ビットコインETFとは?市場への影響や注目される理由などを解説
ビットコイン(BTC)価格と連動するように設計された新たな金融商品として、仮想通貨(暗号資産)業界で現在「ビットコインETF」が注目を集めています。
この記事では、ビットコインETFの基礎知識やメリット・デメリットに加えて、ビットコインETFが仮想通貨市場に与える影響などについて初心者向けにわかりやすく解説します。
ETF(上場投資信託)とは?
ETF(上場投資信託)とは、取引所に上場している投資信託のことを指します。
投資信託とは、複数の投資家から集めた資金をもとに、運用の専門家が投資・運用を行い、それによって得られた成果を投資家に分配する金融商品です。
上場投資信託は日経平均株価などといった特定の指数に連動する仕組みで、REIT(不動産投資信託)・コモディティ(先物)・レバレッジ型(ブル型)・インバース型(ベア型)などの種類があります。
具体的な例を挙げると、日経平均株価に連動するETFの場合は「専門家が投資家から集めた資金で東京証券取引所に上場する代表的な225社の株式に投資を行い、それによって得られた成果を投資家に分配する」といった仕組みとなります。
ETFを利用すれば、複数銘柄にリスクを分散して簡単に投資することが可能で、値動きがわかりやすく保有コストが安いなどの特徴もあります。
ビットコインETFとは?
ビットコインETFとは、ビットコイン(BTC)の価格と連動するように設計された上場投資信託のことを指します。
ビットコイン(BTC)は「仮想通貨(暗号資産)取引所」で取引されるのが一般的ですが、ビットコインETFはETFの一種であるため、株式と同じように証券取引所で売買することができます。
具体的な仕組みは、各ビットコインETFの商品設計によって異なりますが、基本的にはビットコインの現物価格や先物価格に連動するように設計されています。
ビットコイン現物を売買するためには、暗号資産取引所の口座開設が必要で、自分でBTCを管理するためには仮想通貨ウォレットを作成・管理する必要がありますが、ETFの場合は証券取引所で売買でき、ウォレットの用意も必要ないため、ビットコインETFは新たな投資家の参入機会になるとも期待されています。
仮想通貨関連のETFは多数存在し、イーサリアム(ETH)の価格と連動するように設計された「イーサリアムETF」や、複数の仮想通貨を組み合わせた「仮想通貨ETF」なども存在します。
なお、ビットコインETFはすでに「カナダ・バミューダ・ブラジル・ドバイ」などで承認されている事例があり、注目されていた米国でも2024年1月11日に「現物ビットコインETF」が承認されています。
ビットコインと現物ビットコインETFの違い
ビットコイン(BTC)と現物ビットコインETFの大まかな違いをわかりやすくまとめると以下のようになります。
ビットコイン | 現物ビットコインETF | |
定義 | 暗号資産の一種 | BTC価格に連動する投資商品 |
性質 | 分散型 | 企業が発行する中央集権的な商品 |
裏付け | ブロックチェーン上に実在・人々からの信頼 | 現物BTCを保有 |
取引市場 | 暗号資産取引所 | 証券取引所 |
価格 | 直接の需要と供給に基づく | ETFの需要と供給、純資産総額に基づく |
機関投資家へのアクセス | 開かれている | より手軽にアクセス可能 |
リスク | サイバー攻撃・管理の難しさなど | 価格変動や市場変動 |
ビットコインは「中央集権的な管理者が存在しない分散型のデジタル通貨」として評価されており、保有者が自分自身で自己管理することができますが、その一方ではサイバー攻撃などのリスクがあり、自己管理や送金の複雑さなども一部の人々にとって悩みのタネとなっていました。
現物ビットコインETFは「規制当局から承認を得た企業が発行するBTC価格に連動する投資商品」であるため、伝統的な大手証券取引所で手軽に売買することが可能で、機関投資家にとって魅力的な商品となっています。
ただし、現物ビットコインETFは中央集権的な投資商品であり、特定の現物ETFに巨額の資金が投じられた場合には、現物BTCの保有が集中して、BTC自体の流動性がなくなる可能性があるため、一部の専門家からは「現物ビットコインETFのリスク」について警告する意見も出ています。
ビットコインの基礎知識はこちら
現物ETFと先物ETFの違いは?
