マドラス高裁、仮想通貨を財産と認定
2025年10月26日、インド南部チェンナイのマドラス高等裁判所は、仮想通貨(暗号資産)を「所有・享受・信託が可能な財産」と認定する判決を言い渡しました。
地元メディア「NDTV」によると、N・アナンド・ヴェンカテシュ判事は「仮想通貨は有形財産でも通貨でもないが、所有・享受・信託の対象となり得る財産である」と明言しました。
また、判決では「仮想通貨は所得税法上の『仮想デジタル資産(VDA)』に該当し、投機取引とはみなされない」と指摘しています。
本件は2024年に発生したWazirXハッキングで凍結された約3,530 XRP(9,250ドル/140万円相当)をめぐる訴訟で、裁判所は当該トークンを原告の財産と認定し、凍結解除を命じました。
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インド司法が認めた仮想通貨の財産性
複数国の判例を引用し、仮想通貨を資産と認定
裁判所は財産を「法的に保証・保護される権利の集合体」と定義し、仮想通貨についても、単なるデジタル情報でありながら「所有・移転・保存が可能な資産」に該当すると認定しました。
報道によると、判決ではニュージーランド高裁の事例を参照し、仮想通貨が信託可能な無形財産として扱われている点を指摘しており、さらに英国・シンガポール・米国でも同様の法的解釈が示されているとしています。
チェンナイ投資家によるXRP凍結訴訟がもたらした判決
本件はチェンナイ在住の投資家による訴訟でした。同氏は2024年1月にインドを拠点とする仮想通貨取引所「WazirX」で3,532.30枚のXRPを購入し、価値が上昇していましたが、同年7月のハッキングで口座が凍結されました。
原告は、盗難資産とは無関係に自身が保有するXRPが信託財産として保護されるべきだと主張し、仲裁法第9条に基づく仮差止めを申立てました。
これに対し取引所側は、再編案に基づき損失を分担すべきだと主張しましたが、裁判所は原告のXRP保有分が被害対象に含まれないと判断し、請求を認めました。
裁判所は原告のXRPを個人の財産と認定し、仲裁完了まで銀行保証金956,000ルピー(約164万円)を供託するよう命じています。
専門家は、この判決によって仮想通貨が税務・相続・破産財産の対象として明確に位置づけられたと評価しており、法的保護の対象と認められたことで、投資家保護の観点からも意義があるとみています。
Zoom経由のハッキング被害
インド政府の仮想通貨戦略と今後の課題
インド政府・規制当局は仮想通貨に慎重であり、10月7日にムンバイで開かれた国際フィンテック会議でも、仮想通貨に関する発言を控えるよう講演者に通知したと報じられています。
政府は代わりに、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)や銀行預金のトークン化に注力しており、e-ルピー(デジタル通貨)の活用実験も進められています。
シタラマン財務相は「ステーブルコインの導入に備える必要がある」と呼びかけ、ゴーヤル商務相も「政府保証のない仮想通貨は認めない」と従来の方針を改めて強調しました。
インドではCBDC・ステーブルコイン重視の政策が続く一方で、今回の判決により仮想通貨の所有権が法的に認められたことで、今後は投資家保護や規制の在り方について議論が広がるとみられています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=152.65 円)
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Source:地元メディア「NDTV」報道
サムネイル:AIによる生成画像




























