米OCCに約5年ぶりの長官誕生
米国上院は2025年7月10日、仮想通貨関連企業で法務責任者を務めた経歴を持つジョナサン・グールド氏を、米通貨監督庁(OCC)の新たな長官として承認したことを発表しました。
同氏は2018年から2021年にかけてOCCで主席法律顧問を務めた金融法務の専門家であり、仮想通貨企業Bitfuryで法務責任者を務めた異色の経歴を持ちます。
グールド氏の就任は、2020年5月にジョセフ・オッティング氏が退任して以来、約5年ぶりのOCC長官任命となり、長期間空席だったOCCの長官職がようやく埋まることになりました。
グールド氏の起用は、トランプ政権下で進む銀行規制緩和路線と仮想通貨産業推進の流れを加速させるものとみられています。
全米銀行家協会(ABA)のロブ・ニコルズCEOは声明で「今後、強靭で健全な銀行システムを促進する合理的な規制枠組みの推進など、様々な重要課題でグールド新長官と協働できることを楽しみにしている」と述べています。
トランプ氏の仮想通貨政策「70%以上が支持」
グールド氏のOCC長官就任で規制緩和加速か
OCC(通貨監督庁)は、米財務省の管轄下で全国の銀行を監督する連邦機関です。金融システムの監督を担う同機関の長官は、伝統的な銀行業界だけでなく、仮想通貨など新興金融領域に対しても大きな影響力を持っています。
近年、OCCの方針が仮想通貨産業の制度整備やサービス提供体制に直接関わるケースが増えており、業界関係者の関心が高まっています。
バイデン前政権によるチョークポイント政策の撤回
バイデン前政権では、仮想通貨企業に対する銀行サービスの提供を間接的に制限する「オペレーション・チョークポイント2.0」と呼ばれる施策が進められていました。
この政策は、仮想通貨業界に対する金融アクセスを狭める動きとして批判を集めていましたが、2025年にトランプ大統領が政権に復帰すると「行き過ぎた規制」として見直しの対象となりました。
その後、2025年3月7日付で、仮想通貨関連業務を行う銀行に対して事前承認を求めていたガイダンスを正式に撤回しています。OCCは適切なリスク管理体制を条件としたうえで、一定の仮想通貨ビジネスを容認する姿勢を明らかにしました。
こうした一連の流れの中で正式に任命されたグールド新長官には、銀行と仮想通貨業界の橋渡し役として、より柔軟な規制整備を進めることが期待されています。
新長官の金融改革実績と期待される役割
グールド氏自身、前回のOCC在職中にはフィンテックやデジタル資産企業への新たな銀行免許(チャーター)の創設などの改革にも携わった実績があり、仮想通貨企業が従来の銀行制度に参入しやすくなる道を模索してきたとされる人物です。
そのため業界内では、グールド新長官の就任によって規制の明確化や銀行との連携強化がさらに進展し、仮想通貨関連ビジネスの拡大につながるとの見方が広がっています。
実際、OCCはブライアン・ブルックス元長官代行の指揮の下で2020年に、業界に理解を示す政策として、連邦銀行による仮想通貨のカストディサービス提供やステーブルコインの準備金保有を正式に認めた経緯があります。
グールド氏の就任により、これまで停滞していた仮想通貨業界への支援施策が再び動き出す可能性があると見られています。
上院金融委員会前委員長のマイク・クレイポ議員は「グールド氏の豊富な経歴とOCCでの実務経験により、銀行システムの安全性と健全性を確保しつつ、公正な金融サービスの提供を進めていける」と評価しています。
「仮想通貨ブローカー規則」撤回を可決
仮想通貨規制を巡る米国の動き
米国ではグールド氏の承認と時期を同じくして、仮想通貨規制に関する制度整備も進展を見せています。
「仮想通貨週間」で審議される3法案
6月17日、米ドル連動型ステーブルコインの発行者に対して連邦レベルの包括的規制を導入する「GENIUS法案」が、上院本会議にて賛成68票・反対30票の超党派支持により可決されました。
GENIUS法案は下院での審議・採決を経て正式成立を目指す運びで、下院共和党は7月14日の週を「仮想通貨週間(Crypto Week)」と定め、主要な仮想通貨関連法案3本をまとめて審議する方針を示しています。
審議予定の法案はステーブルコイン規制法案のほか、仮想通貨市場の構造を明確化するCLARITY法案や中央銀行デジタル通貨(CBDC)を禁止する法案であり、下院議長のマイク・ジョンソン氏も「画期的な3法案の迅速な成立に期待する」とコメントしています。
下院では、夏季休会に入る7月下旬までの法案可決が目標とされており、可決されれば大統領の署名を経て正式に法律として発効される見込みです。
トランプ政権が後押しする規制改革
今回の法案可決や長官人事は、米国を仮想通貨分野で主導的な立場に押し上げようとする政権の政策方針を反映した動きと見られています。
規制当局の姿勢も変化を見せ始めており、2025年7月9日には、米証券取引委員会(SEC)のヘスター・パース委員が「トークン化された有価証券も引き続き証券に該当する」との見解を示しました。
この声明は、仮想通貨やブロックチェーン技術を活用した新たな金融商品の拡大に対応し、SECが既存の証券法の適用を継続する方針を示したものと受け止められています。
今後は、議会での関連法案の審議状況や、グールド新長官のもとで打ち出される規制ガイダンスが市場に与える影響に対し、業界関係者の注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=146.47 円)
仮想通貨法案関連の注目記事はこちら
Source:米上院公式サイト
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用





























