この記事の要点
- ベトナムがブロックチェーン基盤「NDAChain」を導入
- 2030年までに先進国を目指す国家戦略を推進
- 行政や金融など幅広い分野で活用を予定
- 早くて安全なネットワーク設計を採用
- ID確認や偽造防止にも活用できる仕組み
ベトナム政府、国家ブロックチェーン導入
ベトナム政府は2025年7月25日、国家基盤としてブロックチェーン技術を活用する新プラットフォーム「NDAChain」の導入を公表し、国家データ管理の透明性と信頼性を高める方針を示しました。
NDAChainは、中央集権型のデータ構造に内在する脆弱性を克服し、改ざんリスクを抑制する仕組みによって、国民データの透明性と信頼性の向上を図る設計となっています。
ベトナム政府系のメディアの報道によると、同プラットフォームは電子政府や金融・医療・物流・教育など幅広い分野における重要データの検証レイヤーとして機能し、国家データの真正性を担保する役割を果たすと伝えられています。
NDAChainは許可型(プライベート)ブロックチェーンとして構築されており、政府機関や国内の大手企業を含む49の検証ノードによって運用されています。
2025年末までに国家データセンターへの統合が予定されており、2026年以降は地方政府や大学へ段階的に展開される見通しです。
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ベトナム政府が進める国家ブロックチェーン戦略
国家主導で開発された戦略的技術「NDAChain」
NDAChainは、国家戦略の一環として開発されたブロックチェーン技術で、ベトナム国家データ協会(National Data Association)が主導しています。2025年3月にファム・ミン・チン首相が発出した通知第171号に基づき、国家デジタル戦略に組み込まれました。
また、2024年10月に制定された政府決定第1236号「国家ブロックチェーン戦略」では、2030年までにベトナムを地域のブロックチェーン先進国とする方針が明記されています。
この戦略には、20社を超える国内の有力ブロックチェーン企業の育成支援や、主要都市におけるテストセンターの設立計画が含まれています。現在、国家主導での制度的・技術的環境の整備が進行中です。
三層構成で構築された国家基盤の仕組み
人口が1億人を超えるベトナムでは、行政や金融、医療などの各分野で大量のデータが日常的に取り扱われており、安全かつ透明性の高いデータ管理基盤の確立が急務となっています。
これまでの中央集権型データ管理には、単一障害点(シングルポイント)や改ざんリスクといった構造的な課題が存在しており、これらを解消する技術としてブロックチェーン技術への注目が高まっていました。
NDAChainは三層構造で設計されており、レイヤー1に該当するプラットフォーム層がブロックチェーンの基盤を形成しています。レイヤー2(システム層)には、分散ID「NDA DID」や製品追跡サービス「NDA Trace」といった国家サービスが組み込まれています。
レイヤー3では、電子政府関連のサービスや金融アプリケーションなど、各分野に特化したソリューションが展開されています。これにより、NDAChainはベトナム全体のデジタル社会を支える土台としての役割を果たしています。
NDAChainは公安省傘下の国家データセンターが運用を担い、政府と民間のハイブリッド型アーキテクチャによって構築されたベトナム初の国家ブロックチェーン基盤となります。
高速処理と耐改ざん性を備えたネットワーク設計
NDAChainは許可型(プライベート)ブロックチェーンとして設計されており、公安省や国家データセンターのほか、Masan、VNVC、SunGroupなど複数の国内主要企業がバリデータとしてネットワークに参加しています。
NDAChainでは、承認者証明(PoA)を採用したコンセンサスアルゴリズムにより、高速かつエネルギー効率の高いブロック検証が実現されています。さらに、ゼロ知識証明(ZKP)を用いることで、元データを開示せずに正当性を確認する仕組みも構築されています。
また同プラットフォームは、W3Cの分散ID(DID)標準や検証可能証明書(VC)、さらにはGDPRにも準拠しており、他国のデジタル基盤と相互運用可能な構造を備えています。
ネットワーク性能は最大3,600件/秒の取引処理能力を持ち、平均1.5秒での処理が可能とされており、官民の高度なデジタルニーズにも対応できる仕様です。
NDAChainの主なユースケースと応用事例
NDAChainは不変性とリアルタイムのトレーサビリティを備えており、行政手続きだけでなく、食品・医薬品・ヘルスケア分野などにおける偽造対策にも活用されることが期待されています。
