SECが描く次世代金融インフラの基本構想
SEC(米国証券取引委員会)議長のポール・アトキンス氏は2025年12月12日、自身のX(旧Twitter)において、米国の金融市場がブロックチェーン基盤のオンチェーン取引へ移行しつつあるとの見解を示しました。
As I told @MariaBartiromo last week, U.S. financial markets are poised to move on-chain. Under my leadership, @SECGov is prioritizing innovation and embracing new technologies to enable this on-chain future, while continuing to protect investors.
— Paul Atkins (@SECPaulSAtkins) December 11, 2025
先週のインタビューでもお話ししたとおり、米国の金融市場はオンチェーンへと移行する局面を迎えています。
私の指揮の下、SECは投資家保護を継続しつつ、このオンチェーンの未来を実現するため、イノベーションを重視し、新たなテクノロジーを積極的に受け入れていきます。
その上で同氏は、SECとしてイノベーションを優先して新技術を取り入れつつ、投資家保護を継続して確保する姿勢を明らかにしています。
また同氏は、こうした方針の具体化として、証券決済インフラのトークン化に向けたパイロットプログラムなどを通じ、市場の透明性と効率性を高めながら金融システムの技術革新を進めていく構想にも言及しました。
「資産トークン化時代の到来」
規制当局トップが語る金融市場オンチェーン化の方向性
米金融市場で進むトークン化とオンチェーン決済
アトキンス氏は12月上旬のインタビューにおいても、米金融市場のトークン化が「数年内」に現実化し得るとの見通しを示し、オンチェーン決済によって取引から決済までの時間差をなくしリスクを低減できると指摘していました。
こうした中、同氏は改めてX上で「米国の金融市場はオンチェーン取引へ向かっている」と強調し、規制当局として新たなテクノロジーを積極的に受け入れ、このオンチェーンの未来を実現していく姿勢を示しています。
DTCパイロットが示すオンチェーン証券の可能性
またアトキンス氏は、SECの取引・市場担当部門が12月11日付でDTC(米預託決済機関)の証券トークン化パイロットに関するNo-Actionレター(当局が法的措置を取らない確認書)を発出したことを明らかにし、これを「オンチェーン資本市場に向けた重要な一歩」と高く評価しました。
このパイロットでは、一部の証券の保有記録を許可されたブロックチェーン上でトークン化し、DTC参加者間でウォレットを通じて直接移転できるようになります。
公式な証券の権利記録は従来通りDTCの集中台帳が保持するため、現行制度と併存する形で限定的な実験と位置付けられています。
オンチェーン市場への期待と規制当局の姿勢
こうした制度設計を踏まえ、アトキンス氏はオンチェーン市場が投資家にもたらす透明性や効率性を高く評価し、トークン化された証券を参加者間で直接移転できる点を強調しました。
このパイロットの成果に期待を寄せつつ、今後も市場参加者による革新を奨励していく姿勢を示しています。
さらに同氏は「これは始まりに過ぎない」と述べ、市場参加者がオンチェーンへの移行を開始する際に煩雑な規制要件に縛られないようにする「イノベーション免除」の導入を提案しました。
こうしたSECトップの姿勢転換を受け、CryptoQuant社CEOのキ・ヨンジュ氏はXで「SEC議長:金融の未来はオンチェーンだ」とコメントし、規制当局のトーンが変化したとして注目を集めています。
米銀行、新時代の金融インフラ構築へ
金融機関の実装事例に見るオンチェーン化の進展
SECによる制度面での姿勢が示される中、伝統的な金融機関もブロックチェーン技術の活用を進めています。
米大手銀行JPモルガン・チェースは12月11日、Galaxy Digital社の商業手形5,000万ドル(約78億円)相当の発行をソラナ(SOL)上で支援したと発表しました。
この取り組みは、米銀行がパブリックチェーンで伝統的証券を発行した初期の例とされており、デジタル資産の本格採用に向けた重要なステップとみられています。
この点について、JPモルガンのデジタル資産部門責任者スコット・ルーカス氏は「来年上半期にはこの勢いをさらに発展させ、投資家層や発行体の拡大のみならず、より多様な証券種類への応用を模索したい」と述べ、オンチェーン金融への強い需要があるとの認識を示しました。
規制当局による制度整備と民間金融機関による実装が並行して進む中、金融インフラのオンチェーン化に向けた動きは加速しており、市場の透明性向上やリスク低減といった恩恵に期待が高まっています。
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Source:ポール・アトキンス議長X投稿
サムネイル:AIによる生成画像



























