米OCC、銀行の仮想通貨保有と手数料支払いを容認
OCC(米通貨監督庁)は2025年11月18日、銀行がブロックチェーン利用時に必要となるネットワーク手数料の支払いに伴い、必要最小限の仮想通貨を保有できるとする解釈指針を公表しました。
今回の解釈指針では、銀行がブロックチェーン上の取引実行やデータ記録の際に必要となるネットワーク手数料を支払う行為が、既存の決済・保管関連業務の範囲内で認められることが確認されています。
また、OCCはネットワーク手数料の支払いに必要な量に限り、銀行が仮想通貨(暗号資産)を自己勘定で保有することも許容されると説明しており、業務遂行上の最小限の保有に限定される点を明確化しています。
さらに、銀行がこれらの業務を行う際には、技術リスクやサイバーセキュリティ、オペレーショナルリスクへの対応など、適切なリスク管理体制を整備することが必要だと示されており、監督当局への通知や内部統制の確保も求められています。
これらの指針により、銀行はブロックチェーン関連業務を実施する際のリスク評価やコンプライアンス要件をより明確に把握できるようになり、ネットワーク手数料に関連する実務面の不確実性は一定程度整理されることになりました。
銀行向けの共同ガイダンスを発表
OCC、銀行のブロックチェーン対応を包括的に整理
ブロックチェーン手数料の取扱いを明文化
今回発表された解釈指針では、銀行がブロックチェーン上のネットワーク手数料(ガス代)を支払うこと、およびその支払いに必要な仮想通貨を自己勘定で保有することが明確に許容されています。
OCCは「銀行によるネットワーク手数料の支払いと仮想通貨保有は、それらが銀行に認められた業務を遂行するために必要な場合に限り許容される」としており、あくまで業務上の必要性に基づく場合のみ認める立場を示しています。
具体的には、銀行がブロックチェーン上で決済やカストディなど許容された業務を行う際、その取引に伴うガス代を銀行自身が直接支払うことができます。
例えばイーサリアムのように取引手数料の支払いにネイティブトークン「ETH」が必要なネットワークでは、銀行が必要な仮想通貨を外部の第三者から取得する場合、追加のコストや運用リスクが生じる可能性があります。
OCCは、外部取引所や第三者サービスを利用する場合、追加コストや価格変動による損失、取引遅延などの運用リスクが生じる可能性があると指摘しています。
今回の指針により、銀行は必要なETHをあらかじめ自己保有してネットワーク手数料を支払えるようになり、従来の非効率やリスクを抑えつつ、ブロックチェーン上の取引をより円滑に処理できます。
技術導入に向けた仮想通貨保持の自由化
さらに、解釈指針は銀行がブロックチェーン関連の新システムをテストする際に必要な仮想通貨を保有することも認めています。
例えば、銀行が社内開発中の分散台帳プラットフォームや外部提供のブロックチェーンソリューションを評価・試験運用する際、そのネットワーク上で必要となるトークンを一定量保持してテスト取引を行うことが可能になります。
ネットワーク手数料に関連する取り扱いを明確化
今回発表された解釈指針では「ステーキング」という言葉は使われていないものの、銀行がネットワーク手数料の支払いに関連して仮想通貨を保有する可能性がある点も示されました。
文書中では、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)型ネットワークの一般的な仕組みとして「ステーク」や「検証者(バリデーター)」などの概念が説明されています。
OCCは今回の解釈指針を、あくまでネットワーク手数料支払いに関連する仮想通貨の保有やリスク管理の整理として示しています。
ブロックチェーンは金融インフラの一環に
OCCは、ネットワーク手数料支払いに関連する仮想通貨の保有には、従来の決済ネットワークにおける持分保有や外貨準備と類似点があると説明しています。
同庁は「銀行は顧客決済の効率化や摩擦低減のため、これまでも外貨準備や決済ネットワークの持分を保有してきた」と指摘し、分散型ネットワーク上でネイティブトークンを持つことも同様の性質を持つと強調しました。
OCCは解釈指針の中で、ブロックチェーンを従来の決済システムの延長として位置付けています。
ETFのステーキング報酬分配を承認
銀行のオンチェーン取引を阻む要因と規制変化
米国の一部銀行関係者からは以前より現行規制への懸念が示されていました。
仮想通貨に積極的な姿勢を取る米銀行Custodia Bankのケイトリン・ロングCEOは今年4月、「現行ルールでは銀行は自社でわずかなガス代すら負担できず、そのためオンチェーン取引が失敗するケースもある」と指摘しています。
同氏は、こうした制約が銀行の仮想通貨カストディ業務における大きな障害になっていると痛烈に批判していました。
また、FRB(米連邦準備制度理事会)も仮想通貨に慎重だった過去のガイダンスを撤回しており、規制当局全体として銀行の仮想通貨参入を支援する姿勢が明確となっています。
今回のOCC指針は、銀行の仮想通貨カストディ業務における制約を解消し、銀行業界でのブロックチェーン活用を促進するとともに、パブリックブロックチェーンとの関係を前進させる重要な転換点と評価されています。
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Source:OCC解釈指針
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