国家プラットフォームには、分散型ID「NDA DID」や製品真贋証明機能「NDA Trace」が実装されており、個人認証精度や製品トレーサビリティの向上に貢献する構成です。
NDA DIDは、モバイルアプリ「NDAKey」を通じて相手のID情報を数秒以内に確認できる仕組みで、電子契約や取引時の本人確認強化に活用されています。
一方、NDA TraceはGS1規格に準拠したユニークID(UID)を活用して製品単位の追跡を可能にしています。さらに、EUのEBSIとの互換性を備えることで、国際的な信頼性も高めています。
ベトナムが描く国家ブロックチェーンの未来像
今後のロードマップでは、2025年末までにNDAChainを国家データセンターへ完全統合し、2026年からは地方自治体や大学機関へ段階的に展開される見込みです。
あわせて、レイヤー2を活用したアプリケーションの開発や、デジタルIDウォレット、偽造防止、電子登記など多様な分野への応用が計画されています。
ベトナム政府は、NDAChainをオープンアーキテクチャとして設計し、国内のスタートアップ企業やIT事業者による活用を後押ししています。この構想により、同基盤は国家の技術インフラであると同時に、新たなビジネス創出の土台として期待されています。
国家データ革新センターの関係者は「NDAChainはベトナムにおけるデジタル化、国際的な統合、そして持続可能な発展への意志を象徴する基盤だ」との見解を示しました。
2030年までにアジア全域のリーダーへ
ベトナム、仮想通貨を法的に位置づけへ
仮想通貨を合法化する新法が正式可決
近年、ベトナムは仮想通貨の普及率が世界的にも高い水準にあり、年間取引額は1,000億ドル(約14兆7,580億円)を超えるとの推計もあります。
こうした状況を背景に、2025年6月14日にベトナム国会で「デジタル技術産業法」が可決され、仮想通貨やトークン化資産を初めて法的に認めることが正式に可決されました。
この法律では、仮想通貨およびデジタル資産の定義や分類が明確化され、これまで不透明だった国内市場に対して初めて包括的な法的枠組みが整備される見通しです。
同法は2026年1月1日に施行される予定で、仮想通貨の法的位置づけが明確となることで、国内外の事業環境や投資判断に対しても大きな影響を与えるとみられています。
チン首相は、2025年7月中旬までにデジタル資産取引市場の試験運用に向けた政令案を策定するよう各省庁に指示を出しており、政策的な動きも本格化の兆しを見せています。
この法整備により、仮想通貨取引の合法的な枠組みや実務インフラの整備が加速し、国際的な投資家からの関心も一段と高まるとみられています。
Binanceがベトナムで教育支援を発表
民間セクターの動きも活発化しており、最大手仮想通貨取引所Binance(バイナンス)は2025年7月下旬に2025年7月下旬に「Blockchain for Vietnam」と題した2年間の支援プログラムを発表しました。
バイナンスはこの取り組みに対して100万ドル(約1億4,800万円)を投じると明らかにし、教育支援やユースケース開発の促進を通じてベトナムをブロックチェーン革新の中心地に位置づける狙いを示しました。
バイナンスCEOであるリチャード・テン氏は「ベトナムには若く優秀なIT人材が多く、仮想通貨市場としても大きな成長ポテンシャルがある」との見解を示しています。
さらに同氏は、デジタル資産に関する規制整備が進むことで、新たな投資機会が生まれ、特に若年層にとって魅力ある市場へと成長していくとの見方を示しました。
ベトナム協会「VBA」が仮想通貨支援を強化
国家戦略に歩調を合わせる形でベトナムの業界団体も動きを強めています。2025年7月25日には、ベトナム・ブロックチェーン協会が「ベトナム・ブロックチェーン・デジタル資産協会(VBA)」へと名称変更を行いました。
この名称変更は、ブロックチェーンと仮想通貨分野における包括的なエコシステム構築と、関連業界全体の発展を目的としたもので、国家戦略との連携強化も図られています。
こうした動きは、法制度・行政支援・民間投資・業界団体による支援が相互に補完し合う構造を示しており、ベトナムの仮想通貨環境整備が本格化していることを示唆しています。
ブロックチェーンと仮想通貨の制度整備が進む中、ベトナムはASEAN地域におけるデジタル経済の中核国としての地位を確立しつつあります。
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Source:ベトナム政府系メディア「SGGP」報道
サムネイル:AIによる生成画像



























