「仮想通貨×退職年金401(k)」労働組合と業界が衝突|懸念される構造的リスクとは

「仮想通貨×退職年金401(k)」労働組合と業界が衝突|労組が指摘する構造的リスクとは(Cryptocurrency and 401(k) pensions clash: Unions highlight structural risks)
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米退職年金401(k)制度で仮想通貨導入論争が激化

全米教員連盟(AFT)は2025年12月12日、上院銀行委員会に対し、401(k)退職年金口座への仮想通貨導入に反対する書簡を提出しました。

AFTは同書簡の中で「仮想通貨は価格変動が大きく労働者の退職後の貯蓄を危険に晒す」と警告しており、退職年金401(k)を巡り、仮想通貨業界と労働組合の対立が表面化しています。

仮想通貨支持派は、市場構造(CLARITY)法案によって監督体制が強化されシステミックリスクが低減するとともに、年金基金にも高リターンを生み得る資産クラスへの投資機会が広がると主張しています。

一方でAFTや米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)など労組側は、仮想通貨支持派のこうした主張に反発しています。

規制の及ばない高リスク資産である仮想通貨は安定的な年金運用に不適切で、極端なボラティリティが年金に大きな損失をもたらす恐れがあると懸念を示しました。

労働組合が指摘する401(k)仮想通貨導入のリスク

トークン化株式が生む証券規制の抜け穴

AFTが提出した書簡では、こうした懸念の背景として構造的リスクにも言及しています。

同法案により仮想通貨と無関係の企業が自社株式をブロックチェーン上でトークン化し、現行の証券規制網を潜り抜ける抜け道が生まれるとAFTは指摘しました。

その結果、規制の届かない「シャドーストック(影の株式)市場」が発生し、年金基金が知らぬ間に安全性の低い資産を抱え込む可能性があると警告しています。

AFTは「この抜け穴と伝統的な証券法の形骸化は壊滅的な結果を招きかねない」と述べ、仮想通貨を直接保有しない従来型の年金ポートフォリオにも悪影響が及ぶ恐れがあると主張しています。

仮想通貨市場の不正と年金制度への影響

さらにAFTは、制度面の問題に加え、本法案が仮想通貨市場で横行する違法行為や詐欺を十分に抑止できておらず、「無責任かつ無謀」なものだと非難しました。

同連盟は、こうした規制緩和が次の金融危機の火種になりかねないとも警鐘を鳴らしています。

実際にAFTとは別に、米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)も上院に書簡を送り、規制が不十分なまま仮想通貨を銀行・株式市場や年金に組み込めば金融システム全体の安定性が損なわれると懸念を表明しました。

AFL-CIOは「本法案は消費者や金融システムを保護するどころかリスクを増大させる」と断じており、議員らに法案への反対を求めています。

米年金市場に仮想通貨が与える影響と今後の焦点

一方、米国では退職年金への仮想通貨導入に向けた政策転換が進みました。

労働省(DOL)は5月、401(k)プランでの仮想通貨投資に慎重な対応を求めた2022年の指針を撤回し、中立的立場へと戻しています。

さらに同年8月、トランプ大統領は401(k)など確定拠出年金で仮想通貨や未公開株式などオルタナティブ資産への投資を可能にする大統領令に署名しました。

こうした政策転換を背景に、約9,000万人が参加し数兆ドル(数百兆円)規模に達する米国の退職年金市場からは、巨額の資金が仮想通貨市場に流入し得ると指摘されています。

与党共和党議員らもこうした措置を支持し、規制当局に対し年金の投資選択肢拡大に向けた速やかな規則見直しを促しています。

2025年12月現在、リスクを訴える労組と規制緩和を進める政官業の議論は一段と激しさを増しています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=155.75 円)

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Source:AFT提出書簡
サムネイル:AIによる生成画像

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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