように」と呼びかけた。
目的は、上院議員へのロビー活動を通じて、一般のアメリカ人が自分のお金でまともな利回りを得られるようになるステーブルコインを潰すことだ。(後略)
モレノ氏はABAが用いた「抜け穴」という表現について、すでに2025年に成立した「GENIUS法」の議論で決着済みの論点を蒸し返すものであり、ビル・ハガティ上院議員らがまとめた成果を軽んじるものだと指摘しています。
銀行業界側の主張に対しては、ホワイトハウス関係者からも反論が出ています。ホワイトハウスで2026年2月にステーブルコイン利回り会合を主催したパトリック・ウィット氏は、ニコルズ氏ら銀行業界団体のCEOを個人的に招待したものの出席を辞退されたと明らかにしました。
0.02%試算にABAは「誤った問い」と反論
銀行業界が掲げる預金流出リスクをめぐっては、ホワイトハウス経済諮問委員会(CEA)が2026年4月8日に公表したレポートで、ステーブルコイン利回りの禁止による銀行融資の増加効果はわずか0.02%にとどまると試算しました。
ABAはレポート公表後まもなく「同レポートは誤った問いに基づく分析だ」と反論しており、政府と銀行業界の間で見解の隔たりが残ったままとなっています。
銀行業界と推進派の対立が続くなか、上院議員らは5月14日のマークアップに向け、妥協案条項を維持するか、銀行団体側の修正要求を受け入れるかの協議を進めています。
ホワイトハウス「利回り禁止は効果薄」
CLARITY法案、7月4日成立に向け4つの関門
CLARITY(クラリティ)法案は、デジタル資産に対する包括的な連邦規制枠組みを確立し、SEC(米証券取引委員会)とCFTC(米商品先物取引委員会)の長年の管轄問題を解消することを目的としています。
仮に今回のマークアップを通過した場合でも、上院本会議での60票確保、上院農業委員会版との調整、2025年7月に下院を通過した法案との一本化、大統領署名という関門が残されており、ホワイトハウスは2026年7月4日を成立目標日に設定しています。
5月14日のマークアップでステーブルコイン条項がどのような形で確定するかが、米国のステーブルコイン規制と仮想通貨政策全体の方向性を左右する重要局面として注目を集めています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.28 円)
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Source:ABA CEO書簡 / バーニー・モレノ上院議員X投稿
サムネイル:AIによる生成画像


























