クオモ氏らを破り、マムダニ氏がNY市長選を制す
2025年11月5日、ニューヨーク市長選挙で民主党所属の州議会議員ゾーラン・マムダニ氏(34)が当選確実となったことをAP通信が報じました。
マムダニ氏は無名の州議会議員から一躍市政トップに上り詰めた民主社会主義者であり、同市では数世代ぶりとなるリベラル色の強い市長になると評されています。
対立候補のアンドリュー・クオモ元ニューヨーク州知事(67)は、民主党予備選で敗れた後に無所属で出馬しましたが、最終的にマムダニ氏がクオモ氏と共和党候補カーティス・スリワ氏を破りました。
マムダニ氏はニューヨーク史上初のイスラム教徒の市長となる見通しで、富裕層への増税や家賃凍結、公共交通の無料化、市営食料品店の開設など、生活費高騰への対策を公約に掲げ、幅広い支持を集めました。
クオモ氏、AI・仮想通貨政策推進を掲げる
仮想通貨業界に広がるNY新市長マムダニ氏への警戒
金融・仮想通貨業界から上がる懸念の声
マムダニ氏の当選はニューヨークのビジネス界や金融・仮想通貨(暗号資産)業界に波紋を広げています。
ウォール街の関係者らは、富裕層増税や法人税の引き上げ、4年間の家賃凍結といったマムダニ氏の掲げる政策が都市の競争力を損なう恐れがあると懸念を示しました。
また、仮想通貨業界からもマムダニ氏の台頭を不安視する声が上がっており、米大手取引所Geminiの共同創業者タイラー・ウィンクルボス氏は、マムダニ氏を支持する若年層をX(旧Twitter)上で「西洋文明の価値を学ばなかった世代だ」と痛烈に批判しています。
さらに、トランプ政権でAI・仮想通貨政策を担当するデイビッド・サックス氏は「民主党はついに共産主義に敗北した」と過激な表現で警鐘を鳴らし、マムダニ氏の台頭が民主党の変質を象徴しているとの見方を示しています。
推進よりも規制、マムダニ氏の仮想通貨観
仮想通貨産業にとって特に注目されるのは、マムダニ氏の仮想通貨に対する姿勢です。
同氏はこれまでエリック・アダムズ現市長やクオモ氏のように業界を支持する明確な発言を行っておらず、その立場は不透明だと指摘されています。
実際にマムダニ氏が仮想通貨に言及した場面はごくわずかであり、その内容も自らの政策方針や対立候補との比較の文脈に限られていました。
例えば2023年にテラ(Terra)やFTXの崩壊を受けてニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズ氏が提案した仮想通貨の投資家保護法案に対し、当時州議会議員だったマムダニ氏は支持を表明しています。
マムダニ氏は「仮想通貨企業が崩壊した場合、痛手を被るのは富裕層ではなく、低所得層や有色人種コミュニティ出身の小口投資家だ」と述べ、業界の無秩序を批判するとともに弱者保護の観点を強調しました。
また今年4月には、クオモ氏が大手仮想通貨取引所OKXのSEC(米証券取引委員会)による調査対応に関与していた事実に言及し、対立候補との姿勢の違いを強調する場面もありました。
こうした発言からは、マムダニ氏が仮想通貨そのものを推進する立場ではなく、どちらかと言えば規制強化や投資家保護に軸足を置いている姿勢がうかがえます。
仮想通貨業界ロビー団体が示すマムダニ氏への不信
業界団体もマムダニ氏の当選を警戒しています。
米仮想通貨・AI業界のロビー団体「Innovate NY PAC」は選挙直前の10月下旬、クオモ氏支持を表明し、デジタル資産振興策を掲げたクオモ氏の方が業界にとって好ましいとの立場を示しました。
同団体はクオモ氏の選挙活動に対しすでに3万ドル(約460万円)を拠出していたと報じられており、仮想通貨業界がマムダニ氏の当選に強い危機感を抱いていたことがうかがえます。
また、米ヘッジファンドマネージャーのビル・アックマン氏をはじめ、著名投資家ダン・ローブ氏ら複数の金融関係者がマムダニ氏阻止を目的とする政治資金団体に多額の寄付を行っており、ニューヨークの投資・テクノロジー分野で警戒感が広がっていました。
仮想通貨投資家として知られるアンソニー・ポンプリアーノ氏は「社会主義者を自任する人物が世界金融の中心地ニューヨークの市長になるとは、もはや『皮肉』という言葉では片付けられない」と指摘しています。
仮想通貨コミュニティにとっても、今回の市長選の結果は象徴的な出来事となりました。
ニューヨーク州議員「真実を公に」
マムダニ市長当選で問われる仮想通貨規制の行方
マムダニ氏のニューヨーク市長当選を受け、同市の仮想通貨業界では今後の規制方針やビジネス環境の行方に対する警戒感が高まっています。
一方、仮想通貨や証券に関する実質的なルール策定は州政府や連邦政府の権限に属し、市独自で取り得る施策には限界があるため、市長が直接仮想通貨市場に与え得る影響は限定的との見方もあります。
実際、ニューヨーク州は2015年に導入したビットライセンス制度によって全米でも最も厳しい業界規制を敷いており、多くの仮想通貨企業は州当局の認可を取得して事業を行うか、あるいはニューヨーク市場そのものを回避する形で対応しています。
現状でも市長が直接介入できる余地は小さく、エネルギー消費の大きいBTCマイニング産業もニューヨーク市内ではほとんど展開されていないと指摘されています。
ただし、新市長の政策や発言次第では、ニューヨークという巨大市場のビジネス環境や規制の方向性に変化が生じる可能性もあるため、今後のニューヨーク市政の行方に注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=153.40 円)
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Source:AP通信報道
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