ベトナム、仮想通貨を正式に合法化
ベトナムの国会は2025年6月14日、仮想通貨(暗号資産)の法的枠組みを定める「デジタル技術産業法」を可決しました。
この法案は仮想通貨や関連デジタル資産の定義・分類を定めるもので、ベトナムで仮想通貨を含むデジタル資産が法的に認められる初の事例となります。
現地メディア「The Investor」の報道によると、同法では仮想通貨を「暗号(Encryption)などのデジタル技術を用いて作成・移転されるデジタル資産」と定義し、政府機関による詳細な分類や事業条件の策定が義務付けています。
今回の法制化により、これまで明確な法的位置づけがなかったベトナム国内の仮想通貨が、法的な管理・規制の対象となりました。
同法は2026年1月1日から施行される予定で、今後具体的なガイドラインや施行細則が策定される見通しとなっています。
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「デジタル技術産業法」が定めるベトナムの仮想通貨規制
今回承認された「デジタル技術産業法」は、その名のとおりデジタル技術産業全般の振興と規制を目的とした包括的な法律です。
仮想通貨含む資産を2分類で定義
同法ではデジタル資産を「仮想資産」と「仮想通貨」の2種類に分類しており、それぞれの定義を明確化しています。
仮想資産とは証券や法定通貨のデジタル表現など既存の金融商品を除外した、交換や投資に用いられるデジタル資産です。一方の仮想通貨は暗号技術を用いて取引や所有証明を行うデジタル資産と定義されています。
いずれも既存の証券・通貨・金融商品は含まれないと明記されており、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨やトークン類がこれらに該当すると伝えらています。
AML対策とグレーリスト対応強化
政府がデジタル資産の種類や事業条件、管理方法を詳細に規定する責務があることも盛り込まれています。
さらに、所管当局に対してサイバーセキュリティの確保やマネーロンダリング・テロ資金対策(AML/CFT)などを徹底する措置を講じるよう義務付けています。
これは国際的な基準に沿った規制を整備するためであり、現在ベトナムは、FATF(金融活動作業部会)からマネーロンダリング対策の改善を求められ「改善措置リスト(グレーリスト)」に指定されており、今回の法整備はこの状況を改善するための対応でもあります。
今回の法整備によって国際基準に沿ったルールが構築されれば、ベトナムが同リストから除外される可能性も示唆されています。
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ベトナムの仮想通貨利用状況と法整備の背景
仮想通貨の利用拡大と規制の空白を埋める法整備
ベトナムはブロックチェーン分析企業Chainalysis社による「グローバル仮想通貨採用指数」で2021年と2022年に世界1位を記録するなど、個人による仮想通貨の利用が特に盛んな国として知られています。
一方で、これまでベトナムには仮想通貨を明確に定義・規制する法的枠組みが存在せず、利用者や事業者は不確実な環境下で活動を続けてきました。
しかし、今回の法案成立により、国内で仮想通貨関連事業を展開する企業も明確なルールの下での運営が可能となります。
国家主導で推進するデジタル技術政策
法律策定を主導した科学技術省は「本法はデジタル技術産業の基盤となるもの」と位置付けており、仮想通貨市場の健全な発展のみならず、デジタル経済全体の推進を目指す狙いがあります。
法律にはデジタル技術企業への優遇策や革新的技術の実証実験(サンドボックス)の推進、人材育成支援などが盛り込まれており、仮想通貨に限らずAI・半導体・データセンターなど先端分野を幅広く支援する内容となっています。
国会科学・技術・環境委員会のレ・クアン・フイ委員長は、「今回の法律はベトナムの半導体産業を包括的に育成し、グローバルサプライチェーンにおいて重要な役割を果たす」と述べ、アジアのテクノロジーハブを目指す国家戦略への期待を示しました。
アジアで仮想通貨事業を本格化
アジア各国で進む仮想通貨規制の整備
ベトナム以外の国々でも近年、仮想通貨に関する法規制整備が相次いで進められています。
香港:仮想通貨ライセンスを法制化
香港は2023年6月に仮想通貨取引所向けの新たなライセンス制度を施行し、適切な投資者保護策を条件に個人投資家による仮想通貨取引を解禁しました。
さらに2025年5月には香港立法会(議会)がステーブルコイン発行者のライセンス制を定めた条例案を可決しており、香港金融管理局(HKMA)の許可なしに香港ドル建てステーブルコインを発行することを禁じる規制が導入されます。
同法案について香港政府は「同一活動・同一リスク・同一規制」の原則に基づき健全な市場環境を整備するものだと説明しており、デジタル資産ハブとしての競争力強化につながる土台になると強調しています。
韓国:仮想通貨規制で保護と成長を両立へ
韓国では仮想通貨の投資家保護に向けた法整備が進み、2023年7月に「仮想資産利用者保護法」が成立しました。
この法律はテラ(LUNA)崩壊事件やFTX破綻事件を契機に準備されたもので、仮想通貨事業者に対する財務要件や不公正取引の禁止、投資家保護措置の義務化などを定めています。
2024年7月の施行に向けて細則の整備が進んでおり、韓国当局は「投資家保護と技術革新のバランスを取った規制」を目指す方針です。
また韓国では2025年6月、新政権が企業によるステーブルコイン発行を認める包括法案を国会に提出するなど、民間企業のデジタル資産活用を促進する動きも見られます。
中東UAE:仮想通貨規制を国家戦略に
中東のアラブ首長国連邦(UAE)もまた、明確で透明性の高い規制環境の整備で知られています。
ドバイでは既に仮想資産規制当局(VARA)が設立されライセンス発行を行っていますが、連邦政府レベルでも2023年に仮想通貨に関する包括的な規制を導入しました。
さらに2024年12月には、UAE中央銀行が初のディルハム連動型ステーブルコイン「AEコイン」を承認・発行するなど、国家を挙げて仮想通貨ハブを目指す戦略が進展しています。
東南アジア諸国の法整備にも波及効果
このように米国以外の各国・地域でも、仮想通貨を巡る法整備が加速しています。
それぞれアプローチは異なるものの、投資家保護と産業育成の両立を図る点で共通しており、国際社会全体で健全なデジタル資産市場を構築しようとする潮流が鮮明になっています。
今回のベトナムの仮想通貨合法化は、アジア太平洋地域におけるデジタル資産市場の発展に大きな影響を与えると予想され、他の東南アジア諸国の法整備にも波及効果をもたらす可能性があります。
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Source:The Investor報道
サムネイル:AIによる生成画像





























