この記事の要点
- イーサリアム財団のladislaus.eth氏が2026年2月9日に発表
- 従来の全トランザクション再実行から証明検証への大規模転換
- ブロック検証時間が一定になり、L1スケーラビリティが向上
- ノード運営負担が軽減され、家庭用機器でも参加可能に
- 分散性を保ちつつ、L1・L2インフラが統合される可能性
再実行から証明検証へのパラダイムシフト
イーサリアム(Ethereum/ETH)財団のメンバーであるladislaus.eth氏は2026年2月9日に、イーサリアムのブロック検証プロセスを根本から覆す「L1-zkEVM」の取り組みが進められていることを報告し、「これは他のアップグレードほど派手ではないが、イーサリアム全体にとって間違いなく最も重要なものの一つだ」と説明を行いました。
イーサリアムのzkEVMチームは先月末に「L1-zkEVM」の2026年ロードマップを発表していましたが、これはこれまでのイーサリアムの歴史において、ジェネシス(最初のブロック)以来続いてきた「全てのノードが全てのトランザクションを再実行して検証する」というプロセスを、ゼロ知識証明(ZK Proofs)を用いた「証明の検証」へと移行させる巨大なアーキテクチャの変更を意味します。
現在、イーサリアムのノードがブロックの正当性を確認するためには、ブロック内に含まれる何千ものトランザクションを一つずつ再実行する必要がありますが、この作業はオンチェーン上の活動量が増えるにつれて直線的にコストが増加し、ガスリミットの引き上げがノード運営のハードルを高くする要因となっていました。今回の提案は、この「計算の繰り返し」を廃止し、代わりに「誰かが正しく計算したという暗号学的な証明」を検証する方式への転換を図るものです。
例えるなら、これまでの仕組みは「学校のテストで全員が同じ難問を最初から解き直して採点しているような状態」です。これはネットワークが成長するほど計算量が増え、参加者の負担が重くなる原因でした。このプロセスを「証明の検証」へと移行させることによって、全員が問題を解き直すのではなく「誰かが正しく計算したという数学的な証明書(レシート)」を瞬時に確認するだけで済むようになります。
この変革により、ブロックの中身がどれほど複雑であっても検証にかかる時間は一定(Constant verification time)となり、長期的にはレイヤー1(L1)自体の実行スケーラビリティを飛躍的に向上させる道が開かれます。この技術はこれまで「ロールアップ(Rollup)」の特徴として語られてきましたが、今やイーサリアムのコアプロトコルそのものに組み込まれようとしています。
— ladislaus.eth (@ladislaus0x) February 9, 2026
イーサリアムの次なる大きな転換:全トランザクションの再実行からZK証明の検証へ
イーサリアムのブロック検証方法において、静かではあるが根本的な変革が具体化しつつある。このアーキテクチャの転換は、他のアップグレードほど「派手」ではないかもしれないが、イーサリアム全体にとって間違いなく最も重要なものの一つだ。
スケーリングの支持者であれ、ソロステーカーやホームバリデータであれ、あるいは個人の自己検証可能性(「信頼するな、検証せよ!」)の支持者であれ、これはあなたにとって重要な意味を持つ。何が起きているのか、なぜ重要なのか、そして現在の研究開発がどのような段階にあるのか説明しよう。
「EIP-8025」と「zkAttester」の技術的詳細
この変革を実現するための具体的な提案がEIP-8025(Optional Execution Proofs)です。重要なのは、これが「強制」ではなく「選択肢」として導入される点です。
これはプロトコルのアップグレードやフォークを必須とするものではなく、既存のノードはこれまで通りトランザクションの再実行を選択することも可能ですが、新たな選択肢として証明検証を通じてブロックを承認する「zkAttester(zkアテスター)」という役割が登場します。
zkAttesterは、完全な実行クライアント(EL Client)を実行する代わりに、コンセンサス層(CL)のクライアントを用いてzkEVM証明を検証します。この仕組みを実現するために、開発チームは以下のようなパイプラインを構築しています。
【証明生成と検証のプロセス】
- ExecutionWitnessの生成:
実行層(EL)クライアントが、全ステートを保持していなくてもブロックを検証できるデータパッケージ「ExecutionWitness」を作成する。 - ゲストプログラムによる検証:
標準化されたゲストプログラムがWitnessを消費し、ステートの遷移(状態変化)を検証する。 - ZK証明の生成:
zkVM(ゼロ知識仮想マシン)がこのプログラムを実行し、正しく実行されたことを示す証明(Proof)を生成する。 - コンセンサス層での検証:
CLクライアントが、ELクライアントを呼び出して再実行する代わりに、この証明を検証する。
現在の設計では、P2Pネットワーク上の専用ゴシップトピックを通じて異なるELクライアントの実装から証明が配布されます。アテスター(承認者)は、独立した5つの証明のうち3つを検証すればブロックの実行を有効とみなす「3-of-5」の閾値モデルが想定されています。これにより、特定のクライアントへの依存を防ぎ、プロトコルレベルでの多様性(クライアント・ダイバーシティ)が維持される設計となっています。
また、このシステムの実用化には「Glamsterdam」ハードフォークで導入が予定されているePBS(Enshrined Proposer-Builder Separation)が重要な役割を果たします。ePBSがない場合、証明生成に許される時間はわずか1〜2秒と非常にタイトですが、ePBSによるブロックのパイプライン化によってこの時間が6〜9秒に延長され、リアルタイムでの証明生成が現実的なものとなります。
ソロステーカーへの恩恵と分散化の未来
この技術革新がもたらす最大のメリットは、ノード運営に必要なハードウェア要件の劇的な低下です。zkAttesterとして参加する場合、ELステートを保持する必要も、実行層のチェーン全体を同期する必要もありません。同期作業は、最終化されたチェックポイント以降の最近のブロック証明をダウンロードするだけの軽量なタスクとなります。
これは、ブロックチェーンの分散化における「聖杯」とも言える進歩です。現在、バリデータ(検証者)を運用するには、リソース消費の激しいELクライアントとCLクライアントの両方を稼働させる必要があり、ガスリミットの上昇とともにストレージや帯域幅の負荷が増大していました。しかし、再実行を証明検証に置き換えることで、一般的な家庭用ハードウェアでも容易にノードを運用し、ネットワークの検証に参加できるようになります。
L2(レイヤー2)やロールアップチームにとっても、インフラの統合というメリットがあります。全てのバリデータが実行証明を検証するようになれば、ネイティブロールアップのための「EXECUTEプレコンパイル」に同じ証明を利用できるようになり、L1の証明インフラが共有インフラとして機能することになります。
現在、EIP-8025はコンセンサス仕様の機能ブランチに含まれており、2026年の実装に向けて「実行証人(Execution Witness)の標準化」「zkVM-Guest APIの標準化」「プロバー(証明者)インフラの整備」など6つのサブテーマに分かれて作業が進められています。本日、2026年2月11日には開発チームによる最初の会議が予定されており、イーサリアムが「分散性を犠牲にすることなくスケーリングする」という究極の目標に向けた、重要な一歩が踏み出されようとしています。
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source:ladislaus.eth (X)
サムネイル:AIによる生成画像


























