この記事の要点
- ASICフィンテック責任者リース・ボレン博士が論文発表
- 仮想通貨専用の新規規制フレームワークは必ずしも必要ないと提言
- 規制判断は技術ではなく「経済的本質」に基づくべきと主張
- 既存の金融ライセンス体系のもとで仮想通貨事業が展開可能と指摘
「仮想通貨専用規制は不要」ASIC幹部が提言
オーストラリア証券投資委員会(ASIC)のフィンテック担当シニア・エグゼクティブ・リーダーであるリース・ボレン博士は3月11日、メルボルン大学で開催された会議で論文を発表し、仮想通貨専用の新たな規制体系は必ずしも必要ではないとの見解を示しました。
ボレン氏は、ブロックチェーンをはじめとする分散型台帳技術(DLT)は既存の金融インフラにおける新たな技術形態の一つに過ぎないと指摘し、「技術の違いを理由に独自の規制枠組みを設ける必要はない」と主張しています。
この主張が政策に反映されれば、仮想通貨(暗号資産)取引所やサービス事業者は新法の整備を待たず、現行の金融ライセンス体系のもとで事業展開を進められるとしています。
また同氏は、規制の判断基準を技術的な形式ではなく「経済的本質」に置くべきだと主張しており、既存の金融法制を仮想通貨にどこまで適用できるかを巡る国際的な議論とも直結した提言として注目されています。
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仮想通貨規制論争に一石、豪規制当局幹部が歴史的視点を提示
仮想通貨規制を巡る政策議論に論文が異議
ボレン氏の論文は、仮想通貨やステーブルコイン、トークン化された有価証券、DeFi(分散型金融)プラットフォームが「金融サービス法の概念的基盤を覆す前例のない革新」と政策言説のなかで語られてきたことに異議を唱えるものです。
こうした言説が、ブロックチェーン技術向けの専用規制体系を求める声を後押ししてきたと同氏は指摘しています。
論文では、金融システムが担う経済機能として「資本配分」「決済」「リスク管理」の三つを挙げ、これらは技術や制度が変わっても歴史を通じて安定して維持されてきたと説明しています。
その上でボレン氏は、仮想通貨が果たす経済機能は既存の金融活動と本質的に変わらないと論じました。
電子決済やデリバティブと比較する金融革新の歴史
過去の事例として同氏は、電子商取引の台頭、有価証券の非物質化、電子決済の普及、複雑な証券・デリバティブの登場といった局面を提示しています。
いずれのケースでも、規制当局は既存の法的枠組みを廃棄するのではなく、新たな商品・サービスや仲介形態に合わせて拡張・適応させる形で対応してきたと述べました。
ボレン氏はこの歴史的経緯を踏まえ、仮想通貨を”根本的に異なるもの”として扱う傾向は「技術的新規性と経済的新規性を混同する、過去にも繰り返されてきた政策上の誤りに陥るリスクがある」と警告しました。
規制の基本原則として「技術中立性」「機能的規制」「比例原則」の三点を挙げ、これらはデジタル経済においても引き続き有効かつ望ましいとしています。
豪州の規制方針、既存金融法を基盤に対応
論文ではオーストラリアの政策対応についても触れられており、同国は「デジタル資産フレームワーク法案」において専用の新法を制定するのではなく、既存法の修正によって対応する方針をとっていると説明しています。
ボレン氏は、こうしたアプローチが自身の論文で示した「経済的本質」に基づく規制の考え方とも整合していると述べました。
また、仮想通貨の一部の特徴については個別に対応した規制上の措置が正当化される余地があることも認めており、一律の既存法適用を無条件に推奨するものではないと付記しています。
国際的な規制基準の動向やオーストラリア金融サービス法、比較法学上の判例も参照しながら、「継続性こそが例外主義よりも整合的かつ強靭な規制対応をもたらす」と結論づけています。
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仮想通貨企業の豪州進出、既存法で進む事業展開
ボレン氏が論文で示した方向性と並行して、豪州では仮想通貨をめぐる規制対応が実務レベルでも動き出しています。
米Ripple(リップル)社は、オーストラリア金融サービスライセンス(AFSL)の取得に向けた手続きを進めており、同ライセンスの取得により決済サービスおよび機関向けサービスの展開が可能になる見通しです。
同社は新たな法整備を待たず、現行の金融ライセンス体系のもとで事業展開を進める方針を明らかにしています。
今回のボレン氏の論文は学術・政策両面に向けた提言であり、ASICとしての正式な行政見解を示したものではないものの、同委員会のフィンテック担当幹部による発表として、今後の豪州の規制議論に一定の影響を与えるものとして受け止められています。
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Source:発表論文
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