米名門ブラウン大学、ビットコインETFへ490万ドル投資|大学基金に広がるBTC導入の背景
米名門大がETFでビットコイン投資
米アイビーリーグのブラウン大学が、2025年5月2日付でSEC(米国証券取引委員会)に提出した四半期報告書で、ブラックロック社の現物型ビットコインETFに490万ドル(約7.1億円)を投資していたことが明らかになりました。
この報告書には2025年1~3月期の保有資産が記載されており、同大学が「iShares Bitcoin ETF(IBIT)」の株式105,000株(評価額:約491万5,050ドル)を保有していることが記されています。
ブラウン大学がビットコインETFへの直接投資を明らかにしたのは今回が初めてで、投資は2025年第1四半期中(1~3月)の間に行われたとみられます。
今回のブラウン大学による投資は、米国の大学基金としてはエモリー大学、オースティン大学(University of Austin)に続く、3校目のビットコイン投資事例となります。
「取り残されたくない」
ブラウン大学のビットコインETF投資戦略
ブラックロックETF投資急増の背景
ブラウン大学が投資先に選んだブラックロックのIBIT(iShares Bitcoin ETF)は、2024年1月に米国で承認された、ビットコイン現物価格に連動するETF(上場投資信託)の1つです。
SECは2024年1月、10年以上続いた現物ETF否認の方針を転換し、複数のビットコイン現物ETFを一斉に承認しました。ブラックロックのIBITはその後すぐに米ナスダック市場で上場・取引を開始し、機関投資家や個人投資家から次々と資金を集めています。
上場から約5か月後の2024年5月時点で、IBITの運用資産残高は約200億ドル(約2.9兆円)に達し、これまで最大だったグレイスケール・ビットコイン・トラスト(私募信託型)を上回り、世界最大のビットコインファンドとなりました。
さらにその後も資金流入は止まらず、2025年初頭には運用資産残高が500億ドル(約7兆円)を突破したという報告も出ています。
ブラウン大学がビットコインETFを進める意図
こうしたビットコインETF市場の急拡大により、大学基金にとって新たな分散投資の選択肢が広がっています。ブラウン大学も規制が整備されたこの金融商品を通じてビットコイン投資への参入を図る戦略を選んだものとみられます。
ブラウン大学の基金資産は2025年時点で約70億ドル(約1兆円)規模とされ、その運用方針は伝統的に株式や債券、不動産、ヘッジファンドなど多様な資産を組み入れることで知られています。
今回の約491万ドルのビットコインETF投資額は、同四半期に開示された同大学の全持株資産約2億1,600万ドル(約311億円)の約2%強を占めています。全体からすればまだ小さな割合ですが、新たな資産クラスへの試験的参入と見られています。
大学関係者から正式なコメントは出ていないものの、今回の投資背景には、長期的なリスク分散や収益性の追求、そしてビットコイン市場への機関投資家の参入が進んでいることが影響していると見られています。
ブラックロックのラリー・フィンクCEOも年次書簡で「仮想通貨への投資機会を提供するETFは、新たな投資家層を呼び込んでいる」と述べており、ブラウン大学のような伝統的機関投資家にもビットコインETFが浸透し始めていることを示しています。
政府系ファンド職員もBTC投資に関心
教育機関のビットコイン投資が加速
ブラウン大学以外にも、大学基金によるビットコイン投資の事例が次々と報告されています。
エモリー大学のグレイスケールETF投資
ジョージア州にあるエモリー大学は2024年10月、SEC提出書類を通じて約1,500万ドル(約21億5,000万円)相当のビットコイン投資を初めて公表しました。
同大学はグレイスケール社のビットコイン信託(その後現物型ETFに転換)を通じてビットコインに投資しており、大学基金による先駆的なビットコイン投資として大きな注目を集めました。
オースティン大学・UATXが進めるBTC基金設立
テキサス州のオースティン大学(UTオースティン)や、新設校であるオースティン大学(UATX)もビットコイン導入に踏み出しています。
特にUATXは2024年5月、ビットコイン金融企業のアンチェーンド社との提携により、500万ドル(約7.5億円)規模のビットコイン基金を立ち上げました。同大学は基金資産の一部を最低でも5年間、ビットコインで運用する計画を発表しています。
UATXの関係者は「ビットコインを長期戦略の一部に組み入れられることを喜ばしく思う」と語り、ビットコインを株式や不動産と同様の長期保有資産として位置づける姿勢を明らかにしています。
公務員年金基金にもBTC投資を検討
大学基金に広がるBTC投資の狙い
このように大学基金などの教育機関がビットコインをポートフォリオに組み入れる動きが活発化する中、専門家や著名な投資家からも注目する声が上がっています。
ブルームバーグETFアナリストの見解
米ブルームバーグ社のシニアETFアナリストであるエリック・バルチュナス氏は、エモリー大学がビットコイン投資を発表した際「ほぼすべての主要な機関投資家タイプがビットコインETFに投資したことになる」と指摘した上で「とんでもない偉業だ」とコメントしています。
Emory University reported $15.8m worth of $BTC, the first endowment to report a bitcoin ETF position. With that every institution type is now represented in the btc etf 13Fs (endowment, bank, HF, Ins Co, Advisor, Pension, PE, Holding Co, Vc, Trust, Family Office, Brokerage).… ref="https://t.co/eefYpEbXRn">pic.twitter.com/eefYpEbXRn
— Eric Balchunas (@EricBalchunas) October 28, 2024
エモリー大学が1,580万ドル相当のビットコインETF保有を報告し、ビットコインETFを保有する初の大学基金となりました。これにより、ほぼすべての主要な機関投資家がビットコインETFの13F報告に名を連ねたことになります。
誕生から1年も経たないカテゴリーでこの達成は、16歳になる前にテニスの四大大会すべてを制覇するような、とんでもない偉業です。
ヴァンエックのデジタル資産専門家の視点
また、大手資産運用会社ヴァンエックのデジタル資産研究責任者マシュー・シゲル氏はブラウン大学の参入を受けて「ブラウン大学はビットコイン購入を発表した米国の3番目の大学となった」と述べ、大学基金を含む多様な投資家層にビットコインETFが浸透している現状を強調しました。
ロックフェラー財団が示す長期目線
さらに、米ロックフェラー財団のCIO(最高投資責任者)チュン・ライ氏は「仮想通貨市場が今後大きく発展した際に、取り残されるリスクは避けたい」との見解を示し、長期的な視野で仮想通貨を投資先に加える意義を積極的に評価しています。
こうした発言や動きは、ビットコインが機関投資家にとって無視できない資産となりつつある現状を示しています。教育機関によるビットコインの活用が、今後ますます加速すると見られています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=143.97円)
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Source:SEC書簡
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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