XRP巡る論争再燃、SWIFT幹部の発言がコミュニティで波紋
国際送金ネットワーク「SWIFT」と米フィンテック企業「Ripple(リップル)」の間での対立が新たな局面を迎えています。
SWIFTのCIOであるトム・ツシャック氏が2025年10月4日、自身のX(旧Twitter)で「プライベートトークンをブリッジ通貨と呼ぶのは、FAX機をインターネットと呼ぶようなものだ」と投稿しました。
Calling a private token a “bridge currency” is like using a fax machine and calling it the internet. It mimics the form but not the function.
Fast? Sure. Revolutionary? Only if you’ve never used Wi-Fi.
— Tom Zschach (@TomZschach) October 4, 2025
プライベートトークンを「ブリッジ通貨」と呼ぶのは、FAX機をインターネットと呼ぶようなものです。形は似ていても、機能は全く異なります。
速い?確かに速いでしょう。革命的?Wi-Fiを使ったことがない人に限ります。
ツシャック氏は投稿内で特定の銘柄には言及していませんでしたが、この比喩は仮想通貨エックスアールピー(XRP)を指すものと解釈され、XRPコミュニティから数百件の批判が寄せられました。
また、リップル社の元幹部マット・ハミルトン氏を含む複数の関係者も「XRPは公開型でパーミッションレスなトークンであり、透明性が高いため、銀行主導の閉鎖的なシステムよりも普及に適している」と指摘し、SWIFT側の姿勢に異を唱えています。
XRP主導の金融変革を示唆
銀行ネットワークVSブロックチェーンの新局面
SWIFT幹部の「ファックス機」発言が物議
ツシャック氏の投稿には「速い?確かに。しかし、それを“革命的”と呼べるのは、Wi-Fiを使ったことがない人だけだ」という辛辣なコメントも含まれており、従来の銀行間ネットワークと比較した場合のプライベート型ブリッジ通貨の限界を示唆する内容でした。
同氏の発言はXRPの名指しこそ避けていたものの、リップル社が提供するブリッジ通貨ソリューションを暗に揶揄していると受け止められたため、コミュニティからは「XRPをあたかもリップル社のプライベートトークンであるかのように扱っている」と批判の声が上がりました。
特に「XRPアーミー(XRP支持者層)」と呼ばれるコミュニティから、ツシャック氏の理解不足を指摘する意見があり、同氏が投稿内でAIチャットボット「Grok」にプライベートトークンの定義を尋ねていたことから「SWIFTはこの程度の理解で時代に取り残されつつある」と揶揄する声も上がっています。
XRP支持者がSWIFTを「時代遅れ」と批判
さらに、著名Xユーザーの24HRSCRYPTO氏(@24hrscrypto1)は、ツシャック氏の比喩を逆手に取り「数十年前からあるSWIFTのインフラこそファックス機であり、XRPこそ価値のインターネットだ」と主張しています。
また、アナリストのCrypto Sensei氏は「本当に革新性がない技術なら、なぜSWIFTは長年ブロックチェーンを無視してきたのか」と指摘し、SWIFTが近年デジタル資産の実証実験に乗り出した事実は、ブロックチェーン技術が決済分野で競争力を持つ証拠だと述べています。
XRP really does live rent‑free in your head, doesn’t it? Comparing it to a fax machine in the age of Wi‑Fi is a stretch. But here's a real question — if blockchain wasn’t “revolutionary,” why did SWIFT spend years ignoring it before finally launching pilots? When incumbents…
— CryptoSensei (@Crypt0Senseii) October 4, 2025
「Wi‑Fiの時代にファックス機みたいなもの」と例えるのは少し極端だと思います。ただ、疑問があります。
