AI決済「76%がVisa下限以下」USDCがカード代替の主流に

AI決済「76%がVisa下限以下」USDCがカード代替の主流に

この記事の要点

  • Keyrock、AI決済の76%がVisa固定手数料下限を下回る実態を公表
  • AI決済の98.6%をUSDCが占有、決済インフラ再編と規制議論が加速
目次

AI決済76%が0.30ドル未満、Keyrock調査

仮想通貨マーケットメイカーKeyrock(キーロック)は2026年5月、AIエージェントによる機械間決済の市場実態をまとめたレポートを公表しました。

レポートによると、AIエージェントは過去12ヶ月で1億7,600万件の決済を処理し、合計7,300万ドル(約116億円)を取引しており、そのうち76%はVisa(ビザ)の固定手数料下限0.30ドル(約47円)を下回る超少額決済だったとされています。

Keyrockは、従来型カード決済では1件ごとの固定手数料が取引額そのものを圧迫し、AIエージェントによる機械間取引の多くが採算に乗らない構造になっていると指摘しています。

一方で、全決済の98.6%はステーブルコイン「USDコイン(USDC)」で処理されており、AIエージェント経済圏における決済インフラとしてUSDCへの集中が急速に進んでいる実態も明らかになりました。

レポートでは、こうした超少額決済の拡大を背景に、ステーブルコインレイヤー2・認可プロトコルを含む新たなAI決済インフラの構築競争が加速していると分析しています。

AI決済スタック、4プロトコル積層で競争激化

従来カードでは採算合わず、AI決済が壁に

Keyrockは、Visa(ビザ)をはじめとする従来型カード決済では1件あたり約0.30ドルの固定処理手数料が発生する仕組みになっていると説明しています。

一方、AIエージェントが実際に行う決済の多くは天気APIの呼び出しや小規模なデータ取得などで、1件あたり0.01〜0.10ドル程度の超少額取引が中心となっています。

こうした取引では固定手数料が決済額そのものを上回ってしまうため、従来型カード決済では採算が合わない構造になっているとKeyrockは指摘しています。

これに対し、ステーブルコインをレイヤー2ブロックチェーン上で送る場合の手数料は1件あたり約0.0001ドルに抑えられ、AIエージェントによる超少額決済を成立させる基盤として利用が広がっていると分析しています。

4プロトコル競争、決済・認可・認証で拡大

こうしたコスト構造の違いを背景に、AIエージェント向け決済インフラでは、超少額決済に対応する新たなプロトコル競争が急速に広がっています。

レポートによると、機械間決済市場では過去12ヶ月の間に、決済・認可・認証など異なる役割を担う4種類のアーキテクチャが相次いで立ち上がり、従来のカード決済とは異なる新たな決済基盤の構築が進み始めています。

プロトコル/推進主体 担う層・特徴
x402
Coinbase(コインベース)
HTTP 402ステータスコードを使った機械間ステーブルコイン決済プロトコル
MPP
Stripe(ストライプ)+Tempo(テンポ)
カード・ステーブルコイン・ライトニングを統合する機械決済プロトコル
AP2
Google(グーグル)
ユーザーがエージェントに支出権限を委任するための認可レイヤー
トークン化認証
Visa(ビザ)
既存カードレールを拡張したAI対応の認証情報発行方式

Keyrockは、これら4つのアーキテクチャについて、単純に1つへ集約される競合関係ではなく、決済・認可・認証など異なるレイヤーを分担する形で積み重なっていると分析しています。

そのため市場では、「どのプロトコルが勝つか」ではなく、「どの企業がより多くのレイヤーを押さえるか」が競争の中心になりつつあると指摘しています。

コインベース・ストライプがAI決済の主導権を握る

Keyrockは、こうした決済スタック競争の中心に、仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)とオンライン決済Stripe(ストライプ)の2社が位置していると分析しています。

コインベースは、自社開発のレイヤー2「Base」を軸に、決済レイヤー・エージェント向けウォレット・内部ルーティング・x402・AP2ガバナンスなど複数領域を自社内で統合しているとしています。

一方のストライプも、買収・出資先のテンポ・Privy(プライビー)・Bridge(ブリッジ)を通じて同じく5層をカバーしており、両社が市場の垂直統合を主導していると指摘しています。

80億ドル超の買収、決済・認証で再編加速

こうしたインフラ主導権争いを背景に、関連企業の買収競争も急速に拡大しています。

レポートによると、過去12ヶ月で大手企業が決済・認証・データ領域の不足機能を補完するために投じた買収額は、合計80億ドル(約1.3兆円)を超えました。

具体的にはCapital One(キャピタル・ワン)によるDiscover(ディスカバー)買収や、Mastercard(マスターカード)によるRecorded Future買収など、決済・データ領域での再編が一気に進みました。

AI決済の98.6%がUSDC、集中リスク浮上

一方で、決済インフラ競争が進むなか、実際に利用される決済資産そのものにも大きな集中が起きているとKeyrockは指摘しています。

全決済の98.6%がCircle(サークル)発行のUSDCで処理されている事実は、同社のステーブルコインが機械間商取引の標準決済資産として定着したことを示しているとKeyrockは説明しています。

ただし同社は、この集中状態について「市場での定着を示す一方、新たな脆弱性にもなり得る」と位置づけています。

Circleの準備金管理や規制対応、技術インフラといった単一発行体の運営基盤に、エコシステム全体が依存する構造が強まっていると警鐘を鳴らしています。

こうした集中リスクが業界内で十分に議論されていない点にも触れており、市場拡大が進む一方で、制度面やリスク管理の議論が追いついていない状況を指摘しています。

各国規制と技術競争、AI決済の次段階へ

決済インフラのトークン化をめぐっては、英国金融当局が「トークン化共通ビジョン」を公表し、中銀決済の24時間化も視野に入れた制度整備を進めています。

こうした金融インフラ改革と並行し、AIエージェント決済を支える法制度や認可ルールについても各国で検討が本格化しています。

一方でAIエージェント決済そのものについては、誰が費用を負担し、誰が責任を負うかという法的定義が各国でまだ整っていないとKeyrockは指摘しています。

そのため、各国の規制整備がAIエージェント決済市場の拡大速度を左右する要因になっていると分析しています。

コインベースやストライプを中心に決済スタックの統合が進むなか、各国ではAIエージェント決済に対応した認可・責任範囲・決済ルールの制度設計も具体化し始めており、技術競争と規制整備の両面で主導権争いが加速しています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.90 円)

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Source:Keyrockレポート
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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