この記事の要点
- カルダノ創設者がADA1億ドルの資金転換を提案
- DeFi成長を目的にBTCとステーブルコインへ分散
- 市場影響は限定的とし年内実現の可能性にも言及
- 提案には賛否ありコミュニティ内で議論が活発化
ADAの1億ドル分資金運用見直し案を提起
カルダノ(Cardano/ADA)の共同創設者であるチャールズ・ホスキンソン氏は2025年6月13日、自身のYouTubeライブ配信で、財務基金から1億ドル(約144億円)相当のADAをビットコイン(BTC)とカルダノのステーブルコインに交換する提案を行いました。
同氏は、カルダノの分散型金融(DeFi)エコシステム成長を目的とした上で、ADAの一部をカルダノ上のステーブルコイン(USDMやUSDAなど)およびビットコインに転換し、ビットコインを活用したDeFiを活性化させる考えを示しています。
また、1億ドル規模のADA売却が市場に与える影響について懸念する声に対して、ADAは十分な取引量があり、この程度の売却では「市場に大きな影響はない」と述べました。
ビットコインをカルダノDeFiで活用可能に
「DeFi拡大へ」ホスキンソン氏が語る資金活用案
TVL比率で浮き彫りになるカルダノの課題
ホスキンソン氏は今回のライブ配信で、提案の具体的な目的やその根拠について詳細に言及しました。
同氏は、カルダノのDeFi分野でステーブルコインが総ロック価値(TVL)に占める割合が約10%と低いことを問題視しており、この比率を30〜40%まで引き上げたいと説明しています。
実際、分散型金融分析サイトDefiLlamaのデータによると、カルダノ上のTVL(総預かり資産)は約3億5,600万ドル(約513億円)であるのに対し、オンチェーンで発行されたステーブルコインは約3,100万ドル(約45億円)と比較的少ない状況です。
これは他の主要ブロックチェーンと比較して低い水準です。例えばソラナ(SOL)では、TVLが約98億ドルに対しオンチェーン発行のステーブルコインは約125億ドルとなっており、ステーブルコインの供給が活発に行われています。
DeFi発展の鍵は「安定資産」
ホスキンソン氏は、カルダノにおける「ステーブルコイン不足」がDeFi発展の妨げになっていると強調し「カルダノを苦しめているのはステーブルコインの現状だ。これはそれを解決し始めるだろう」とX(旧Twitter)で指摘しています。
The markets are deep. We could convert 140 million ada over a week or so without moving the market using OTCs and TWAPs. It's a false narrative.
What is killing Cardano is our stablecoin situation. This would start to solve it. Generate some non-inflationary revenue for the… pic.twitter.com/vSXetbK9sv
— Charles Hoskinson (@IOHK_Charles) June 12, 2025
(前略)本当にCardanoにとって問題なのは、ステーブルコインの状況です。これを改善することが、状況を変える第一歩になります。
インフレを伴わない形でトレジャリーに収益をもたらし、DeFi経済の発展にもつながるでしょう。
さらに、この取り組みがカルダノの財務に「非インフレ型の収益」をもたらし、カルダノのDeFi経済圏の発展につながるとの見解も示しました。
こうした同氏の姿勢は「TVL(総預かり資産)は採用の主要な指標ではない」とするカルダノ財団のフレデリック・グレガードCEOの従来の見解と対照的であり、カルダノ内部でもDeFi指標の重要性に対する認識の違いが浮き彫りとなっています。
ADAを「UnrealEngine」に統合?
ADA売却の影響と実現の可能性
なお、カルダノのトレジャリーには現在約17億ADA(10.7億ドル/1,540億円相当)が蓄えられているとされ、ホスキンソン氏はその5〜10%にあたる資金を安定資産(ビットコインやステーブルコイン)に振り向けても市場への影響は限定的だと述べています。
実際「ADAは日常的に数億ドル規模の取引があり、30〜90日の期間で相対取引(OTC)や時間加重平均価格(TWAP)を使って段階的に売却すれば、1億ドル規模の取引でも市場価格への影響は抑えられる」と具体的な試算を示しつつ、市場流動性の十分さを強調しました。
ホスキンソン氏はこの提案について、今後コミュニティで正式な議論を行う意向も示しており、8月開催のカルダノ関連イベント「Rare Evo」で議題に上る可能性に言及しています。
年内にも実現に向けた動きが出る可能性はありますが、実施にはコミュニティの合意と正式なガバナンス手続きが必要であり、提案は現段階ではあくまで構想レベルにとどまっています。
「Midnight」のエアドロップ計画
カルダノコミュニティに賛否広がる
ホスキンソン氏の大胆な提案に対して、カルダノコミュニティ内では賛否を巡る活発な議論が巻き起こっています。
提案が行われた翌日14日には、ADA価格が一時的に前日比6%下落し、約0.68ドルから0.625ドル付近まで急落する場面も見られました。
市場の不安定さに加え、ADA大量売却への懸念が投資家心理に影響し、価格下落につながったと指摘されています。
ADA価格下落リスクに対する懸念
カルダノの支持者の中には、この提案に懐疑的な見方を示す者もおり、ある有力コミュニティメンバーは「現在の市場状況で1億ドル規模のADA売却を行えばフロントラン(先回り売却)が発生し、価格下落を招く可能性が高い」と警鐘を鳴らしました。
さらに、売却計画が公開されることでトレーダーに察知され、0.70ドルでの売却を予定していても、事前に大量売りが発生し0.50ドルでの売却を余儀なくされる恐れがあると指摘し、代替案としてADAを直接売却する代わりに、ADA担保型ステーブルコイン(例:ObyUSD)を発行して流動性を確保する方法を示しています。
ホスキンソン氏が反論「売却リスクは誤解」
こうした批判に対し、ホスキンソン氏は自身のX(旧Twitter)上で「売却による下落リスクは誤った見解だ」と強く反論しました。
同氏は、提案している約1億ドル相当のADA売却は市場に急激な売り圧力を与えるものではなく、複数月にわたり店頭取引やアルゴリズム注文を駆使して段階的に実施すれば問題ないと主張しています。
さらに「カルダノのエコシステム発展を阻害しているのは安定資産(ステーブルコイン)の不足であり、この施策はそれを解決に導く第一歩になる」と述べ、長期的な視点で見れば今回の資金再配分がカルダノのDeFi基盤強化につながると強調しました。
次世代ブラウザ「Brave」カルダノ統合へ
カルダノのDeFi戦略が本格化
コミュニティ内の議論は現在も継続しており、短期的なADA価格への影響リスクと長期的なエコシステム成長の両面から、本提案の是非が活発に討論されています。
今回提案されたADA資金の再配置案と併せて、カルダノはビットコインおよびステーブルコインの分野で攻勢を強めており、エコシステム拡大に向けた積極的な動きが見られます。
提案の実現可能性は、今後のコミュニティ合意や市場動向に委ねられるものの、カルダノ陣営がDeFi分野の基盤強化に本格的に取り組む姿勢を明確にしています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=144.14 円)
カルダノ関連の注目記事はこちら
Source:チャールズ・ホスキンソン氏YouTube
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用





























