テザー社CEO、米規制対応の新ステーブルコイン発行を検討|2025年内参入の可能性を示唆

テザー社CEO、米規制対応の新ステーブルコイン発行を検討|2025年内参入の可能性を示唆(Tether CEO considers launching new stablecoin compliant with U.S. regulations, suggests potential entry by 2025)
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米国規制準拠の新ステーブルコイン発行を示唆

ステーブルコイン「USDT」を発行するテザー(Tether)社のパオロ・アルドイノCEOは2025年5月24日、ブルームバーグインタビューにおいて、米国市場向けの新たなステーブルコインを発行する可能性を示唆しました。

アルドイノ氏は米国の規制要件に沿った米国内向けステーブルコインの立ち上げに前向きであると述べており、同社が世界で展開する既存のUSDT(主に米国以外の海外市場・新興国向け)とは別に、米国限定のドル連動型トークンを発行する可能性があることを明らかにしました。

この新ステーブルコインは、米国で制定が進む規制法案の内容が確定次第発行準備に入る見通しで、早ければ2025年末にもローンチ可能だと語っています。

アルドイノ氏は同時に、米国内展開を視野に入れつつも「テザー社の主要顧客基盤は、銀行サービスにアクセスできない世界の何十億もの人々である」と強調し、新興国のアンバンクド(銀行口座を持たない人々)層に向けたUSDT提供に引き続き注力する方針も示しました。

米国のステーブルコイン規制「GENIUS法案」の動向

GENIUS法案とは?米議会での進展状況

アルドイノ氏の発言の背景には、米国議会で進むステーブルコイン規制の法制化があります。

米国ではトランプ政権下で超党派による審議が進められている「GENIUS法案」が、2025年5月19日に動議採決を実施され、必要とされる60票を超える66対32の賛成多数でクローチャー(議事終結)が成立しました。

GENIUS法案が成立すれば、適切なライセンス取得を条件に、海外企業も米国でステーブルコインを発行できるようになります。

これによりテザー社は、規制をクリア後に正式に米国市場へ参入する道筋が開けることになります。

アルドイノ氏は今年2月「どのような形であれ法律が成立すれば遵守する。法案作りには当社の見解を伝えながら助言していく」と述べており、米国の法規制に準拠した事業展開への意欲を早くから示しています。

ステーブルコイン発行体に求められる基準

現在議会で検討中の法案では、ステーブルコイン発行体に対して「顧客資産に見合う1対1の準備金(現金および短期国債など安全資産)の保有」や「米銀行法に準じた運営および定期的な監査」、AML(アンチマネーロンダリング)やKYC(本人確認)の遵守などが求められる見通しです。

テザー社はエルサルバドルに拠点を置く海外企業ですが、法案には「米国と同水準の規制を満たす海外の発行体に対しても、当局が認可できる」との条項があり、同社も米市場に参入できる可能性があります。

テザー社はすでに準備資産の大部分を米国債など安全資産で運用しており、法案が要求する基準をほぼ満たしていると評価されています。

現在、テザー社は四半期ごとにイタリアBDOによる準備金の報告を公開していますが、アルドイノ氏は「四大会計事務所による完全監査の実現が最優先事項である」と述べ、透明性確保に努める姿勢を示しました。

同社の2025年3月末時点の報告によると、テザー社の総資産は約1,493億ドル(約21.3兆円)、負債総額は約1,437億ドルで、健全性を示す準備金を維持しています。

テザー社の新ステーブルコイン戦略

米国市場向けの特化型ステーブルコイン

アルドイノCEOが構想する米国版ステーブルコインの特徴やメリットにも注目が集まっています。

USDTは新興国における送金や価値保存手段として機能してきましたが、米国ではすでに銀行・決済網が発達しているため「支払い効率の改善」という観点では需要が限定的だといいます。

このため同氏は、米国向け新ステーブルコインは「銀行口座を持つ企業や機関投資家が利用できる決済プロダクトに位置付けるべき」と説明しました。

既存サービスと競合可能な利便性

具体的には、PayPal(ペイパル)やCash App(キャッシュアプリ、米国のモバイル送金・決済サービス)と同等の利便性を備え、米国内の商取引や決済インフラに統合しやすい設計を目指すとしています。

こうした「異なる機能セット」を持つ米国版ステーブルコインを投入することで、テザー社は米国経済圏でも競争力を発揮できると自信を示しました。

一方、既存のUSDTについては今後も主に新興国のユーザーに提供し続ける計画で「我々はUSDTというデジタルドルを通じて新興市場の人々を支援し、米ドルのヘゲモニー(基軸通貨としての支配力)を広げている」とその社会的意義を強調しています。

また、世界銀行の推計では成人の約17%(14億人)が銀行口座を持たないとされており、テザー社はこうした銀行サービスを利用できない人々に米ドルの価値を届ける「ライフライン」としてUSDTを位置づけています。

テザー(USDT)の市場規模が急拡大

USDT、時価総額1,520億ドルに到達

テザー社のUSDTは2023年以降シェアを拡大し続けており、2025年4月には発行残高が過去最高の約1,480億ドル規模(約21兆円)に達したと報じられました。

現在のUSDTの時価総額はさらに拡大し、1,520億ドル(約21.6兆円)前後に達しています。

アルドイノ氏は「テザー社が仮に一国の中央銀行なら、米国債保有額でドイツやスペインを上回り世界18位に相当する」と言及しています。

テザー社CEO、市場競争を見据えた戦略を強調

アルドイノ氏は米国議会での規制整備について「米国がいかに海外発行体と国内発行体を区別するか注視している」と述べました。

自社の潤沢な準備金と実際の需要に裏付けられたUSDTの優位性を強調しつつ、新たな競合他社の参入も視野に入れた戦略を練っています。

今後米国向けステーブルコインが正式に発行されれば、規制と市場ニーズを両立させた形でデジタル米ドルの役割を担う存在として、米国内外での普及拡大が期待されます。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=142.59円)

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Source:ブルームバーグインタビュー

サムネイル:AIによる生成画像

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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