アトキンス委員長「新たな仮想通貨政策を年内開始予定」
2025年10月8日、SEC(米国証券取引委員会)は、年内にも新たな規制緩和策「イノベーション免除」の正式導入に向けたルール制定手続きを開始する方針であることを明らかにしました。
この制度は、仮想通貨(暗号資産)やフィンテック企業が、SECの規制監督下で実験的な事業を展開できるようにする枠組みです。
Coindeskの報道によると、ポール・アトキンス委員長は同日、ニューヨークで開催された法律関連の会合で「過去4年間で仮想通貨業界は抑圧され、イノベーションが海外に流出した」と述べ、同免除により米国内での開発や起業を促進し、海外に流出した技術革新を呼び戻す狙いがあるとしています。
アトキンス氏は「イノベーション免除」構想を最優先課題として掲げており、政府機関の一時閉鎖による影響があるものの、2025年末から2026年初頭までに正式ルール化に向けた手続きを開始できる見通しであることが伝えられています。
同制度の導入により、従来の執行(エンフォースメント)中心の規制姿勢から、明確なルールに基づく建設的な監督体制への転換が図られ、仮想通貨業界の発展と投資家保護の両立が期待されています。
「仮想通貨時代の到来」を宣言
米SECが推進する「イノベーション免除」と規制改革
ブロックチェーン事業を後押しするSECの新たな制度
アトキンス氏が主導する「イノベーション免除」は、規制版サンドボックス(実証実験の場)と位置付けられています。
報道によると、これは同氏が6月にSECスタッフへ提案した「条件付き適用除外枠組み」の一環で、ブロックチェーン上の金融プロジェクトが一時的に監視下で事業を実施できるようにすることを目指す制度です。
アトキンス委員長は「イノベーション免除」により、起業家が米国市場で新規プロジェクトを法的懸念に縛られず開始できるようになると強調しています。
こうした考えの背景には、同氏が繰り返し述べてきた「クリプトは最優先課題(job one)」という信念があり、前政権下で顕著だった「規制による産業抑圧」からの脱却と、米国の技術競争力回復を狙う意図があるとされています。
トランプ政権と歩調を合わせた規制緩和路線
委員長としてアトキンス氏が就任して以降、SECがCoinbase(コインベース)やBinance(バイナンス)に対して提起していた複数の訴訟を取り下げるなど、規制当局の姿勢は事後的な取り締まりから事前のルール整備重視へと大きく転換しつつあります。
また、この方針転換はトランプ政権による仮想通貨支援策とも一致するもので、トランプ大統領は選挙戦で「暗号資産に友好的な大統領」を掲げており、アトキンス委員長の施策はその公約に沿って進められているとみられています。
仮想通貨企業が注視する新制度の実効性
オンチェーン信用市場クリアプール(Clearpool)のヤコブ・クロンビヒラーCEOも、SECの方向転換によって「イノベーションと規制の溝がようやく埋まる」と述べ、イノベーションと投資家保護は両立可能との認識を示しました。
その上で、これまで規制の不透明さからやむなく海外で事業展開していた健全な企業も多いことに触れ「適切に設計された監督下の枠組みが実現すれば責任ある実験へのハードルが下がるだろう」と述べています。
一方で、アトキンス委員長自身は同免除の制度設計について、少なくとも四半期(2026年第1四半期)までには方向性を示したい考えであり、政府予算の問題でSECの活動が制限される状況下でも、この案件を最優先に進めていく姿勢を改めて示しています。
1日で30件超の仮想通貨ETFが申請
SECが描くトークン化証券規制の未来像と市場リスク
近年、ロビンフッドやコインベースなどの企業が株価に連動するトークンを相次いで発行または計画しており、市場活性化への期待が高まっています。
一方で、伝統的な金融機関や専門家からは「投資家保護や市場安定性の観点でリスクがある」と警鐘が鳴らされています。
実際、証券大手のシタデル証券は7月にSEC宛ての書簡で、トークン化が株式市場の流動性を奪う可能性について懸念を表明しました。
こうした状況を踏まえ、アトキンス委員長はトークン化証券の発行企業に対しても、一部証券規則の適用免除を認める方針を示唆しています。
SEC広報担当者はこれらの懸念に関してコメントを控えている一方で、コインベースは投資家保護を従来株式と同等に確保する形でのトークン化株式の提供に向け、SECと協議を進めていると伝えられています。
米国の規制当局は、イノベーション促進と投資家保護の両立という難しい舵取りを迫られている状況です。
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Source:Coindesk報道
サムネイル:AIによる生成画像



























