金融庁、暗号資産仲介業制度の政令案を公表
金融庁は2025年12月16日、暗号資産(仮想通貨)やステーブルコイン取引の仲介事業者を新たに金融規制の枠組みに組み込む方針を明らかにしました。
この方針に基づき、関連する政令・内閣府令案を公表し、同日よりパブリックコメントの募集を開始しています(意見募集の期限は2026年1月19日正午まで)。
今回公表された改正案では、取引を直接行わない仲介事業者についても登録制を導入し、利用者への説明義務や一定の禁止行為などのルールを課す内容が盛り込まれました。
この制度により、これまで規制の対象外だった事業者も金融庁の監督下に置かれることになります。
金融庁は、今後寄せられた意見を踏まえて制度内容を最終決定し、パブリックコメント終了後に必要な手続きを経て改正法令を公布・施行する見通しです。
暗号資産の「金商法」移行を決定
金融庁が示した暗号資産仲介業制度の新たな枠組み
改正資金決済法で新設された仲介業制度
今回の規制強化は、2025年6月に成立した改正資金決済法(令和7年法律第66号)で創設された新たな制度に基づくものです。
この改正法を受け、暗号資産やステーブルコインの電子決済手段・暗号資産サービス仲介業が制度上新たに規定され、金融庁は具体的な登録要件や業務ルールの整備を進めています。
仲介業者に求められる登録義務と責任範囲
内閣府令案によれば、電子決済手段(主にステーブルコイン)および暗号資産の取引について、登録済みの業者(電子決済手段等取引業者や暗号資産交換業者)から委託を受けて「媒介のみ」を行う事業者が、新たな仲介業の対象として制度化されます。
法令上、これらは総称して「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者」と定義されており、仲介業者として金融庁への登録が必要となります。
同案では、登録申請にあたり、自社の業務内容や提携する取引業者名を明示することが定められており、複数の業者と提携している場合には、利用者に損害が生じた際の賠償責任の所在を明確にすることも求められています。
さらに仲介業者には、利用者へのリスク説明・情報提供義務、利益相反となる行為の禁止、取引記録の作成・保存などのルールが課されることから、暗号資産交換業者と同様に金融庁の監督下に置かれることになります。
媒介のみの事業者も対象とする規制強化
こうした登録義務や監督の枠組みは、暗号資産やステーブルコインの取引を「媒介」するだけの事業者にも及ぶ内容となっており、これまで明確な規制対象ではなかった領域についても、利用者保護の観点から制度上の整理が行われています。
銀行や保険会社およびその子会社等については、新たな仲介業で行える業務範囲も規定されており、暗号資産分野に関与できる業務の範囲が制度上明確化されています。
規制整備の背景にある円建てステーブルコイン
こうした規制整備の背景には、国内でステーブルコインや暗号資産の実用化に向けた動きが進み、具体的な事業計画や金融機関の関与が公表される事例が増えている状況があります。
実際、大手金融グループのSBIホールディングスはブロックチェーン企業Startale Group(スターテイル・グループ)と提携し、2026年度第1四半期にも規制準拠の円建てステーブルコインを発行する計画を明らかにしました。
スターテイル社CEOの渡辺創太氏は「円建てステーブルコインは日常生活の決済だけにとどまらず、世界がオンチェーン化する中で中核的な役割を果たす」と述べています。
金融庁、ステーブルコイン実証実験を支援
金商法移行を見据え暗号資産規制改革を本格化
金融庁の金融審議会ワーキンググループは2025年12月10日、金商法移行を含む暗号資産規制の見直しに関する最終報告書を公表しました。
この報告書では、暗号資産市場における投資者保護の強化を目的として、暗号資産規制を現行の資金決済法から金融商品取引法(金商法)の枠組みに移行し、インサイダー取引の禁止や相場操縦規制などのルールを適用する方針が示されています。
また、規制の枠組み見直しとあわせて、条件付きで銀行や保険会社による暗号資産の保有を解禁するなど、伝統的な金融機関の関与を想定した内容も盛り込まれました。
金融庁は今後、この方針に沿った法改正案を策定し、次期通常国会への提出を目指す見通しです。
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Source:金融庁発表
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