ビットコインETFを大きく分けると、ビットコインの現物価格に連動する「現物ETF」と、ビットコインの先物価格に連動する「先物ETF」の2種類があります。
現物ETFは、対象となる金融商品の"現物"に投資する上場投資信託のことであり、「現物ETFの価格」と「投資対象となる金融商品の現物価格」が連動するように設計されています。
先物ETFは、対象となる金融商品の"先物"に投資する上場投資信託のことであり、「先物ETFの価格」と「投資対象となる金融商品の先物価格」が連動する連動するように設計されています。
仮想通貨ETF関連の話題で注目を集めている米国では、複数の企業によって「仮想通貨現物ETF」と「仮想通貨先物ETF」の両方が申請されていましたが、最初に仮想通貨先物ETFが承認され後に、仮想通貨現物ETFが承認される形となりました。
現物ETFは現物価格に連動するため比較的扱いやすい商品となっていますが、先物ETFは金利や為替などの要因で値動きが変わる可能性があるため、現物ETFよりも価格変動リスクが高い商品となっています。
しかしビットコイン現物ETFでは、ETFがビットコインを直接保有する仕組みによって「ビットコインの保管とセキュリティに関するリスク」が発生していたため、規制当局からの承認を得るのが難しい状態となっていました。
ビットコインETFのメリット・デメリット
ビットコインETFのメリット・デメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
ビットコインETFのメリット
- 証券取引所で簡単に取引できる
- 仮想通貨ウォレットなどの準備が不要
- 流動性が高く売買しやすい
- 信用取引が可能
- 税金面で負担が減る可能性がある
- 承認されると暗号資産の信用が高まる
- 機関投資家の参入・資金流入が期待できる
- 暗号資産の価格上昇につながる可能性がある
ビットコインETFのデメリット
- 現物保有とは違い、管理手数料がかかる
- 取引できる時間が限られてしまう
- 様々な要因の影響を受ける可能性がある
- 第三者のカストディアンを信頼する必要がある
現物ビットコインETFの仕組み・BTC価格への影響
現物ビットコインETFの運用には投資家保護などの目的から多くのチームや企業が関与しているため、現物ETFが購入されてその裏付けとなる現物BTCが購入されるまでの流れは複雑なものとなっています。
具体的には、ETFの発行・償還を行うことによって需要と供給の均衡を維持する「認定参加者(AP)」が存在し、APが調整を行うことによってETF価格がBTC価格に連動しやすくなる仕組みとなっています。APは市場価格と基準価格を一致させる際にインセンティブを得ることができます。
現物ビットコインETFは「誰かがETFを買ったら、すぐにそれだけの現物BTCが準備される」という仕組みではなく、APが発行体に資金を拠出してETFが発行される際にBTCが調達される仕組みとなっています。
ETFの発行はETFの需要増加などでETF価格がBTC価格から乖離した際に行われるため、ETF価格がBTC価格よりも大幅に上昇していた場合には、新しいETFを発行するためのBTC買いで、現物BTC価格にも影響が出る可能性があると考えられます。
米国で承認された現物ビットコインETFの価格情報は「TradinView」などでも確認できるようになっているため、今後は各種現物ETFの値動きにも注目です。米国で今回承認された現物ビットコインETFのティッカーなどは以下の通りです。
ETF名 | 発行体 | ティッカー | 手数料 | 取引手数料割引 | 取引所 | カストディアン |
Bitwise Bitcoin ETP Trust | Bitwise | BITB | 0.20% | 最初の6ヶ月 &/or 10億ドルまでは0.00% | NYSE | Coinbase |
ARK 21Shares Bitcoin ETF | 21Shares & ARK | ARKB | 0.21% | 最初の6ヶ月 &/or 10億ドルまでは0.00% | CBOE | Coinbase |
Fidelity Wise Origin Bitcoin Trust | Fidelity | FBTC | 0.25% | 2024年7月31日まで0.00% | CBOE | Fidelity |
Wisdomtree Bitcoin Trust | Wisdomtree | BTCW | 0.30% | 最初の6ヶ月 &/or 10億ドルまでは0.00% | СВОЕ | Coinbase |
Invesco Galaxy Bitcoin ETF | Invesco & Galaxy | BTCO | 0.39% | 最初の6ヶ月 &/or 50億ドルまでは0.00% | CBOE | Coinbase |
Valkyrie Bitcoin Fund | Valkyrie | BRRR | 0.49% | 最初の3ヶ月は0.00% | Nasdaq | Coinbase |
iShares Bitcoin Trust | BlackRock | IBIT | 0.25% | 最初の12ヶ月 &/or 50億ドルまでは0.12% | Nasdaq | Coinbase |
VanEck Bitcoin Trust | VanEck | HODL | 0.25% | - | СВОЕ | Gemini |
Franklin Bitcoin ETF | Franklin | EZBC | 0.29% | - | CBOE | Coinbase |
Hashdex Bitcoin ETF Strategy Change | Hashdex | DEFI | 0.90% | NYSE | BitGo | |
Grayscale Bitcoin Trust | Grayscale | GBTC | 1.5% | - | NYSE | Coinbase |
ビットコインETFが注目される理由
ビットコインETFが注目される大きな理由としては「機関投資家の参入」が挙げられます。
ビットコインETFが承認されると、暗号資産取引所の口座や仮想通貨ウォレットを準備することなく、証券取引所を通じて間接的にBTCに投資することができるようになり、ビットコインの信頼性も高まるため、より多くの投資家がBTCに投資するようになり、大規模な資金流入で価格上昇につながると期待されています。
BTCなどの仮想通貨は過去数年間だけでも大幅な価格上昇を記録していますが、実際に仮想通貨に投資している人は世界人口のごく一部であるため、伝統的な金融市場の投資家や機関投資家が仮想通貨市場に参入すれば、仮想通貨の時価総額はさらに高まる可能性があると言われています。
実際に仮想通貨業界の専門家やアナリストの価格予想では、価格上昇を予想する理由として「現物ETF承認による機関投資家の参入」が頻繁に挙げられており、BTC価格予想では10万ドル〜100万ドル(1,500万円〜1億5,000万円)を予想する意見も多数出ています。
米国では2024年1月11日に米国初の現物ビットコインETF上場が承認されました。ビットコインETFに関するニュースはその後も増えているため、今後の続報や新しいニュースにも注目です。
ビットコイン関連の注目記事はこちら