ハーバード大学基金、IBITを第5位資産に組入れ
2025年8月8日、米ハーバード大学の基金運用会社「ハーバード・マネジメント・カンパニー(HMC)」が、BlackRock社の現物型ビットコインETF「iShares Bitcoin Trust(IBIT)」を約190万株(1.2億ドル/172億円相当)保有していることが明らかになりました。
同社がSEC(米国証券取引委員会)に提出した報告書によれば、HMCのポートフォリオ内でビットコインETFは第5位の大口保有資産となっています。
同報告書によると、ハーバード基金はマイクロソフト株を約3.1億ドル(約458億円)保有しており、最も比重が高い資産となっています。次いでAmazon株が約2.3億ドル(約340億円)、旅行会社Booking Holdings株が約1.8億ドル(約267億円)、Meta株が約1.2億ドル(約177億円)と続いています。
ハーバード大学の基金総額は2024年6月時点で約532億ドル(約7.8兆円)に達し、全米の大学で最大規模とされています。今回のビットコインETF投資は、その中でも米大学基金としては過去最大級の仮想通貨エクスポージャー(投資規模・比率)の一例と報じられました。
伝統的な資産運用を行う大学基金が、規制当局に承認された現物型ビットコインETFをポートフォリオに組み入れたことは、市場における機関投資家の仮想通貨(暗号資産)採用が拡大していることを示す事例とみられています。
米名門大がETFでビットコイン投資
ハーバード大学基金に占めるビットコインETF比率
ビットコインETFが資産の約8%に
HMCの2025年6月末時点の公開保有ポートフォリオは、米国株式など合計約14億ドル(約2,070億円)で構成されており、そのうちビットコインETFが約8%を占めています。
報告書に基づく計算では、ハーバード基金のIBIT保有株数は約190.6万株で、評価額は1億1,666万ドルに上ります。
これは同四半期時点でハーバード基金が保有する米上場株式の中で5番目に大きな評価額であり、ハイテク株に次いでビットコインETFが上位の組入れ資産となりました。
さらに、金ETF「SPDR Gold Shares」の評価額(約1億250万ドル/約148億円)を上回り、ビットコイン(BTC)へのエクスポージャーがより大きくなったことも明らかになりました。
ETFアナリストが指摘する大学基金の参入
この開示を受け、ブルームバーグのシニアETFアナリストであるエリック・バルチュナス氏は自身のX(Twitter)で「ハーバードとブラウン大学がIBITを購入した。ハーバードは約1億2,000万ドルとかなり大きく、同ETFの全保有者1,300件中29番目の大口だ」とコメントしています。
COLLEGE: Harvard and Brown have bought $IBIT. Harvard is pretty sizable too, the 29th biggest holder out 1,300 holders. IMO Endowments are the hardest institution to hook, they rarely bite on ETFs.. h/t @TheBlock__ pic.twitter.com/M0LgfdRvnj
— Eric Balchunas (@EricBalchunas) August 8, 2025
ハーバード大学とブラウン大学がIBITを購入しています。特にハーバードはかなりの規模で、全1,300の保有者の中で29番目に大きな保有者です。
私見ですが、大学の基金は最も取り込みが難しい投資機関で、ETFにはなかなか手を出さないことが多いです。
実際、ハーバード大学基金は2018年頃から仮想通貨分野の調査や試験的な投資を進めており、当時は仮想通貨ファンドへの出資など、間接的なエクスポージャー(投資規模・比率)に限定していました。
2019年の公開情報では、ハーバードやイェール大学など複数の大学基金が仮想通貨ファンドに巨額の投資を行っていたことが示されており、ハーバード基金も2021年頃には取引所を通じてビットコイン現物を購入していたとの報道もあります。
今回のIBIT大量保有は、こうした探索段階を経て、ハーバード基金がビットコインをポートフォリオの一部として本格的に組み入れたことを示しています。
米財団・大学が仮想通貨市場へ参入
米国大学基金で進むビットコインETF採用
ブラウン大学、ビットコインETF保有額を拡大
今回のハーバード大学基金のビットコインETF投資は、米国の教育機関で仮想通貨の採用が拡大する流れの中で報じられました。
SECへの提出資料によれば、アイビーリーグのブラウン大学も2025年第2四半期(4〜6月)時点でBlackRockのビットコインETFを約1,300万ドル(約19億円)保有していたことが確認されています。
同大学は2025年5月に初めて約490万ドル(約7億円)のIBIT投資を公表し、第2四半期末までに保有額を約2.6倍へ拡大させました。
このほか、同大学の基金資産規模は約70億ドル(約1兆円)とされ、IBITの投資額は公開株式ポートフォリオ全体の約2%に相当します。
エモリー・オースティン両大学の仮想通貨投資戦略
一方、ジョージア州のエモリー大学は2024年10月、保有資産報告で約1,500万ドル(約21億円)相当のビットコイン投資を初めて公表しました。
同大学は、グレースケール社のビットコイン投資信託(のちにETFへ転換)を通じてビットコインへ投資していたことが確認されています。
さらに、テキサス州のオースティン大学は2024年5月、約500万ドル(約7.5億円)規模のビットコイン基金を創設し長期運用する計画を発表しました。
同大学は、少なくとも5年間は基金資産の一部をビットコインで運用する方針を示しました。教育機関による長期資産としての組み入れ事例として伝えられています。
大学基金が仮想通貨投資を進める背景
米国で複数の大学基金が相次いでビットコインへのエクスポージャーを拡大している背景には、市場環境の変化と規制整備の進展があります。
米仮想通貨ヘッジファンドPantera Capital(パンテラ・キャピタル)のゼネラルパートナーであるフランクリン・ビー氏は「ここ数年で大学基金や財団のデジタル資産への関心は劇的に変化した」と指摘しています。
また、同氏は、5年前には仮想通貨への参加がごく少数に限られていた保守的な機関投資家層が、FOMO(取り残されることへの恐れ)を背景に本格的な参入を検討し始めた可能性があると示唆しました。
実際、ロックフェラー財団CIOのチュン・ライ氏も今年初めに「もし仮想通貨が大きく花開いた時に取り残されたくない」と述べ、仮想通貨への投資検討を明かしています。
こうした発言からも、規制面が整備され、かつ流動性の高い「現物型ビットコインETF」という投資手段を通じて、大学基金の市場参加が一段と広がるとの見方が強まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.82 円)
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Source:SEC提出書類
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