もしブロックチェーンが「革命的でない」と言うなら、なぜSWIFTは長年無視していたのに、今になって実証実験を始めたのでしょうか?大手がようやく注目するということは、それだけ本物の競争相手が現れたということです。
SWIFT、主要銀行と提携しブロックチェーン構築へ
一方、SWIFT側は今回の投稿に先立ち、イーサリアム開発企業のConsenSys(コンセンシス)やJPモルガン、ドイツ銀行など30以上の主要銀行と連携し、独自のブロックチェーン基盤を構築する計画を発表しており、XRPコミュニティを刺激していました。
この「SWIFT版ブロックチェーン」は、ステーブルコインやトークン化資産にも対応した銀行向けの新たな国際決済インフラになる見通しで、現在プロトタイプ段階にあります。
こうしたSWIFT側の動きに対し、リップル社の元幹部マット・ハミルトン氏はX上の議論で「公開型で誰でも利用できるXRPのようなトークンは、銀行が独自に管理する閉鎖型システムより最終的に広く採用される可能性が高い」と強調しました。
XRP支持者が指摘する「SWIFTの摩擦コスト構造」
さらにXRP支持者からはSWIFTの送金網が抱えるコスト面の問題も指摘されています。
24HRSCRYPTO氏は自身の経験に基づき「国際送金では送金元銀行と受取銀行がそれぞれ17.50ドル(約2,600円)の手数料を課し、資金の所在が不明となった場合は追跡に追加費用が生じる」と指摘しました。
実際には送金開始前に合計35ドル(約5,300円)のコストが発生する計算で、この「摩擦(フリクション)コスト」がSWIFTの収益源になっていると主張しています。
対照的にリップル社のソリューションでは送金手数料は1回あたり1セント未満に抑えられ、決済も数秒で完了します。
こうした比較から、XRP支持者は「SWIFTのビジネスモデルは非効率性に依存している」と批判し、リップル社が目指す低コストで即時決済が今後主流になるとの見方を示しています。
議論は単なる技術論にとどまらず、「中央集権的な既存金融」と「分散型オープン技術」の覇権争いという構図に発展しており、国際送金の将来を巡る応酬が一層激しさを増している状況です。
リップルが挑む「SWIFTの20%」
リップル社戦略転換によるSWIFTの牙城崩しが本格化
リップルがOCCに銀行免許申請、FRB口座開設も視野
今回の「ファックス機」発言は、従来型のSWIFT網と新興のリップル陣営との競争が激化している現状を象徴する出来事です。こうした環境の中で、リップル社は着実に戦略的な布石を打ってきました。
同社のブラッド・ガーリングハウスCEOは7月2日、米通貨監督庁(OCC)に連邦銀行免許を申請したことをXで明らかにしました。
銀行免許が承認されれば、リップル社はFRB(米連邦準備制度)のマスター口座を開設して決済インフラに直接アクセスでき、ステーブルコインの準備金をFRBに預け入れることも可能になります。
また、リップル社は2024年12月に独自米ドル連動型ステーブルコイン「RLUSD」の発行を開始しており、2025年10月時点でRLUSDの時価総額は約8億ドル(約1,200億円)に達するなど、自社エコシステム内で法定通貨と連動したデジタル資産の活用を広げています。
リップル社の成長戦略がXRP価格上昇を牽引
こうした規制対応やプロダクト拡充への取り組みが評価され、暗号資産XRPの市場には将来への期待感が広がりました。
事実、10月5日にはXRPの時価総額が一時約1,834億ドル(約27兆円)に達し、資産運用大手ブラックロックの時価総額(約1,800億ドル)を一時的に上回ったと報じられています。
銀行免許申請に対する投資家の楽観的な見方がXRP価格を押し上げたとの見方があり、専門家は「リップル社の取り組みが承認されればXRPにとって長期的な追い風となる可能性がある」と指摘しています。
こうした取り組みを背景に、国際送金の主導権を巡る競争はテクノロジー面だけでなく規制・制度面でも熾烈さを増しており、リップルとSWIFTによるクロスボーダー決済の覇権争いは新たな段階に入りつつあります。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=150.33 円)
リップル・XRP関連の注目記事はこちら
Source:トム・ツシャック氏X投稿
サムネイル:AIによる生成画像




























